谷沢の姫カツラ スノーシュー



後日、旅行会社様より草津の森で自然観察スノーシューコースを団体でお申し込みをいただいています。


このコースは、初めてスノーシューをする方向けのコースであるため、翌日に本白根山お釜めぐりスノーシューをするお客様にはちと退屈…だと思い、近場でもう少し変化のあるコースを探してみました。


草津町には「嫗仙の滝」という名所があり、「森の巨人たち100選」にも選ばれた、カツラ(樹周670cm・樹高35m)の巨木の他に、トチノキの巨木があります。しかし、そこへ行く道は急峻で、積雪量も少ないのでスノーシュー向きではありません。谷沢川に沿いにある「姫カツラ」なら、行けるかもしれない。そう思って様子を見てきました。



  


群馬大学草津セミナーハウスの先の道をそのまま下ると、立入禁止のバリケードがあります。今日は開いていたのでそのまま進んでみました。7年前は工事中だった砂防ダム建設も終わっていて、今は橋がかかっています。


(2007年6月30日の記事 草津町巨木めぐり)
http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20070630/1290176127


橋を渡って右に進んでみます。



  


おや、あれは熊棚に見えますね。しかし樹皮から見てサクラの仲間です。サクランボを食べたのかな?ただし、好物のウワミズザクラではありません。
あれ?左の枝は折られているように見えるけど、熊棚に見えているのはてんぐ巣病


  


沢沿いにしては、土壌の層が薄いですね。30cm位でもう基岩です。谷沢川が酸性だから、或いは氾濫の度に土壌が持って行かれたのかもしれませんね。
直径40cm位で樹齢80年位、そこそこの成長スピードです。



  


うーん、クリだと思うのですが、コナラのようにも見えます。枝先が遠くて頂芽の確認ができません。
草津町付近は55万年前の太子火砕流に覆われているといいます。谷沢川の浸食作用によりいたるところに断崖があり地層が見られますが、溶結していたり、火山灰土だったりと入り乱れています。火山噴火の現象は一論で括られるようなものでは無いことが解ります。





あ、カモシカ! …って、え?... Σ(゚ω゚).



  


たくさんのヤドリギが付いた樹木。足元には、鳥の腹をくぐった種が落ちています。ヤドリギ果実の内部は強い粘りがあり、種はそれに包まれているため、鳥の腸を容易く通り抜けます。これが樹皮上に落ちると貼り付き、発芽し寄生がはじまります。



  


ボタンヅルが随分ありました。種がまだ飛ばずに残っています。スラッとした、スマートな樹形のリョウブの木。谷で見る樹形は、藪で見るのとずいぶん違います。





これを見つけた時は、クリタマバチの虫こぶかと思いましたが、帰ってから写真を拡大すると、ただ単にクリの実(イガ)でした。


せっかくなので、ここで、クリタマバチの虫こぶについて言及しておきます。

まず、虫こぶ(虫癭[ちゅうえい]ともいう)は、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のことで、虫などの分泌物の作用で植物の細胞が肥大したり過剰に増殖したものと、虫などによる加害に反応して植物がコブを生成するものの2種類がある…とされています。

成虫のクリタマバチはクリの新芽に産卵すると同時に、体内で共生している菌も植物体に移します。春、寄生された新芽は通常の葉や枝にならず、虫こぶとして成長し、初夏にはクリタマバチは成虫となって飛んでいきます。

クリタマバチにやられたクリの木は新梢の発育が止まり、樹勢が弱くなり栗(実)の収量が大きく減ります。日本での発生は、1941に岡山県で初めて確認され、1950年代中盤には全国に拡大しました。クリタマバチは突然、地球上に現れた訳ではありません。元々は中国の昆虫でしたが、輸入により日本に一緒に渡ってきたのです。

しかし、中国の栗は大打撃を受けていません。つまり、中国にはチュウゴクオナガコバチという天敵がいて、虫コブに卵を産み、その幼虫はクリタマバチの幼虫も虫こぶ内の食料もみんな食べてしまうのです!

日本にも、クリに近種であるコナラ、ミズナラクヌギなどに虫こぶを作るタマバチ類がいて、その天敵であるクリマモリオナガコバチなどがいますが、しかし産卵管が短かったり、虫こぶの発達する時期がずれていたりでなかなか太刀打ちはできませんでした。

最終的には中国のチュウゴクオナガコバチを輸入したのと、徐々にクリマモリオナガコバチの方もクリタマバチに慣れてきたので寄生するようになったり、日本と中国のオナガコバチが交配したりして、クリタマバチの虫こぶ被害は少なくなりました。


  


さて、どうも橋を渡って右に行く道は、「谷沢の姫カツラ」への道ではないようです。姫カツラは諦めて、歩けそうな、橋手前の森を散策してみることにしました。いきなり、なかなか大きなクリの木があります。





近寄ってみると、なかなかどころか、随分大きなクリの木です。胸高直径1m近くあります。





動物たちの足跡もいっぱい。大きな樹木がたくさんあるところには、生き物はいっぱいいますね〜



      


そして、ちょっとわからないのがこの樹木。幹や樹形から一瞬、サワグルミかと思いましたが、種を見るとカエデの類のようです。しかし、こんな樹皮でこんなに大きなカエデって、なんだろう?



  


谷沢川の対岸には、まあまあのカツラの木が見えています。あれ?看板に「谷沢の姫カツラ」の文字が!あれがそうだったの?





なんとまあ、橋からすぐの上流側、対岸に姫カツラは見えていました。以前に見た時よりも随分小さく見えます。冬は山など遠景が近くに見えますが、それと同じような効果なんでしょうね。



  


しかし、この位置からでは、自分たちが冒険で行くのならともかく、お客様をお連れしてはとても渡れません。対岸も急傾斜で横断させるのは苦しいものがありますね…



  


おや、ナツツバキが一本ありますね。たくさんあるリョウブの樹皮と見比べられます。キツツキが開けた穴も発見。うーん、自然観察できる要素は、ふんだんにあるコースです。今後、もう少し調査しようと思います。






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