芳ヶ平の宝石箱




びっしりと敷きつめられたチシマザサは、まるで緑色の絨毯のよう。その上に赤やら黄色やらオレンジ色のビーズが散りばめられる。届くはずもないのに手を伸ばせばビーズを転がせそうな気がする。それがチシマザサ帯、分水嶺の紅葉。雲の上の紅葉。


ある日、芳ヶ平に紅葉狩りに出かけた。素晴らしい景色に帰るのが惜しくて何度も振り返った。すると、散らかったビーズが一箇所に集まっているところを見つけた。ちょうど上から転がり落ちてきたビーズが窪地に溜まっているかのようだ。そこは宝石箱のようだった。


ナナカマドの紅葉ばかりを狙っていればとてもここは見つけられなかったろう。あれだけのカメラマンがいながら、誰もここにカメラを向けていなかったことに少し得意になった。