インタープリターインストラクター養成講座 3日目

【3日目】

●講座5.体験プログラム考察1.「森林セラピー&ハーブクラフト」(2時間)
 講師: 木村道紘 (当会事務局長 森林インストラクター アロマテラピーアドバイザー 2級樹医など)
 講師: 櫻井幸枝 (白根高原ラベンダー園(SAKURAI菜花園)、びーがんかふぇ はぁとっぷるを経営)

以前当会が旅行会社に見積もりを提出した、夜間体験学習プログラム(320名、スキー修旅・高校生に対し)を実際にこの講座で実施。実施後はWS形式でこのプログラムを完成させる予定だった。2部構成としたPPT講座の第一部は「森林浴とフィトンチッド」。森林浴がなぜ良いと言われるのか、フィトンチッドとは…などを最近のEBM報告研究などを引用し紹介。そして当会の活動との関係性を検証。第二部は「アロマテラピーとハーブ」。後付されてきた脳、大脳は嗅脳からスタートした、だから嗅覚を刺激することで身体生理機能に影響を与えることができるとアロマテラピーでは考えられている。有用植物やハーブ、アロマをを上手に利用したり、高山植物の葉のように肌をピカピカにして紫外線や乾燥から身を守ろう!など、受講生は森林浴とアロマを関連づけさせる展開に感心していた。ここで、実際の地元ハーブ生産者として櫻井幸枝会員が登場。待ってましたとばかりにラベンダークラフト二種の作成を楽しむ。大いに会場は盛り上がり、体験は終了。その後2班に分かれて評価内容を限定したWSと発表。最後のまとめは各個人で静かにやってもらいおしまい。皆でまとめを分かち合う時間を取ってもらえず、フラストレーションをうったえた受講生もいたが、実施側としては作戦通り。なぜなら全ての企画を、分かち合った妥協案にしなくても良いと思っているからだ。実際には、企画は自らが歩み経験してきた人生背景を基に立案し花を咲かせるものであり、誰でも捻出することはできるものなのだ。分かち合わなくても各個人がしっかり内的要因、市場性、ねらい、効果等を分析し評価することができれば、次回は同じ素材を使って自分なりの企画を立てれる…という見方もあるのだ。

●講座6.体験プログラム考察1.「古代へタイムスリップ」(2時間)
 講師: SS 
 講師: YO 登山家 山岳倶楽部あすなろ会会長 どんぐり山の会代表など)

二つ目の体験プログラム考察は、同じく旅行会社に提出した体験プログラム、勾玉作りと古代のお話をする「古代へタイムスリップ」。このプログラムを企画した住田会長の元々の案としては、古代の講義は考古学者にしてもらい、体験プログラムは当会会員が行う…という予定だったのだが、考古学者には「弥生時代の象徴である勾玉はおろか、弥生時代の形跡も発掘されていない嬬恋村で、そのような体験プログラムを私が受けるわけには行きません。」と言われてしまった。それで、住田会長がこの日のために自ら考古学を勉強しなおし、資料を用意し講義を行った。一方的に知識を与えるのではなく、なるべく子供たちとの対話を大事にしたいと考える住田会長は「あなたは、弥生時代はどんな生活だったと思いますか?」「あなたの考える弥生時代のイメージは?」と、参加者の考えを発言をさせる場を多く取りながら講義を進めていた。その後、勾玉作成キッドを配り、勾玉作りに挑戦。今回は作ることが目的ではないので5分間だけやって雰囲気を体感。ここからO理事にバトンタッチ。WS形式でこの仮想体験プログラムを完成したものにするという課題が各班に与えられる。この頃になると、誰もが自分のアイデアを、自信を持って発言するようになっていた。前の講義で不完全燃焼だったせいもあってか、会場は最も賑やかな声で議論が交わされていた。主催側としては願っても無い展開。最後の発表では、踊りを取り入れたりファッションショーを行うなど、大変ユニークなプログラム案を聞くことができた。

●最終日の昼食

最終日はとても暖かい日で、みんなで外に出て一緒にお弁当を食べることができた。とてもいい昼食だった。


  


●講座7.嬬恋おもしろ近代史(2時間)
 講師: 下谷通 (1951年嬬恋村生まれ、嬬恋村観光商工課長)

以前から、下谷通観光商工課長は地元の歴史を調べつくしている…という噂は聞いていた。しかしリーダー養成講座の歴史の講義は嬬恋村郷土資料館名誉館長の松島榮治先生にしていただくのが恒例となっており、何か別の機会にと考えていた。今年からいよいよインストラクター養成講座を開講することになり、下谷課長に講義をお願いすることができた。公務で忙しいのに当会のために資料をつくって駆けつけてくださり、誠にありがたい限りである。ここ数年、愛妻の村で全国に紹介されることとなった嬬恋村。その嬬恋村の名前が生まれた理由はマスコミが騒いでいる内容だけではインタープリターとしては浅すぎる…。この地域を案内するのであれば知っておきたい、思わずうなずくような、嘘のような本当の近代史を閑話で紹介してくださった。その他、北白川宮による「吾妻農林牧場」、前橋刑務所と書かれた群馬坂・林道竣工記念碑、馬頭観音の話など、話の内容を挙げればキリが無いが、極めつけの話は浅間山でロケット開発が行われていた事実!?また、下谷課長の手書きの地図はとても上手。愛嬌もあって雰囲気が良い。お話の仕方も謎を解いていくような感じで、インタープリターにぴったり!このお方にはまだまだ教えていただきたいことが山ほどあるなと思った。


●講座8.木の家の話(2時間)
 講師: SY (一級建築士 東京の木で家をつくる会所属)

当会には、首都圏からたびたびイベントに参加してくださる方や、山ガイドは当会の誰々に必ず依頼する…というような顧客もいる。当会は地域においてすでに首都圏と農山村をつなぐ橋渡しの役割を果たしており、この勢いで地域の事が好になる→別荘を購入する→移住・永住する…というような形で仲間が増えていくとしたら、大変にうれしい限りである。本講座の最後は、古くから木の家を推奨している、当会の安田理事に住まいのあり方について講義していただき、講座を締めていただいた。「この地域には、非常に特徴のある木の家があります。これからは、山ガイドの帰りに見えるそんな木の家のことを、ぜひお客様に紹介してあげてほしい。」とスタート。今回覚えてほしいキーワードとして第一部【吾妻地域の木の住まい】では「せがい(出し桁)造り」「茅葺と石置き屋根」「信州型と新潟型」「地産地消」を挙げ、第二部【木の家の現代的な意味】では「木の持続可能性」「木の心地よさ」「LCAによる木の評価(ライフサイクルアセスメント)」を挙げた。この講座は、身近で生活に欠かせない家の講座であり、参加者の食いつきは最もよく、アンケート集計結果を見ても非常に人気が高かった。家は地域そのものを表しており、地域の古い木の家を紹介することができたなら、地域の暮らしを、歴史をインタープリテーションすることになる。最後を飾るにふさわしい講義となった。


≪担当者所感≫

当会でインタープリター養成講座を開講して4年。計5回の実施で89名のインタープリター・リーダーを輩出している。今回、インストラクター養成講座を実施したことにより、これまでのインタープリター養成講座は、今年度より本来の名称であるリーダー養成講座と名称を変えることになる。リーダー養成講座の上位の講座としてインストラクター養成講座は位置している。

5年前、当会曙の頃、自然体験イベントを企画立案できる者がいないどころか、インタープリターそのものの人数も揃わなかった。言うだけの者ばかりでやる者がいなかった。このままではいけない、どうにかしなくてはとCONEシステムを導入し、「インタープリター養成講座をスタートさせたい、この地域でインタープリターとして活動していくためのスキルとハードルは、私たちが自らの手で作り上げて行こう」と騒ぎ立て、このプロジェクトを『Project CONE』と名づけた。しかし思いのほか、その感覚はあまり受け入れられず、「俺たちがいいって思えばいいじゃねえか」と開き直られたりもした。しかしそう言っていた先輩方で現在でも自然案内人を継続している方はどうもいないようだし、当時インタープリター養成講座を激しく反対していた人も、しばらく見ないうちに別の地域で似たような資格を取っているようである。

しかし、この地域でインタープリターとして活動するのなら、この地域で活躍していたり、関わっている人物の指導を受けた方が当然良いに決まっている。植物学者としてインタープリテーションする、火山学者としてインタープリテーションする、またはテクニカルな技術や絶妙のファシリテーションを行う…それはそれで大いに結構なことで、私たちも常に研鑽しなくてはならないのだが、地球の現象を人に解説することよりも、演出やエンターテイメントでゲストを沸かすことよりも、地域への訪問者と地域をつなぐという歩み方を私たちは選択したいと思っている。これは、観光の村である嬬恋に住んでいる私たちならではの感覚でもあろう。また、下手に演出をしすぎて地域を疲労させたくはないし、地域も私たちに過剰な期待や重荷は与えないでほしいと思う。毛無峠に今日吹く風は、明日も同じように吹いていてほしいし、今井の田の神様に注ぐ日の光は、毎日菅峰からゆっくりと上ってきてほしい。そして私たちが気まぐれに嬬恋以外の地域で活動をしていても、のんびり眺めていてほしいのである。実際、のんびり眺めていてくださっている。

今回の受講生の中には、嬬恋村と特に縁があるわけではない方もいた。その方は嬬恋村専門のガイドさんになりたくて来ているわけではなく、地域案内人としての人材を育成しようとする当会の講座プログラムを学び、体験しに来ているのである。地元との連携やお付き合いの仕方、地元への浸透状況…こういったことも、恐らくじっくり観察されていたに違いない(笑)。当会を応援してくださっている熊川栄村長を始め、役場の方々、地元の方々に敬意を表明します。

そう考えると、最後から2番目の講座が下谷通観光商工課長の「嬬恋おもしろ近代史」であったこと、そして最後が安田さんの「木の家講座」で、吾妻地域の木の家を、地域の暮らしぶりをインタープリテーションしてほしい、家は地域の文化と歴史を表しているから…という講義で締め括ったことは非常に良かったと思う。(但し、バトンタッチとしては全ての講座がうまく繋がっていた。)来訪者に地域を案内することで地域を好きになってもらい、やがては移住永住してもらう…観光地では実際に「おいでおいで」と言われるがままに移住すると現地ではライバル、商売敵になってしまい、態度が豹変されてしまうこともあるという。その点では、当会は損得なしに遊び仲間、同志が一人増えるだけなので、いくらでも「おいでおいで」と言いたいところである。

この講座で受講者は、「日帰りで10人程度の人数を定められた野外フィールドを使いインタープリテーションをすることができる」リーダーという立場から、「いくつかの野外フィールドを使ってそれぞれの環境に合ったインタープリテーションをすることができ、雨天の際に室内でインタープリテーションすることができる。」

という立場のインストラクターになった。リーダーは自分の得意なフィールド、仮に一箇所でしかインタープリテーションできなくても構わなかったわけだが、インストラクターは自分の得意とする一箇所だけではなく、さまざまなフィールドで、その環境や、依頼先の要望、年齢層、体力などを考慮して、状況に見合ったインタープリテーションを行わなくてはならない。さらには、野外だけではなく、室内でも自分なりのインタープリテーション技術やネタを持たなくてはならない。そういう人材を養成またはトレーニングする講座に23名が集まったのだ。このペースならば、5年以内にコーディネーター養成講座の開講も可能であろう。

自分の地域でこの講座を受講した人が今や23人もいると思うと、これからが楽しみで仕方がない。これからどんなイベント企画案が出されるのだろうか!? また、同志の中には離れたところで活動することになる方もいるが、当会の「訪問者に対し、好きな自分の地域を案内する」というインタープリテーションスタイルを、自分の地域に持ち帰り、ぜひ当会イズムを伝播して行ってほしい。そして、次のイベントでの再会を、楽しみにお待ちしています。


  




※2011年度は、エコツアーガイド養成講座のみ実施いたします。
インタープリター養成講座は実施しません)


エコツアーガイド養成講座
http://ecotourism.or.jp/guidecourse.html