全てを白に





万座に本降りの雪が降る。


あとからあとから降り続く雪は、コメツガの枝上には案外そう積もらない。−10℃を軽く下回る万座の降雪粒子はとても小さく、雪玉に握れないほどの粉雪。雪は少し積もってはパサパサっと崩れていく。


少し立ち止まって景色を見ていたら、もう僕の足跡は消えてしまった。そうして雪は見る見るうちに周りの全てのものを白一色に覆い隠していった。


次に空を見上げた。こんなにも急激に景色を変えてしまう雪だけど、空を見上げれるうちはまだ良い。もうすぐそれもできない地吹雪になるだろう。だから今のうちにと顔に雪を浴びせておいた。邪な僕の心を白く覆い隠してもらうために。