Sanctuary
きのこ狩りに、森の奥深くに入った。
ここは戦後の拡大造林期にも手がつけられなかった急崖の岩場。むせ返るような動物たちの匂い。そして気配――
森の生き物達の聖域 ― Sanctuary
「あなたの森を通りますよ」
番頭のミズナラ巨木に挨拶をして、少しの間、森を彷徨わさせてもらった。森の生き物たちは私たちに、いろんな音を聞かせてみたり、香りでつつみこんでみたり、美しい色彩や逞しい立ち姿を見せつけたりしていた。ここでは、関わってきたものことに対しては、必ず何かを返してやることに決まっているからだ。
きのこ篭は空のまま山を降りることになったが、心はすっかり満たされていた。
生命と生命の関係の蓄積が流れる深い森の中。その関係に触れ、感じ、気配に身をゆだねることを、“深山の霊気に打たれる”とも言う。
森との関係を呼び覚まし、生命の記憶深いところで静かに揺らいでいられるところ、
そこが Sanctuary