シナノキの樹皮で縄をつくる(全三回) の第三回目を実施



シナノキ樹皮から紐や縄をつくる技術の講習会、三日目(最終日)の様子をレポートいたします。これまでの二回は旧六合村根広地区、中之条町入山の中村義司・千代子さんご夫婦のお宅にうかがっておりましたが、最終日は同地区の「ねどふみの里」で実施いたしました。


シナノキの樹皮で縄をつくる(2014年度 第一、二、三回 浅間・吾妻塾)
http://ecotourism.or.jp/monodukuridendoushi/shinanoki-juhi-nawa.html





先日、干したシナノキの内樹皮はしっかり乾燥し、保存できる材料「シナ皮」として仕上がっていました。



    


最近、千代子師匠が編んだ籠(白)には芯にラタンが使ってあり、東京の業者には「価値がない」と言われてしまったそうです。なので、新たに編み始めた茶色の方は、芯も全てシナ縄のみで編んでいます。まだ半分ほどしかできていませんが、これで3日かかっています。完成まではあと3日。6日間かかって作った100%シナ縄の篭は、なんと


4万円 で売れるそうです。



  



さて、まずはシナ皮を、縄ないできるようにします。長い材料の真ん中から両端に向かって裂くやり方がいいでしょう。



  



そこそこの量になったら、括ってまとめます。これをきちんとやっておかないと「つぼり」ます。「つぼる」とは絡まる、ぐちゃぐちゃになるという意味だそうです。大釜で一晩煮て内樹皮を取り出したものはやや赤みがかった茶色に、温泉にしばらく漬けておいたものは真っ白になります。これは昨年のもので、私たちが3週間前に漬けたものはまだ温泉から出していません。約1ヶ月間、漬けないと剥けないのだそうです。



    


この裂く作業中にも、複数枚になっていた内樹皮が剥がれるようなら剥がします。節の部分は、なえませんので、カットするか、「こすり」を作る際の材料にしてしまいます。



  



ある程度つぼったら、柔らかくするために水の中をサッとくぐらせます。ここでは温泉湯船があるので使ってしまっていますが、あまり浸けるとかえってヌルヌルし過ぎてしまい(ぬめこい)、縄ないの際に手が回らなくなります。


まずは、「こすり」を作ります。



    


うまく剥がれていない材料や節のある材料などを適当に裂いてまとめて二つ折にし、それを二方としてなっていきます。



    


長くなってきたら根元を足指で挟み、さらにないます。適当なところで「戻し」を入れて捻りを強めます。



    


それをまた二つ折りにし、なっていって戻しを入れて、



      


それをまた二つ折りにしてなっていってなえなくなったら、ぐっと握って締めます。これが千代子さんの今日の「こすり」のつくり方でした。


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では、シナ皮で縄ないをします。今日は中村とら師匠にご指導いただきます。まずは細く裂いたシナ皮を数本持ち、足指に挟んで20cm程出して二方に分け、ないます。もちろん、最後に「戻し」を入れます。



    


先端近くまでなったら、足指から外し、先端を止め結びしてその結び目を足指に引っ掛け、今度は長い方をなっていきます。



   


一定の太さになるように材料を徐々に足しつつないます。何回かなったら戻すことを忘れずに。



   


ある程度の長さになったら、戻したあとに「こすり」でなった部分をこすり、はみ出たバリをハサミで切ります。材料を足しつつ、継続してなっていきます。



    


材料を足す際には、短いものは片方だけに、長いものは中間点をつなぎ、両側になっていきます。



  



シナノキ樹木を伐採した際の、玉切りの長さが長かった場合、材料としてのシナ皮もとても長くなり、なう際にはやりづらくなります。今回のはやや長かったようで、なう際にできる先端部分の逆捩じりをほぐしつつなわねばならず、苦労しました。



  



なっていて、硬い部分は潔くハサミで切ります。また、材料を継ぎ足した際に、量が多いようなら部分的に省いてなっていきます。そうすると、このように材料がはみ出ます。もちろん、ハサミでカットします。



  



そして、今回とても大切だと思ったのは、この「戻し」と「こすり」の作業です。「戻し」を行うことで捻りが強くなり、「こすり」を行うことでその捻りを定着させることができます。





中之条町入山「ねどふみの里」で、おばあちゃんたちが「シナ縄ない」をする風景。どうあがいても、10年後は見られないことでしょう。私たちがどこまでこの文化を継承していけるのか、挑戦中なのであります。



  



さて、約6時間、縄ないしました。私の作品は左側。思ったよりも難しく、あまりたくさんはできませんでした。右側のは富士子師匠がなった縄。太さが均一で、同じ時間なのに私の何倍も長さがあります。そもそも、富士子師匠はスゲ縄の場合、一日なえば、八十ひろ(一ひろ≒1.5m)なえるそうです。120m?!シナ縄はそれよりも硬いからね…とは言っていましたが、80m位なえちゃうんですかね?



  



山仕事が得意なはずのTさんは、どんな風になるかいろいろと試してみたらしく、縄ではなく、「紐もどき」のようになっていました。


ものづくり師をめざすYさんは、男性らしく、とてもしっかりした巻き(捩じり)になっていました。一回一回、丁寧になうやり方でしたが、私よりもはるかに長くなえました。



  



終わった縄は先を止め、このようにして巻いておきます。千代子師匠の縄の径は6〜7mmでした。スゲ縄よりもまだ一回り細かったです。かつての六合村では最も頑丈な紐だった「シナ皮」。1〜2mm位の縄でもとても頑丈です。現代なら何に使えるか、よーく考えてみます。


師匠たちが小学生の頃は入山分校に通いましたが、草鞋は一足履いて一足は持っていきました。長距離の上に花敷温泉の上あたりの道が悪く、よく鼻緒が切れたそうです。その時にもこのシナ皮は活躍しました。気の利く者はカバンの中にシナ皮が入っていて、それで結んで修復したりもしました。昔は丈夫な紐といえば、シナ皮しか無かったのだそうです。紐が切れると「誰かシナ皮持ってないか?」と声が上がったのだそうです。





今日は残念ながらこの「よっと(そ、ちょ)」器具を使ったシナ糸紡ぎはできませんでした。これに十字に巻きつけて行って、大きくなったら玉にしていたそうですが…。私たちも今のところはシナ縄だけで精一杯、来年もシナ糸まではたどり着けるかわかりません。


とにかく、シナ縄の作成過程学習は終了しました。これまでの学習内容動画をYoutubeにアップいたします。↓








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