富岡製糸場 と 日本絹の里



今日は富岡製糸場へ。製糸工場というと、戦前の富国強兵の時代に、劣悪な環境の元で命を削りながら、当時の有力な貿易品であった生糸の生産を支えた女性工員たちの姿を伝えた「あゝ野麦峠」のイメージがあります。


富岡製糸場世界遺産に!」の声はもう、さんざん聞いてきました。私もかなりの昔、学生時代に、何かの研修旅行で見学したような気がするのですが、それが富岡だったのか、それとも諏訪や岡谷の方だったのか、よく覚えていません。


群馬県吾妻地方の教育旅行のもっともらしいコースに、養蚕と絹産業を学習するコースが筆頭に挙げられます。富岡製糸場には優秀なボランティアガイドが大勢いるので、安心して任せられるはずなのですが、それがどのようなものなのか、自分でも体験させていただいてきました。


富岡製糸場 世界遺産 推進ページ
http://www.tomioka-silk.jp/hp/index.html




  


富岡製糸場に駐車場はありません。最も近い民間の駐車場でも300m位あります。古い町並みらしく、表門へと続く道路幅は狭いです。




  


ボランティアガイドの解説が始まるまで時間がある場合は、東繭倉庫1階、かつての原料課が資料室になっているので、そこで予備知識を得ておくと良いでしょう。




  


資料室の一角で、座って繭から糸をたぐりながら糸枠に巻き取る…いわゆる「座繰り」の実演をやっていました。
お湯に繭が浸かっていて、それらの繭から生糸が伸びています。何もしないと生糸が捻れませんので、ハケのようなもので樽のお湯を回してやるのです。なるほど。




  


糸が巻かれている部分の手前に一本の棒があるのが見えますか?繭から伸びてきた生糸は、棒の先を通ります。棒は左右にゆっくりと動き、生糸は均等に巻かれていきます。




  


さて、ボランティアガイドさんの解説が始まりました。軽快なトークと社交的な身振りで素晴らしいです。とても慣れているガイドさんでした。柱の杉材は妙義山の杉を伐って作られ、関東大震災でも、東日本大震災の際にも倒壊しませんでした。日本とフランスの建築技術を組み合わせた「木骨レンガづくり」です。
通用門のアーチには明治5年(1872年)と掘られていますが、私にはそんなに古い構造物には見えません。よっぽど保存状態が良かったのでしょうか。




  


ここは繭扱場。明治維新直後、近代国家(殖産興業・富国強兵)制作の一環として「生糸の輸出振興」が打ち出されたが、全国から蚕の繭を集め、港のある横浜付近で製糸をすると、中には羽化し始めるものが出てきてしまいます。蚕は羽化の際、口からアルカリ液を出して繭に穴を開けて出てきますから、そのアルカリ液が混入しないためにも、繭の生産地で大きな工場を作る必要がありました。


この中には広い乾燥場になっているそうですが、中に入ることはできませんでした。




  


西繭倉庫です。1階と2階のレンガの色が違うのは、1階部分は元々は亜炭(石炭化度が低い石炭)を置いていた倉庫で、空洞だったそうで、後になってレンガ壁にしました。資料室には、昔の空洞だった時代の模型がありました。




  


今日は着物の方が随分いらっしゃると思ったら、観桜会が催されていました。レンガには屋号の文字が入れてあって、職人や煉瓦屋に腕を競わせたそうです。







こちらが繰糸場の建物です。窓ガラスがうねっています。外観にもいろいろと工夫がなされ、日本の技術力を世界にアピールしていたそうです。







繰糸場の内部です。最後の経営者であった片倉工業㈱が、操業を終了してから20年間も当時のまま、大切に保存していました。なんとその維持経費が年間1億円かかっていたというから驚きです。今は富岡市に譲渡され、管理も富岡市によって行われています。


最期は繰糸の作業は全て自動化されたため、工員は一人で一列を担当していました。端から端まで移動するのにローラースケートを使っていたそうです。







なので、このような座繰り器を使った作業はなかったはずですが、説明のためかパネルがありました。何の説明かというと、座繰りでとれた蚕の蛹はその後どうなったのかについてです。想像つくでしょう?







蚕のゆるキャラ、シルキー君はイベントで大忙しです。




  


イベント会場の出店をチェック。表面がシルクのサンダルは可愛い気もするが汚れたらもったいないような気もします。特価品で1,300円。




  


資料室に戻ると、繭クラフト体験も行われていました。ペンギンですか。可愛らしいですね。







富岡製糸場のことを学びたく、私も本を二冊購入しました。共に500円です。




  


帰りには高崎市にある「群馬県立 日本絹の里」へ
http://www.nippon-kinunosato.or.jp/


ここでは繭や生糸に関する資料や群馬の絹製品などが展示され、絹を使った染織体験などにより、伝統ある群馬県の蚕糸絹業の足跡と天然繊維であるシルクについて啓蒙しています。







あ、ここでも繭クラフトが。繭クラフトはどうしても気になります。吾妻地域に養蚕と絹産業遺産群の学習旅行しに来た場合を想定すると、どうしても教育旅行にありがちな作り物体験を迫られます。その際に、眉や絹のクラフトを実施したほうが学習旅行のテーマに沿うことになるからです。




  


本当は中は撮影禁止なのですが、数枚だけちょこっと紹介。光る絹糸がありました。

内裏雛に使用されている緑色蛍光絹糸と赤色蛍光絹糸について
この内裏雛に使用されている緑色蛍光絹糸と赤色蛍光絹糸は遺伝子組換えカイコの繭を使って作られています。緑色はクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を、赤色はサンゴの赤色蛍光タンパク質の遺伝子を導入したカイコが作った繭を使っています。
遺伝子組み換えの方法は遺伝子を入れたトランスポゾンをカイコの卵に注射する方法で行われます。組み替えられた遺伝子はカイコの絹糸線で動くようにしてあり蛍光タンパク質を含んだ繭が作られます。この繭を原料として蛍光絹糸が作られています。





そして、こちらは富岡製糸場と関連した絹産業遺跡群として世界遺産登録を目指している荒船風穴の模型です。

荒船風穴の模型
この模型は荒船風穴の蚕種の貯蔵庫を中心にした模型です。模型の台の上に乗ってみてください。石垣の隙間からほんのりと冷風を感じることができます。また貯蔵室の内部のようすを見ていただくことができます。風穴は冷蔵庫の無い時代にカイコの卵の貯蔵等に利用されました。風穴を利用することによって年に何回もカイコを飼育できるようになり、繭の生産量を増やすことができました。





繭を使った昔話作品「傘地蔵」。超可愛いですね。ʕʘ‿ʘʔ






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