上信鉱山焼成炉(幻の塔) スノーシュー



嬬恋村干俣仁田沢に、ろう石山と呼ばれていた山がありました。今では廃墟となって、ほとんど人が訪れないこの山に、当時ろう石を焼いたという焼成炉が、深い森のなかに静かに佇んでいます。ろう石山とは「上信鉱山」のことであり、訪れてみると、突然現れるモダンな焼成炉にあっと驚いてしまいます。深いノスタルジーを感じます。この「上信鉱山焼成炉」を地域の近代文化遺産として、ぜひ、世に出したいと考えています。今日はこの幻の塔、上信鉱山焼成炉へのスノーシューエコツアーへのルートを検討してきました。






  


上信鉱山に行くには、宮沢沿いを上って行くのですが、残念ながら駐車場はありません。まずそこがやっかいなところです。宮沢沿いの林道を上って行くと、




  


ここで不思議な足跡を見つけます。リスにしては小さすぎます。アカネズミorヒメネズミにしては尻尾の跡がありません。こんな動物、思い当たりません。「幻の塔」周辺に住む「幻の動物」?




  


そのまま林道を上って行くと、ロープが張ってあり立入禁止の表示があります。焼成炉は倒壊の危険もあるので、柵が設けられていない現在、行政の立場としてはやむを得ない措置です。




  


この二股の道は、以前(7年前)、ロウ石が採掘開始の時からお勤めになられていたという干川定男様には右ルートでご案内いただきましたが、現在は主に左ルートに目印が付けられています。今回は左ルートから進みます。

2005年3月28日記事 『ロウ石山』を訪ねて
http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20050328/1288706779


  


夏に調査したことがあるのですが、この林道は現在整備されていないので、かなり荒れています。林道は藪蚊しており、さらに小川状態です。
ところでふと、ネズミの足跡を発見しました。森のネズミはこのように尻尾の跡がつくのが特徴です。先ほどの足跡とは違いますでしょう?




  


やがて、林道そのものにも樹が生えてしまい、道肩が解からなくなってきます。その辺りから右下に下りると、宮沢の向こうに焼成炉があります。







これが、“幻の塔”上信鉱山焼成炉です。溶鉱炉と書かれることがありますが、焼成炉が正しいです。高さ14m・直径4mあります。この焼成炉により1,750℃以上でも耐えられる耐火物を生成していたのですから、よほど丈夫な耐火煉瓦でつくられているのでしょう。その頑丈さによって、操業停止から半世紀経った今でもこの姿をとどめていることができているのです。




  


ここから数百メートル上ると、かつての採掘場を見ることができます。ただし、宮沢沿いに進もうにも道がなく危険です。ここでは「もし宮沢沿いに上ったら」という映像をご紹介します。

宮沢は溺れるような川ではありませんが、場所によっては膝まで水に浸かってしまいます。そんな沢を左右に横断しながら上って行きます。忍者かノウサギにでもなったようなつもりでお上りください。




  


ここで落ちたら大ピンチです。真冬なら車に帰るまでに凍えてしまいます。気をつけて!
私が上っている時、森から突然動物が飛び出してきて一瞬ド肝を抜かれましたが、キジでした。右の写真はキジが飛び立った場所の跡です。







採掘場に到着しました。露天掘りの地形がよく解ります。大きなお椀の底に出ました。




  


洞窟のようになっている場所があるので、恐る恐る覗きこみます。…大丈夫、動物はいないみたいです。ここでは、ろう石の欠片をゲットしました。上信鉱山のろう石は、結晶水が含まれていて焼成しないと使い物にならなかったそうですが、焼成するとそれは素晴らしい耐火物になったそうです。




  


横にはスダレ状の滝がありますが、氷爆とまでにはいきません。




  


近くにあった大岩は、昨日はカモシカの寝床に使われた模様です。その後、カモシカはほとんど絶壁の急斜面を上って行ったようです。




  


さて、私たちもこのお椀の底から脱出し、次のポイントに向かいます。調べた結果、この大岩の右を上って行くのが良いと見ました。カモシカにでもなった気分で斜面を上ると、




  


かつての道肩らしいところに出ます。採掘場に来る場合も、通常はここから下りるのが良いでしょう。宮沢の方を見下ろすと、沢の一段上に広い場所があります。人工的な地形です。




  


そのまま進むと道肩は不明瞭になり、何度も分岐している様に見えます。なるべく左上へと進んでいるうちに、大きな石が見えてきます。次の観察ポイントはこの大岩です。







上信鉱山焼成炉を見下ろす位置にある大岩。この岩陰で以前、ツキノワグマが潜んでいたことが目撃されているのです。




  


周囲に獣の匂いがあまりしなかったので、恐らく大丈夫かと思い、岩陰を覗いてみました。大型動物の利用跡はあるものの、ツキノワグマは冬眠してはいないようです。また、冬眠するためにはもっと岩窟状である必要がありそうです。ここでは風雪に晒されすぎます。




  


ここからほぼ垂直方向に下りていくと、焼成炉に出ます。山側には大きな窓があるのが解かります。







横方向から見ると、こういう状態です。この焼成炉は建物の一部で、採掘場からトロッコで運ばれてきたロウ石は上部の窓からスコップで投入され、石炭あるいはコークスなどでサンドイッチ状にして焼成されたそうです。







この取り出し口から月間300トンの耐火物が産出され、夏はトラック、冬は馬ソリで運び出されたそうです。







原料のろう石は、正確には「加水ハロイサイト」という石でした。そして日本で最初の「加水ハロイサイト」による耐火原料の製造販売がここでなされていたのです。




  


投入口の高台のから下に続く道肩を下りて行きます。やがて、上信鉱山の門柱があります。




  


そうすると、宮沢を渡らざるを得ない場所があります。恐らく、ここには以前、橋がかけられていたのでしょう。沢を渡ると、また道肩があります。




  


振り向いて、どちらからご案内するのが望ましいのか考えました。入口から焼成炉までの距離はこちらの方が近いし楽です。回遊ルートにするのなら、やはりこちらが帰り道でオッケーですが、時間のないお客様にはこの道を往復でご案内させていただきたいと思います。




上信鉱山焼成炉へは、3月下旬までならスノーシューでご案内が可能です。
皆様のお申込みをお待ち申し上げております。


上信鉱山焼成炉(幻の塔) スノーシュー
http://ecotourism.or.jp/snowshoe/baragi_kouzan01/index.html




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