王領地の森

ひょんなことから、早川先生と王領地の森にブナがあるかという話題になり、調べに行くことになった。

植生を見学調査させていただこうと思い別荘事務所に立ち寄ったが、今日はお休みのよう。でも折角きたので遊歩道を一周させていただいた。信じられないほど美しい森で、この森のほとりに住めたらどんなに良いかと思った。

以前に私はこの付近で、確かにブナを見た記憶がある。しかしあれは3年前、そして雪のまだ残る冬だったような気がする。木を間違えてしまったのだろうか。今日は、ブナの確認はできなかった。

しかし、どうもブナがないのはおかしい。その理由としては、

1.まず、追分火砕流から900年で、ブナが生育するほどの土壌になるか?

これは、私は大丈夫だと思う。まず、カツラの大木がずいぶんあった。そしてホオノキもあった。これらは、ブナが生育する様な成熟した土壌で育つ樹木だ。

また、溶岩樹型付近での倒れている樹木のことを思い出した。吾妻火砕流から225年、あの辺りは、数年前にちょっと見て回ったが、土壌がまだ30cm程しかできていなかった。その下は、腐食のしみこんでいない層で、根を張ることができずに、大風やある程度大きくなったら倒れてしまっていた。

森林土壌は1年で1mmできるというが、私は王領地の森ならばもうちょっと良いような気がする。900年なら90cm。

そして樹木は、どんな大木でも、実際に活動(呼吸)しているのは70cmまでと言われている。だからあそこでは、どんなに贅沢な土壌じゃないと育たない樹木でも、十分に育つと思うのだ。


2.次に、種子の供給について。

まず、吾妻川の北側には、普通にブナはあった。昔の人の話を聞いてもそうだし、奥地に行くとまだ原生的ブナ林がある。ブナ-ミズナラ林相である。戦後の拡大造林期でみんな違う林となった。

吾妻川の南側で確実なのは、小桟敷山山頂に3本ある。この3本ブナの熱烈なファンが仲間にいて、よく写真を送ってきてくれた。あの3本は恐らく、伐採から逃れたのだろう。

だから例えば、浅間牧場付近には、牧場に開拓する前はあったように思う。

今日見た樹木では、カツラやクマシデ、ハルニレは、風で種子が飛ぶタイプ。台風でもくりゃあ、数百メートルは軽く飛ぶだろう。ミズナラやコナラは、リスやカケスが土の中にドングリを隠す。ホオノキは知らないが、森ではネズミの齧り痕をよく見かける。なので動物に運ばれて隠され、掘り出し忘れられ発芽する可能性がある。

ブナの種子散布形態は、私はよく知らない。でもミズナラやホオノキと同じような散布方式であると思う。さらに、ブナみたいな美味しい実のなる樹木のことを、昔の人が知らなかったはずがない。人間が持ち入れない理由がない。

そんなことで、私は王領地の森にはブナがあると信じている。今後もブナ探しをしていきたいと思います。