Gallery and Essay

夏休みコース

夏休み期間の早朝散歩では、なるべくプリンスゲレンデに寄るようにしている。朝日山から昇る日の光は万座の森にやさしく降り注ぎ、朝露に濡れた木々は若草色に輝きだす。それをバックに夏休みの花−ヤナギランがいっそう引き立つのだ。 その後、日を変え同じ…

シラビソの住人

志賀草津高原ルートから山々のうねりを見下ろす。稜線を追っていくと、笹原に飲み込まれる前に思わず目に留まるものがある。 今年はシラビソ、オオシラビソの球果が凄い。樹冠部の枝に直立した円柱形のものがたくさんついている。今年は7年に一度と言われる…

本白根山のコマクサ

本白根山のコマクサの復元・保護活動は、コマクサの美しさに魅せられた二人のロマンチストの願いから出発した。 万座の干川文次氏は昭和13年7月にコマクサと出会い、以来本白根のコマクサの種を万座で発芽させ、その種をまた本白根に蒔きつづけた。 六合村の…

ノゾリキスゲ

野反湖は1956年竣工の発電用人造湖。標高1,514mは標高日本一。周囲12kmで、群馬県側の富士見峠から見る眺めは周囲の環境と調和した自然の湖のようであり、ダム湖百選に選定。訪れる人々を魅了している。 かつて湖の中心地には温泉があったのだという。登…

ムラサキヤシオ

残雪がようやく無くなった頃、一年間待ちわびたあの花を見に毛無峠に行く。あの上品な紅紫色だけは忘れられない。 ムラサキヤシオ。 8回も染めたような鮮やかな色から名がついたのだという。色、名前、形、全てが僕にとってパーフェクトな花だ。今年も、パ…

熊四郎山の護る谷

雪解けのほぼ終わった熊四郎山と奥万座川の谷に朝日がやわらかく降り注ぐ。5月下旬、午前7時の万座温泉。 寒さが厳しい万座では、大正末期まではとても越冬できないと考えられていた。11月下旬になると根雪の前に万座を脱出し、冬を下界でやり過ごした後、…

カラマツ小僧

カラマツの芽吹きを待っていた。およそ松らしくない若草色の柔らかなボンボリ。 しかし主役の座はすぐに奪われた。紅い帽子を被ったカラマツ小僧がいっぱいいたのだ。今年はマツボックリが豊作の年のようだ。 柴平志保子さんが言った。「ほら、雄花が下で、…

AKAYAの谷

1990年代前半、赤谷湖付近に大規模ダムとスキー場の開発計画が浮上した。しかし、この水源の森を代々大切に活用してきた人々が中心となり反対運動を行った。やがて10年以上の年月を経て開発計画は白紙となった。 そして以前は森をめぐって「対立」の構図であ…

「逆さ馬」の風景

5月連休の頃、浅間山に「逆さ馬」と呼ばれる雪形が現れる。 天明三年浅間焼けの際に形成された噴火口・釜山からは大量の溶岩が流れ出た。大きな段差となった境目の西側は日射量が少なく、長く雪を残す。 やがて雪形は「逆さ馬」と呼ばれ農作業の合図となっ…

ムラサキツツジ

上毛かるたで「耶馬溪しのぐ吾妻峡」と詠われる名勝・吾妻渓谷。そこにムラサキツツジがあるというので出かけてみた。見るとミツバツツジだった。 渓谷の木々が若葉を広げるその少し前に、この谷の芽吹きを祝福するかのようにミツバツツジは花を咲かせる。コ…

目的地

戦時中、軍需産業の指定を受け採掘された『上信鉱山』のロウ石。最盛期の人夫は250人を数え、その産出は年間一万五千トンにも達した。 終戦後、採掘を再開されたロウ石山には高さ14m、直径約4mの焼成炉が二基設置された。これにより取引価格は二倍近…

撮れない赤色

よく晴れた日の夕暮れ時、純白の本白根山の絶壁が驚くほど赤く見える時がある。「なんと美しい赤色か。」 そう思って大急ぎでカメラを取ってきてシャッターを切る。パソコンに繋げてみるのだが思ったほど赤くない。「あれ、こんなだったかな?」 もう一度山…

森からの目

森で、キツツキの開けた穴を観察していた。そんなに短い時間ではなかった。5、6分いやもっとだろうか。 ふとシラカバの樹上を見ると、森から見つめる目と目が合った。若い雄のキジだった。 いつもと同じ、表情のつかめない、大きな目でただ見つめるだけの…

朝日山から白馬三山

よく晴れた日、朝日山から北アルプスを望む。万座山向こうに見えるは白馬三山。もう10時になるというのにはっきり見えた。冬は山が近い。 右から白馬岳、杓子岳、白馬鎚ヶ岳。 こっちの山は、向こうからじゃあ良く見えないのだろうな。1月週末、白馬で滑る数…

万座の夕やけ

御飯岳に日が沈む。四阿山が一日のうち最も美しくなる時間がやってくる。 もう10分、いや5分時間があればもっと虹色になるのだろうに。 でももう帰らなきゃ。夕食の仕度に間に合わない。

全てを白に

万座に本降りの雪が降る。 あとからあとから降り続く雪は、コメツガの枝上には案外そう積もらない。−10℃を軽く下回る万座の降雪粒子はとても小さく、雪玉に握れないほどの粉雪。雪は少し積もってはパサパサっと崩れていく。 少し立ち止まって景色を見ていた…

天カラにも雪

カラマツの天然母樹林に雪がやさしく降り注いでいる。 厳冬の万座では普通は地吹雪。初冬と晩冬にだけ見られる柔らかい雪。あたたか〜い雪。 あたたか〜い雪が降ったから、カラマツはようやく安心して眠りにつく。 だってそうでしょ。何のために葉を落とした…

モミジのじゅうたん

ふと森を見ると、林床がきらきらしているところがあった。 近づいてみるとイロハモミジの紅葉が散った跡だった。色とりどりの星状の葉が一面に敷きつめられ、モミジのじゅうたんになっていた。 じゅうたんの上を歩くと星状の葉はサクッサクッと音を立ててく…

おはよう並木

よく晴れた10月下旬の朝、志賀草津高原ルートを走る。硯川付近に来ると針葉樹の森に時折り混じっていたダケカンバはシラカバに変わる。木戸池キャンプセンターのシカラバ並木は、僕は「おはよう並木」と呼んでいる。それはもうすぐ、朝日が射せばすぐにわ…

ミゾソバの花

小さい頃、虫眼鏡で大きくなる世界にいつも胸をときめかせていた。蟻ん子のあごの大きさに怖くなり、トンボの目の数にビックリし、そして苔のじゅうたんを覗いてこう思った。 「全然小さくなんかない。僕が大きすぎるだけなんだ。」 今、虫眼鏡を覗いて見て…

魔法の池−牛池

牛池は万座の中心にある。周囲には美しい天然林があり、万座の湯客の憩いの森となっている。 「善光寺に向かう途中、牛がここで溺れ死んだそうな」 「湯治に来た湯客が、ここに牛を繋いでいたんだそうな」 「湯客に牛乳を出すための乳牛を、ここで飼育してい…

平沢の田の神様

嬬恋村今井の棚田には、「平沢の田の神様」と言われる宝筐印塔(ほうきょういんとう)がある。 今井東平遺跡からは6000年前の土器や住居跡が発掘されている。旧嬬恋湖の湖畔に位置していたこの地は、原始において文化や経済交流の接点だったであろうと唱…

アサギマダラへの思い

ゆるやかに高原を舞い、風に乗りはるか上空を滑空する。アサギマダラは不思議な雰囲気のある蝶だ。南方系のマダラチョウ科としてはただ1種、7月〜10月、涼を求めて上信越高原に渡ってくる。 千代田町(邑楽郡)の友人が高原への中継地点とするためにフジ…

蕎麦に埋もれる古屋敷

蕎麦の花に埋もれる古屋敷。こんな風景が真田町にはあります。今、秋蕎麦の花が満開なのです。 なつかしい想い出・喜びも悲しみも蕎麦にはこんな花言葉もあります。「蕎麦の花」とは秋の季語でもあり、つくづく人間に近いところが似合う植物だなあと思うので…

熊四郎山より万座温泉と四阿山を望む

万座は元々白根山の火口だったのだという説がある。旧白根山(熊四郎火山)は活動を続け周囲に火口よりさらに高い部分を形成していく。やがて旧火口には水が溜まり火口湖が生まれたのだろう。 そうして8000年前の地殻変動で火口の一部が裂け、万座川となった…