Gallery and Essay

湿原の競演

ハクサンチドリとワタスゲの競演。初めて見るこのコントラストに、しばし目を奪われてしまった。こんな風景がそこいらにごろんところがっている万座の自然の懐の深さにも驚嘆してしまう。手前のマルバタケブキも、早く黄色い花を咲かせてこの競演に混ざりた…

春一番の花

5月下旬、浅間の森を歩く。今年のグリーンシーズン初回のイベント。冬ですっかり身体が鈍ってしまった私たちを、春一番の花、オオカメノキの花の甘い芳香が私たちをつつんでくれる。清らかな純白の花をみると、やっぱり山は神聖なものだと思い、この花が一…

しなや樹(ぎ)

本白根沢のカラマツ天然母樹林を登っていくと、周囲の鬱蒼とした亜高山帯針葉樹林との間に、ダケカンバの若い一斉林が現れる。 数十年前に、ここで土砂崩れがあったのか、それとも笹の一斉枯死があったのだろうか。近づくと中心にはダケカンバの大木がシラビ…

大空と大地の境界線

開通間もない志賀草津高原ルート。国道最高地点2,172mを有する。ここよりもっと下で雲は生まれ、成長しつつここを通過する。大空と大地の境界線を私たちは綴っていく。

雲上の道 開通

下界では葉桜となる4月下旬に、冬期閉鎖だった志賀草津高原ルートが開通する。雪壁は最高10メートルを上まわり、付近ではゴールデンウィーク行楽の最大の見どころとなっている。この雪壁を楽しみに来る人は、多い。 春は着実に近づいて来ているとはいえ、…

感激の門

熊池湖沼群の鮒池ほとりに、驚きのミズナラがある。一本の樹の幹が根元に向かって大きく割れて、三股になっている。よく萌芽更新したものに上部が二股や三股の樹があるが、そんなもんじゃない。脚が三本ある、本物の三股のミズナラなのだ。どんな力がこの樹…

草薙カラマツ

数百年前、本白根山北西斜面は大きな攪乱に見舞われた。それまでの森林土壌は全て失われ、広大な地形が新たな堆積物で覆われた。現在の本白根沢上部、平野状地形の出現である。高濃度の硫化水素ガスが発生するこの沢では、長い間カラマツでのみ更新が行なわ…

噴煙たなびく

浅間山の噴煙がはるか東方に、そして穏やかにたなびいている。するべくして噴火した2004年9月1日、浅間山中規模噴火。あたりまえの事だった。一部始終を見ていた。そのあたりまえの事で、住民はもちろんのこと行政、マスメディア、学識者、観光業者等は意馬…

快適な棲み家

地上8メートルくらいのところに、絶好の樹洞があった。こんなに快適な棲み家を動物達が見逃すはずは無い。ここ数日、降雪があったにもかかわらず出入口に雪が付着していないのは利用しているからなのだろう。私たち人間は、手前の樹林を透かして、向こう側…

巨木

来客を、森に案内していた。どうしても会わせたいミズナラがある。1時間以上進んだが、どうしても見つけられない。あのミズナラの巨木へは、迷って辿りついたのだ。 では仕方がない。いつものように、森をさ迷(彷徨)ってみよう。だいたいの目的地だけ決めて…

樹洞

表万座スキー場、米無山のコース外をスノーシューで降りる。ここにはいいミズナラの老木があるというのだ。 そこそこの巨木を楽しみ、まずまずの森だと思い帰ろうとした矢先に、立派な樹洞に出会った。入口の幅は40cmはあろう。中の面積も1平米より広かった…

田代の一風景

国道144号線から嬬恋に入り、田代の信号を過ぎて少し進むとつつじの湯。ここを右に曲がって500m地点がここ。浅間が写っていなけりゃ北海道美瑛のようだ。 今年の雪は、万座は多めだけど太平洋側の影響が強く出る嬬恋全域は少なめだ。 本当は、キャベツ畑が…

足跡

日没後まもなく、冬の嬬恋牧場を歩く。夕日を受けて浅間山の西斜面が紅く染まっている。早くあのミズナラの樹の下まで行こう。夕焼けの浅間連峰全貌を撮りたいのだ。 ところが、想像力を掻き立てられる足跡と出会ってしまい、今日はもうこれ以上の事はできな…

キング・オブ・ザ・フォレスト

ヨーロッパで「キング・オブ・ザ・フォレスト(森の王様)」といわれるミズナラ。葉が散り背景が白銀となる冬、嬬恋牧場ではその樹形の全貌が浮かび上がってくる。このシルエットの美しさときたら、ない。 どこまでが幹か、どこからが枝だか解らないほど複雑…

白いクジラ

シーズンインから連日の大雪となった今年の冬。 万座川源流、山田峠の西側にある坊主山とピラミッド型の名もなき山を繋ぐ稜線は高木が少なく、冬になると滑らかな独特の地形がさらに目立ち美しい。流線型で動物的でもあるこの地形を僕は『白いクジラ』と呼ん…

恵みシャレーのクリスマス

今日は大切な仲間達との忘年会。 宴会が始まったというのに、今日はお酒がまだ飲めない。この後ちょっと出かけたいところがあるのだ。日の暮れたのを確認し夕食だけ済ませて、車を出した。 恵みシャレー軽井沢のクリスマスイルミネーション。 今日から一ヶ月…

カラマツ林から日の出

11月8日、午前6時の万座ハイウェー。 出発後間もなく日の出につかまった。快晴の朝、葉の散り切っていないカラマツ林から日が昇る。あと一週間後だったら、あの枝の隙間からこぼれる光のシャワーが見れたのかな。 少し眺めて、もう出発してしまった。日…

旧嬬恋湖の朝もや

快晴の日ではないある朝、万座ハイウェーを下った。 嬬恋牧場からは旧嬬恋湖(嬬恋平野)がよく見える。かつて吾妻川の水で満たされていた旧嬬恋湖は、今は朝もやを湛える。この幻想的な朝もやは、みずみずしい高原野菜、特に甘く美味しいキャベツを生むのだ…

四阿山の裾野

標高2,354m、日本百名山、四阿山。浅間山がなければ上信高原で最高の山だ。かつての噴火口は直径4キロもあり、発達時は3,000m級の山だったとも言われる。 パノラマラインを走ってふと、四阿山とその裾野の全貌が見えた。なんと広大な裾野だろうか。そして…

早朝のカラマツ林

早朝、万座ハイウェーを下るのをとても楽しみにしている。カラマツの葉は隙間が多く、漏れた光は林内を明るく輝かせる。出かけるたびに、カラマツ林の輝きの洗礼を受ける。出かけるたびに、そうでもなかったカラマツの事がどんどん好きになっていく。

初雪の朝(昼)

10月23日深夜から降った雪は、朝には10cmほどの積雪になっていた。今年は10日くらい雪が遅かったろうか。 散歩に出てみると、紅葉の木々がみんな雪に覆われ、さながら真冬の様な銀世界になっている。これはこれで綺麗だけど、今日撮りたい画ではない。少し時…

黄金の森

嬬恋村田代から黒斑山と高峰山の間を抜ける群馬坂林道を走る。車坂峠(1,973m)が近づくにつれてカラマツ林の黄金色の輝きが目に留まる。 嬬恋にはどこにでもあるカラマツ林だけど、この付近のカラマツ林は整然として美しい。 信州が原産地のカラマツは、浅…

ジロー清水の水源

毛無峠に行く途中、ジロー清水という湧き水がある。 万座周辺の水は酸性。万座山の湧き水も弱酸性。御飯岳の明神沢ですら微酸性。しかしジロー清水だけはどういう訳か弱アルカリ性を呈す。 ある日、ジロー清水をボトルにつめて車を出した瞬間、上部水源の森…

風の谷 紅葉

牧干俣線から県境を越え、県道大前須坂線を左へ10分ほど進むと毛無峠がある。目前には一年中風の吹きやまぬ山・破風岳(1,999m)山頂からの絶壁が行き止まりの様相を濃くする。僕はここを『風の谷』と呼んでいる。最も好きな場所の一つだ。 ここの荒天の日…

芳ヶ平の宝石箱

びっしりと敷きつめられたチシマザサは、まるで緑色の絨毯のよう。その上に赤やら黄色やらオレンジ色のビーズが散りばめられる。届くはずもないのに手を伸ばせばビーズを転がせそうな気がする。それがチシマザサ帯、分水嶺の紅葉。雲の上の紅葉。 ある日、芳…

読書場

ある日、読書をしに森に出かけた。木蔭を探してふらっと歩き始めたら、自然とこの場所に来た。 朝日山ゲレンデにある“万座の五葉松”は村指定の天然記念物。主幹は目周り5.05m、群馬県のゴヨウマツでは最も大きい。根株は大きく持ち上がり、樹幹の瘤と捩れに…

本白根チーム

8月下旬、本白根山探勝歩道を万座へと歩く。道中、熟したハイマツの実がよく目立つ。 そのうち雲にすっかり覆われてしまい、弱っているところに突然甲高い動物同士の話し声が聞こえた。ビクッと来たがいやいや、こんなに人間の近くでおしゃべりするのはあい…

秋の麒麟草

9月、それまでの暖かな南東の風は急激に北西の風に変わる。秋がやってきた。秋風が澄み切った空気を運んでくる。なんて事のない天気なのに横手山がやけに近い。なんて事のないアキノキリンソウが雲上の景色によく映える。秋の空気が麒麟色をもっとよくする。

子どもの居場所

奇勝、石樋(いしどい)は嬬恋村の指定文化財。宇田川の川床が安山岩の石畳状になって250m〜300m続く。絶好の水遊び場に、子ども達は大さわぎではしゃぎだす。 “子どもの居場所”が今、無いのだという。心豊かでたくましい子どもを育てる礎が崩壊しているの…

雷滝

松川渓谷の名瀑、「雷滝」は落差40メートル。落下の様子を裏側から見れる珍しい滝。別名「裏見の滝」とも言う。まだ行った事がない友人にはできる限り案内するようにしている。ここに連れて来て喜ばなかった人はいない。 豪快な爆音が清々しいし、何より水…