屋久島旅行 4日目

苺一笑の朝食。朝からお客様をもてなす心が感じられる、いいメニューだ。

しかし、ゆで卵の回りに塩がついているのは何でだろう?岩塩焼きみたいにしたのかな?卵に塩の味は移っていないように感じたけれども…


  


今日は当初の予定では白谷雲水峡に行く予定だったのだが、朝から雨。これでは気分も台無しなので、屋久島のアートや木工に触れる一日に変更することにした。

まず行ったのは屋久杉工房 樹美留(きびる)
http://kibiru.ftw.jp/

いろいろと見ごたえのありそうな店内の商品だが、ここはぐっと堪えてまずは先にやることをやろう。時機に開業する予定のオフィスネイチャー木村の印鑑を作っておきたいのだ。通常の屋久杉だと3,000円で体験できるのだが、せっかくここまで来たのだ。5,000円の、屋久杉の瘤を使ったコースにしよう。


  


ご主人の田辺哲夫さんが瘤を適度なサイズにカットしていく。

途中、試しに押してみると、上の瘤がちょうど噴火口のある山のようになった。見ようによっては浅間山みたい。

文字をデザインするためにそれに朱肉をつけて紙に押印し、そこに彫っていく文字を書いていく。


  


文字のデザインがうまくいったものを裏書きし、切り出した木に糊付け、紙の余計な部分をカット。

これを専用の固定台にセットする。


  


バーニングペンという、熱で削る道具を使って文字部分を焼き彫りにして行く。この作業がとても繊細で難しい。少しの間練習させてもらい、思い切って削ってみた。

もうちょっと上手にできるイメージだったが、これでも手作り感たっぷりでいいかも。

文字を彫った後、形作りと磨きを行う。この作業もお願いすれば自分でやらせてもらえるらしい。


  


田辺さんの話によると、屋久杉は樹脂が多く、刃物があっという間に樹脂で茶色くなってしまうそうだ。屋久杉をある程度やすりにあてたら、この黄色い棒を少しあてる。樹脂を取り除く消しゴムの役割をするそうだ。

仕上げの磨きにはバフ(布面研磨機)を使う。専門的な用具がたくさん必要なんだなあ。


  


本来の屋久杉製品は乾燥に一週間ぐらいかかる塗料を塗るのだが、体験ではそうもいかない。そこで、速乾性のあるアブラギリのオイルを使う。

オイルを塗らないでいると、朱肉が木目に沿って吸い込まれ、上の方に染み出してくるそうだ。なるほど。


  


オフィスネイチャー木村の印鑑が完成。英美子さんは言霊ペンダントにしたようだ。あら、これも素敵じゃない。

体験が終わったので店内の展示商品を物色することに。ことだまグッズは可愛いのでちいぴょことみどりちゃんへお土産に買っていこう。

きのこのキーホルダーもあった。バーニングペンできのこの模様を彫ってある。


  


となりのトトロ”に出てくる真っ黒くろすけをモチーフにした屋久ろすけと勾玉のストラップ、“もののけ姫”のシシ神様の彫り物など、スタジオジプリものが多く、この工房に似合っている。

タイガーアイのような輝きとなった屋久杉のペンダント、こういうの好きだな〜


  


ことだまグッズは私も何かほしい。神代屋久杉とやらが色が渋くて気に入った。

神代屋久杉は6300年前の噴火の際の火山灰がくぼ地に溜まり、そこに屋久杉が埋もれて数百年以上経過し、火山灰中の珪素屋久杉にゆっくりと浸透したものらしい。化学的な変化が屋久杉に起こっているのだ。石炭になる一歩手前か?

神代屋久杉はもう手に入れることはできなく、田辺さんが取り出したこの一本が最後の神代屋久杉だという。


  


田辺さんがお話好きなのか、それともオフシーズンだからたっぷりサービスしてくれているのか、いろんな話を聞かせてくれる。

この写真は屋久島でしか撮れないことだまの写真。フラッシュをたくと、どういうわけか写真にことだまが写る。この現象は屋久島でしか起こらないというが…?

アイヌ民族のことをかなり勉強している。専門書がどんどん出てきた。屋久島にもかなりのアイヌ民族が住んでいたようだ。

屋久島の名インタープリター、田辺哲夫さんと記念撮影をさせていただいて、工房樹美留を後にした。


  


お昼は通り道沿いにある「屋久杉茶屋」でいただくことにした。中に入ると、地元民に愛されてそうな雰囲気とメニュー。

ここの看板メニュー、もつ鍋は最高に美味い。しょうゆ味のもつ鍋は初めて食べたが、鹿児島では普通にあるらしい。鹿児島から来た先代が、屋久島で初めてもつ鍋の店を出したのだという。鹿児島では麺も普通に入れるらしい。


  


次に行ったのが屋久杉自然館。ここには平成17年に折れて落下した縄文杉の枝が展示してあり、触れることができる。

この大きさで樹齢1000年。屋久杉の成長は遅さが伺える。

材が二つ並んでいる。普通の杉と屋久杉の年輪の違いを見てほしい。


  


これが、年貢として納められた平木。「屋久杉を長さ50cm、幅10cmほどの短冊状に切ったもので、樹脂が多く腐りにくいことから高級屋根材等として大量に生産された。耕作地の少ない屋久島では年貢としても扱われ、享保年間(1730年頃)に米1俵に対して平木2310枚とされていた。」と書いてある。

土埋木も、どの程度のものが使われているのか知りたかったので、展示されていて助かった。この土埋木は平木を切り出した後、残りを山中に捨てたのだろう。この程度のものは、山の中にはまだゴロゴロしていたように見えた。

最後に、私の活動のヒントになりそうなクラフトの材料をいくつか購入した。でも写真のような屋久杉だからこそ成り立つペンダントやネックレスは嬬恋の材では難しいだろう。


  


次に訪れたのが工房杉の舎。ここでは箸づくりを予約していたのだ。

屋久島工芸 杉の舎
http://www4.ocn.ne.jp/~v.sennin/

さまざまなサンプルが出され、私は難しそうな曲線の箸に挑戦することになった。

大きなブロックの屋久杉を木目に沿ってなたで割る。木目が曲がっていれば曲がった材料に、まっすぐならまっすぐな材料になる。木目に沿っている、縦長な木の細胞を横に切断していないので強い箸になるのだ。


  


白井理絵さんというスタッフの方が私たちを指導してくれた。刃物を表で使うのは最初だけ。あとは全て裏で使う。

形を削りだしたら、うずくりという、専用の道具を使って磨きを行う。うずくりとは茅(かや)の根っこを束ねたもので、桐だんすなどを磨くのに使われるらしい。これで磨くと木目がくっきり浮き出て、さらに屋久杉の油がにじんできてつやがでるというのだ。このテーブルもうずくり仕上げ。確かに木目が浮き出て触った感じもいい。


  


うずくりで磨くときは、圧力はそんなにかけずにスピードを早く。しかしリュックサックの背負いっぱなしで肩が凝ってしまい、すばやく動かすのが困難だった。

でき上がった私たちの箸。なかなかのもんでしょう?白井さんも、「これが師匠が作ったものだったら2000円以上ですね。」だって。体験料1050円なのに、いい買い物をした気分。

体験作業が終わったので店内を物色。どれどれ…


  


店内には“仙人さんの箸”の他、茶道具、壺・花器、盆・皿などが展示されている。そして一角にかわいらしい絵と詩が入った作品を見つけた。あいだみつをさんの作品かと思ったら、なんと箸づくりを指導してくれた白井さんの作品。なるほど、この腕があったから仙人さんに見初められたのか。

白井さんと記念写真を撮り、杉の舎をあとにした。


  


今日の最後に訪れたのは、屋久島焼の店。一日に2回もヒッチハイクされてしまった女子大生と一緒に行くことになった。

屋久島焼新八野窯のホームページ
http://www6.ocn.ne.jp/~yakugama/

陶芸一本で飯を食っている方のようであり、嬉しい。雑誌にも載っていた、珊瑚の粉を使って焼いた青釉三足小鉢を二つ購入。海の島らしい青色でお気に入り。特別なものを少しだけ盛りたい。


  


島内をさんざん走り回って、今日は登山ではなく別のことで疲れてしまったが、とても満足した一日だった。

どこかで食べようと思っていた、トビウオのから揚げも、今晩の夕食で出してくれた。ありがたい。

デザートの時間になって、オーナーが「今日はお誕生日のお客様がいらっしゃいます。皆さんでお祝いしましょう」と仰る。うんうん、なかなか粋な計らいだなあ、どなたなのかな?と思ったら、自分だった。ああ、そうか、今日は3月9日、私の誕生日だったのか。今までお誕生祝いとは無縁の暮らしをしてきたが、これからはそうではなくなりそうだ。

英美子さん、本当にありがとう。