万座から車で20分。標高1,827mの毛無峠。
視界いっぱいに広がる矮小低木の群落は、まるで標高2,500mの高山帯にでもいるかのような錯覚を起こす。この風景を偽高山帯という。風衝地のため森林が成立できないのだ。
付近には縄文初期の石器が出土する洞窟群があり、この谷では1万年前にヒトが行き来していたことを最近知った。
気の遠くなるほど昔から、この谷では風が吹き続け、山をえぐり、特出した風景を造った。風は植物の種を運び、渡り鳥や渡り蝶までが風に乗りこの谷を通った。
そして、人間もこの谷を通っていった。風に導かれてここを通っていった。