草薙カラマツ







数百年前、本白根山北西斜面は大きな攪乱に見舞われた。それまでの森林土壌は全て失われ、広大な地形が新たな堆積物で覆われた。現在の本白根沢上部、平野状地形の出現である。

高濃度の硫化水素ガスが発生するこの沢では、長い間カラマツでのみ更新が行なわれた。貧栄養で酸性度の強い土壌のため大きく育つことができなかったのだろう。ところが、攪乱縁部では枯死していく仲間を尻目にしたたかに育ち続けるカラマツがあった。


現存する国内最大級のカラマツ、草薙カラマツ。


直径130cmを優に越す目周り、炎の燃えさかるような、はたまた地獄の門番のようなその姿は何度来ても見とれてしまう。

誰でも来れるこの場所に、どうにかしてもっと人を連れてきたい。巨木に出会うことで人は身の程を知り、もっと謙虚になれる。それをカラマツで実現したい。