しなや樹(ぎ)







本白根沢のカラマツ天然母樹林を登っていくと、周囲の鬱蒼とした亜高山帯針葉樹林との間に、ダケカンバの若い一斉林が現れる。


数十年前に、ここで土砂崩れがあったのか、それとも笹の一斉枯死があったのだろうか。近づくと中心にはダケカンバの大木がシラビソと仲良くペアを組んでいて、どうやらこの樹がこの一斉林のマザーツリー(親樹)となったようだ。


子供たちは親樹を包み込むようにしてドーナツ状に立ち並び、万座の強風から親を守っているように見える。子供たちのマントを羽織った親樹は安心して腕を大空いっぱいに広げ、そのしなやかさを魅せつけている。地面と枝葉の間に生まれたこの広い空間は、とても特別な場所になった。


この場所を「悟りの場」、このマザーツリーを「しなや樹(ぎ)」と呼んでいる。

ここに子供たちを連れて来ることができたなら、伝えたいことが山ほどある。毎日連れてきたってまだ話せる。