万座温泉自然観察ガイド
今日は千葉県のT様を、自然観察ガイドさせていただきました。T様は森林インストラクター資格保持者で、千葉県で自然観察会もご担当されていらっしゃるとのこと。今回、どこかで私の噂を聞き、訪ねてくださいました。ありがたいことです。感謝いたします。
「自然観察ガイドの仕方」というものがテーマになってくるのですが、自然観察会系はどちらかというと、かつての古巣・万座温泉勤務時に得意だったものです。万座温泉の自然をご案内したい旨を申し上げると、万座温泉日進館の直行バス付き宿泊プランにご予約なされました。
朝9時半にロビーで待ち合わせ、さっそくフィールドへ。やはり森林インストラクターどうし、すぐに意気投合しました。千葉県とはかなり植生が違うので、いろいろと新鮮さを楽しんでいらっしゃいました。まずはこの何気なくある亜高山帯ササ地帯の倒木更新。ダケカンバの根本には古い大木の根株があります。この根株にはびっしりとヒカリゴケが!幸先の良いスタートです。
そして広々としたプリンスゲレンデへご案内。見つけたイタドリにはテントウムシ(ナミテントウ)、蟻、アブラムシが仲良くしていました。いつも戦っているわけではなさそうです。
そして、神秘的な池、牛池へ。T様も朝のうちに、この牛池に様子を見に来ているそうで、ゲコゲコ鳴くカエルの声が気になったそうです。…そうです。この声はモリアオガエルです。今日は時期が遅かったのか卵は見つかりませんでしたが、もうこの池で繁殖しているのかもしれません。牛池は以前は酸性度が強く、フナを入れたら数日で浮いてしまったということがあったそうですが、見た目の水生昆虫も多くなり、ずいぶんと中性になってきたようです。
木道の下にモウセンゴケが。これを見るのも初めてだそうです。繊毛の粘りを確かめていました。
飛んでいるイトトンボはなんとルリイトトンボです。数年前まではアオイトトンボしか確認できなかったのですが、本当に昆虫の多い池になりました。夏休みの自由研究にだって役立ちそうです。
こちらは、オニアザミの茎で脱皮しているルリボシヤンマです。上手に隠れていましたがT様が見つけてしまいました。
ノビネチドリなどのランが数種咲いていました。その後、牛池のあずまやで休憩します。宿の近くにこんなにいいところがあるなんて、さぞ驚かれたことでしょう。
隣接するかたらいの森では、根っこがジャングルジムのようになったコメツガの大木があります。「万座に行ってくる」と言って出てきたのに、撮って帰った写真は屋久島のようですね。
ここでは亜高山帯針葉樹林の根株の様子が見られます。やがてはツキノワクマが冬眠できるほどの根上がりになるであろう倒木更新の樹や、大木の根元でじっと光を待つ、天然の盆栽のような根株を鑑賞しました。
道路に突き出た、真っ赤な岩。顔料に使えるか、欠片で石に落書きしてみました。
「茶水」と呼ばれる道路沿いの湧き水です。クレソンが群落をなしています。
ここにある不思議な緑色生物。T様も、初めてみる物のようです。ゼニゴケのような形式のものが、縦に並んでいるのです。常に水があるところですし、触った感触から藻類のような印象を受けたようです。
そして、朝日山ゲレンデにある、群馬県最大のゴヨウマツへ。この場所は、万座温泉日進館勤務時代はなかなか人様をお連れするチャンスがありませんでした。スズメバチの巣もありましたしね。今日、ようやく夢がかなって私もうれしかったです。
その後、熊四郎山の遊歩道を通り、戻ってゆきます。途中、大岩の割れ目から咲いたウラジロヨウラクがけな気でした。
最後は長い階段を下り、日進館へ戻ります。
気の合うお客様とお喋りをしていると、あっという間に時間は過ぎてしまいます。お客様と一緒に自然観察を楽しみ、自分の好きなとっておきの場所にご案内する…というのが私流ですが、T様、ご満足いただけましたでしょうか?もし宜しければ季節が変わったころ、今とまた違った風景をご案内させていただければ幸いです。ぜひ、またお訪ねくださいませ!ありがとうございました。