世立八滝エコツアー研修会





今日は午後から浅間・吾妻エコツーリズム協会の総会があります。午前中は総会会場である嬬恋村でエコツアー研修会を…とも考えたのですが、残念ながらこの時期、近くで半日で回れる登山道は残雪があったりで、うまくありません。六合の名ガイド・木村さんにお願いして、世立八滝のエコツアー研修会を実施することにしました。




  


よってがねえ館(六合村ふるさと活性化センター)に半分の車を止め、半分の車で大仙の滝近くの駐車場に車を止めます。そこから、世立八滝まではほんの100m位。




  


まずは木村さんから、今日のエコツアーの概要説明がありました。八石沢川の「大仙の滝」「段々の滝」「箱の滝」「久内の滝」「不思議の滝(見学不可)」「井戸の滝(見学不可)」「殺人の滝」の七つと、依田尾川の「仙の滝」の一つが合わさって八つになっています。しかし昭和56年(1981年)の入山研究の生徒の発表では、「不思議の滝」に代わって「泡立ちの滝」が「井戸の滝」と「殺人の滝」の間に記載されているそうです。また、滝の落差は文献によってさまざまで、正確には計測されていないようです。


ここで山本茂先生が、六合村世立集落の縁起を聞かせてくれました。

世立について
木曽義仲伝説

  • 義仲の父義賢(よしかた)は源氏一門の争い(大蔵合戦)で甥の悪源太義平(頼朝の異母兄)に殺された。
  • その時、義仲は2歳だったので、世立の山本縫之丞(ぬいのじょう)に預けた。幼名は駒王丸。
  • 1160年、義平が京の河原で殺されたことを知る。当時義仲は6歳。
  • 義仲7歳の時、天下晴れて木曽谷に帰ることになった。その際に「俺も世に立つ、お前達もここで世を立てろ」と言葉を残し木曽へ向かったので、ここを世立という。
  • その後、縫之丞は作之丞と義仲の挙兵に応じて京に上ったが、敗色を悟り、一足先に身重の義仲の妻を守りながら、木曽から世立に帰ることになった。作之丞は義仲と共に戦いに敗れ討ち死にした。時は師走、大晦日が迫っていたが、家に着いたのはすでに夜も明け松飾りをすることができず、村の入口の松の大木を門松として正月を迎えた。
  • この時、大晦日を明けて着いた方を「明の山本」といい、大晦日に間に合った方を「宵の山本」といい、今でも門松を立てたり立てなかったりする習慣が残っている。


  

天狗の左足跡
八石沢川に沿って、天に向かって真っすぐにそそり立つ岩肌に大きな人の素足のような跡があり「天狗の足跡(縦10m、横5m)」の名で親しまれている。
大昔、天狗が岩に飛び移る際、一本歯の下駄では移りかねて裸足になって飛び移った際にできた足跡(左足)だとされ、右足は長野原まで届いたとされています。


昔設置した看板には、足跡が縦2m、幅1.5mとなっているのが気になりますが…




  


早速、世立八滝をめぐってみましょう!まずは遊歩道を進みます。あっという間に一つ目の滝、「大仙の滝(おおぜんのたき)」です。







見て!見てほら! 木霊(ことだま)がいっぱいだよ!







大仙の滝 は滝見ドライブインから少し歩いて最初に見ることができる落差約20m1段の滝です。滝のはるか上方の岩壁には天狗の足跡と呼ばれる奇勝が見られ、民話があります。




  


現在ある六合村誌によると、世立渓谷に現れている岩石と地質は、白根浮石流の分布が多い旧六合村南西部と違い、白根火山の基盤を作る古期岩石であるそうです。緑色凝灰岩(グリーンタフ)とも記載されています。そんなことで、この大仙の滝の下にある岩脈も、川原湯岩脈の様に地殻変動により古い基岩に裂け目ができて、そこにマグマが流れ込み冷え固まってできた岩脈、つまりダイクであるかも?…と話題になっていました。

看板のところにまで戻って、上の滝をめぐります。




  


階段を上りつつ、ガイドさんの解説が入ります。




  


階段はますます急になります。登りきれば、展望所です。谷間から浅間山が見えました。







この展望所からは、目の高さに天狗の足跡を見ることができます。




  


また、北東の方角には大高山と小高山が谷間から顔を出しています。その間の凹みはオッタテ峠といい、オッタテとは天狗のことであり、不思議と繋がっています。中之条町役場で購入した1/25,000地図には、オッタテ峠近くにある窪地湿原一帯を天狗平と表記してありました。


さて、ここからの下り階段の急さといったらありません。




  


長い長い下りの階段です。途中、急斜面の階段のすぐ脇にある巨木が枯れてしまっていました。この大木が倒れてくる予定かと思うと、ゾッとします。







大仙の滝のすぐ裏の水辺のはずなのに、キツイ行程を乗り越えてきたためか、水辺がえらく久しぶりな気がします。




  


佐藤さん親子は魚を探してみたり、サンショウウオを探してみたり。







このあたりから、アルミの階段が出現します。




  


アルミの階段を降りると、見えていた次の滝です。足元には、カエルの傘のような形をした葉の植物がたくさんありました。







段々の滝(だっだのたき)です。落差約30m2段の滝です。







2段の間にある滝壺。一体どうなっているのか気になります。




  


モミジガサがそこそこあります。驚いたのはこのトウヒの球果。万座のトウヒ球果の倍はあります。草津白根山系エリアにトウヒ属の、他の樹木があるのでしょうか。




  


このあと、少し平らになって、また急なアルミのはしごです。




  


岩塊を削った階段を登ったところに、木が一本、根にたくさんの岩を抱き込んで倒れていました。







この倒木を、渡る勇気…は、無くてよろしいかと。





ようぶ



解りづらい一枚です。木本のつる植物が、岩塊の高いところにめがけて一直線に伸びています。





そして、まるで四阿山の的岩のようにも見えるな形状をした岩(裏側を確認していません!)。こういう自然資源がゴロンとそこいらに転がっている、六合とはいったい何なのでしょうか?







こんな豊かな自然をご案内できるなんて、ガイド冥利に尽きますね!
久内の滝(きゅうないのたき)です。ここからは見えない位置に良い滝があるようです。一番下の段の滝壺は直径7m。久内淵と呼ばれ、民話が言い伝えられています。

民話 久内淵(キューネエ淵)

むかしむかし、見寄と世立の境にある淵にこんな話があった。入山のキューネエさんという人が、この淵からでっかい魚を釣り上げた。あまりにでかいので、フジのツルで魚をからげて背負って帰ってきた。家の中に吊るしておいて、晩にゆっくり料理して食おうと思って、まず髭でも剃ろうと、髭を剃っていると、そのでかい魚が生き返り、頑丈なフジツルから抜け出し、見ている前で逃げ出し、「さらば」と言って飛び出した。あわてたキューネエさんは、魚のあとを追っていったが、どうしてもつかまらない。とうとう淵のところまで行くと、キューネエさんは魚に引き込まれてしまい、かわいそうにとうとう死んでしまった。それから、この淵をキューネエ淵というんだそうだ(梨木で聞いた話)。


  


久内の滝を出て、緩やかな斜面を登ります。サワグルミのような立ち姿と葉で、解りづらい樹木はなんだろうか…




  


ここで八石沢川をいったん離れ、分岐から依田尾川沿いに登ります。




  


見えてきました。あれが仙の滝です。わざわざ寄った甲斐があります。







仙の滝は落差15m。この滝は世立集落から最も簡単に行ける場所にあります。昔はもっと大きい滝でしたが、台風で岩が崩れて小さくなってしまい、まだ大きくて立派だった頃の滝を仙人が見て感動したことから仙の滝と呼ばれているそうです。




  


滝の近くで記念写真。ベンチもひとつありました。




  


この辺りには湿原があってワサビが自生していたり、大きな樹があったりで、とても癒されるコースでした。




  


八石沢川沿いの滝めぐりコースに戻り、上流を目指します。




  


キツツキが樹木に縦一列に穴を開けています。きっと使っているはず。びっくりするような立体構造の階段を上って、







その先には延々と続く長い階段があります。このコースは、案内人がいなくても歩けることは歩けるのでしょうが、精神的に挫折してしまうかもしれません。とにかく、階段が凄いのです。




  


やっと登りきりました。そのひとつ上の高台は祠があり、金比羅山と呼ばれています。988mのピークです。







世立の集落がよく見えます。




  


木陰で展望の良い休憩所でした。金比羅山から降り進んで、




  


殺人の滝へと向かいます。この分岐から下を覗いても解りますが、長い長い階段を下ります。




  


アカシデの木が多いです。




  


大きく回りこんだ突きあたりが、殺人の滝(せつうぜんのたき)です。







殺人の滝(さつうぜんのたき)は落差20mで滝壺も大きいのですが、これまでの滝が良すぎたことと、ずいぶん長い階段を下りたために「ここまで来たんだから凄い滝があるんじゃないか?」と期待しすぎてしまうかもしれません。

民話 せつうぜんの滝

むかし世立に行者がやってきて、ろくべいの家に泊まった。ろくべいは行者がお金をたくさん持っていることを知り、仲間を集めた。そして、行者をさつうぜんの滝に落としてお金を奪う相談をしながら、わらじを編んだ。そこへ不審に思った行者が来て、「なぜあなた方はそんなにわらじをつくっているのですか?」と尋ねたが、村人達は、「今夜急用ができたから村中でわらじを作っているんですよ」と答えた。いよいよ夜中になってグッスリ寝ている行者を袋にくるみ、かついでさつうぜんの滝まで行き、お金を奪ってさつうぜんの滝にたたき落とした。その時行者は、「世立村からはバカとけんかは絶やせない」と言い残した。他の文献では、「世立村には発作と首つりは絶やさねえ」というものあった。


  


滝が中ほどでジャンプしています。長い上り道も、八滝めぐり最後の上りだと思えばまだマシです。




  


途中で拾ったクスサン(蛾)の繭の抜け殻。子供たちには何なのか解らなかったようです。「カマリキの卵」「蜂の巣」「山のヘチマ」なんていう回答がありました。




  


荘厳で神秘的な滝めぐりをしたあとの参拝は、気分が違います。おや、供えられているものは?







おお、西吾妻の一部に伝わる、「削り花」です。剣をあしらい奉納しているように見えます。とすれば、中之条町の「鶴」「亀」の削り花とも、長野原町の「ホダレ」等のケズリバナとも、違った背景を持つ削り花です。これは、とても価値のあることです。六合村は本当に木曽義仲と関係があるような気がしてきました。




  


上り詰めたところに、キャニオンズの事務所がありました。なんと世立八滝でキャニオニングやラフティングをやっているのですね。恐れ入りました。


群馬県水上など、関東でのラフティングならキャニオンズ
http://canyons.jp/


いったん車道に出て、




  


藪化しつつある旧道に入ります。馬頭観音道祖神を横目に。




  


今日の、お昼場所に到着。木村さんの奥様の手作り弁当をいただきます。タラノメ、コシアブラ、コゴミ…これは都会の方にはたまらないお弁当ですね。




  


さて、ここに「けんずり穴」があります。どこでしょうか?石の下にありました。大人の拳位の大きさで、深さは約20cm。まるで機械で掘削したような形状の甌穴(おうけつ)です。地元では大切な穴で、石で蓋をしています。







けんずり穴は「雨乞いの穴」と言われ、手を突っ込むと大雨が降る言い伝えがあるのです。あーやってしまったね…




  


周囲にはツキノワグマのウンチや熊棚が。一人では、ちょっと来にくいですね。




  


ここからは、車道を歩きながら世立集落に向かいます。石仏たちがある曲がり角には、







明けの山本 二代目門松 があります。冒頭で、山本茂先生が解説したように、木曽義仲について戦った山本氏は大きな一族だったため、都人の後と先を守っていて、暮れに六合に落ち延びた際、先の方は間に合って松飾りができたが後の方は間に合わず、村の入口の松の大木を門松として正月を迎えたそうです。一代目の門松は雷で焼けてしまって、今は二代目が祀られているのです。




  


雄花と雌花が同時に咲いたシデの木。雌花が神社の紙垂にによく似ています。クマシデかな?
驚きの鉄くずアートがあるのはとある芸術家の別荘だそうです。






世立のしだれ栗 中之条町教育委員会


白根山浅間山が一望できる上世立の高台にあるしだれ栗は、栗とは思えぬ奇態で、250余年の長い歴史を刻んできました。東西5m、南北7mに大きく広がり、その枝は地面につかんばかりに悠然と垂れ下がっています。このような珍しい姿がなぜ生じたのか、その原因を明らかにすることはできませんが、突然変異によって生まれたものでしょう。群馬県内でも唯一のしだれ栗です。村人は、このしだれ栗は神々が山々に往来する折りにこの木陰で泊まったり休んだりした神の宿であると信じて大切に保護してきました。今でも、この木を切ると病気にかかるといわれ、村人はおそれと愛情を抱いて大切にしています。


  


世立のしだれ栗のすぐ近くには日本ミツバチの蜂蜜屋さんがあります。今日はショッピングモードにはなっていないので寄りませんでしたが、なかなかのこだわりを感じさせる佇まい。次回はぜひ訪問したいです。




  


よってがねえ館に着きました。ふと思い、駐車場の社をのぞいてみます。







ほら、やっぱりここでも削り花が奉納されています。旧六合村世立地区では、神様に削り花を奉納する伝統があるのです!いーことみつけちゃった〜




  


さて、この後は浅間・吾妻エコツーリズム協会の第二回通常総会を実施した後、カズ君の昨年の自由研究を見せてもらいました。えー!佐藤先生一家は奥州藤原氏の末裔だったの?!では今日これから汲みに行く清水法水は源頼朝関係、今日のお話しは木曾義仲関係で、何だか西吾妻地区はとても縁がある地域なんですね!
協力者にネイチャー木村の文字が。かたじけない…




  


そして、三原の清水法水を汲みに行ったら、ゲ!不吉すぎる。ありえない!
事態になっていたので、ここで水を汲むのをやめ、今できたてほやほや、旬の「干俣神社の湧水」へ。嬬恋村の湧水の中で、今、最も汲みやすく整備がなされています。私としてもかなりお奨めのお水です。


世立八滝エコツアーは近日中にAAESホームページにアップします。こうご期待!






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