若いお客様



事務所に、若い女性がインタビューに見えた。


東洋大学国際地域学部国際地域学科4年の黒岩理沙さん。







話をお伺いすると、ゼミでグリーン・ツーリズムについて学んでおり、卒業論文で、


嬬恋村におけるグリーン・ツーリズムの可能性』


と、いうタイトルで発表したいそうだ。


うーん、嬬恋村のグリーン・ツーリズムの可能性か…。その話になると嬬恋村では主要産業のキャベツ農家とのグリーン・ツーリズムの関係を考えなくてはならない。







例えば田代を中心とした農家の奥さまたちのグリープ、おちょんきねっとさんは、ここ2年間、私がコーディネートした首都圏の中学生団体、約150名様をキャベツの植え付け体験をさせてくださった。しかし、植え付け・消毒・施肥・収穫と忙しい、シーズン真っただ中の6月に、ほんのお礼程度で体験指導をしていただくのは、私自身、正直、かなり気が引けているのである。

冬の期間が長い嬬恋村では、短い夏の間が勝負。一日に○十万ずつ稼がなくては肥料代もまかならない。キャベツ植え付け体験を指導する時間を作るのは至難の業といえる。


  • グリーンツーリズム  = 夏(緑の期間)の旅行または山間地への旅行
  • グリーン・ツーリズム = 緑豊かな農山漁村において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動


黒岩理沙さんが学んできたのは、ヨーロッパ、特にフランスなどに見られる、都会の方が郊外の農家に週末B&B形式で宿泊し、畑仕事を楽しみ、収穫し、旬のものを手作りして味わうライフスタイル。そういうものが嬬恋村にも浸透し始めているのではないか?との考えもあったようだ。


逆に、週末菜園などは、嬬恋村よりももっと都心から交通の便が良い地域の方が盛んなのではないかと思う。そしてさらに、キャベツの収穫体験は、普通は無理だと思う。収穫の時は本当に1分1秒が勝負。夜明け前、まっ暗闇の頃からヘッドライトをつけて猛スピードでキャベツを切っていく、完全な流れ作業。この出荷ラインに素人が入ってくると邪魔で仕方がないのだ。


今年の群馬県デスティネーションキャンペーンという観光キャンペーンがあり、嬬恋村でもキャベツの収穫体験を商品化された事業所があったが、それは観光農園であり、キャベツ専属農家では無い。そういった観光農園が少ないのは、キャベツ農家の方が繁忙期は大変でも、安定した収入が得られるからだろう。


また、ヴェスヴィオ火山の噴火で埋没したイタリアのポンペイで生き残った市民は街を捨てて出て行った。しかし浅間山の噴火で埋没した鎌原村を、生き残った村人は同じ場所に、同じ様式の集落を再建していった。日本人は土地に憑く民族である。さらに日本の国土における農用地は12.7%、フランスは35.3%である。さらに人口は日本は1億2800万人に対して、フランスは6100万人。フランスの方が郊外、山間地域で一般市民が農地を持てるチャンスがありそうである。


農家民宿の規制も緩和されてはきてはいるが、それでも法治国家日本では保健所等の検査は厳しいそうだ。海外はかなり簡単だと聞いているが…


ま、そんなことばかり言っていると、ダメダメな卒論になってしまい。これでは元も子もない。


私が思うには、これまで観光事業者と農家とのネットワークができていなかったことが、もったいなかったと思う。例えば収穫が少し遅れてしまったキャベツは、切ろうとして触っただけでも『ボンッ』と跳ねてしまう。これは商品にはならないのでそこいらに捨ててしまい、次のキャベツを切る。理由はスピード勝負なので構っていられないからだ。ところがこの跳ねキャベツは熟れていてとても美味い。その日のうちに【完熟跳ねキャベツ】としての料理をホテルで出せば、お客様は大喜びするに決まっている。こういった農家ならではの事情や、ホテルならではの要望などのさまざまな情報を出し入れし交流、意見交換するシステムが無かったことと、その間に入るプロデューサーがいなかったことが、農家と観光事業者が連携できていない理由の一つではないだろうか。


エコツアープロデューサーと名乗っている私の、今後の腕の見せ所である。


幸いにして、インターネットの時代になり、情報の投稿入手、交流や商談においても、メーリングリスト掲示板等で簡単にできる時代となった。その分野をいち早く整備した自治体が、地域のコンセプトをまとめ上げることに成功し、その個性を全国に発信できているように見える。





そーんな話をしたり、私なりのエコツーリズム論をお話しているうちに2時間が経過してしまいました。


しかし、私が思うに、キャベツほどいろんな意味で頑丈な野菜は無い。嬬恋村では頑丈な野菜・キャベツを力自慢の猛者どもがガンガン育ててバリバリ出荷する。「キャベツだけでは乏しい」と言う人もいるが、そのキャベツで収入が得られ、子が育ち、商店街で物が購入されて、集落は成り立っていく。さっきまでと逆のことを言うようだが、最新の技術やシステムを導入して新たな流れを作り出すことだけが進歩ではない。何にも変わらないこと、進歩しないことにより守られている人のつながりや優しさだってあるのだ。


おっとっと、また熱くなってきてしまった。このへんで止めておきましょう。


今日のハーブティーは、


ブレンドしました。結構美味しかったです。


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