海野西五郎さんを訪ねる -クロコプロジェクト-



聞くところによると、田代に昔ながらのクロコ製法を今でも続けている方がいるという。先日、それを200名の中学生団体に提供したところ、取り合いになるほどの人気で、同校のアンケートでは10日間で食べた物のうち、クロコが最も美味しかったという結果になったという。

土屋会長、土田さん、伊藤さん、私と、上毛新聞社の記者・吉田さんで取材に伺った。その様子を紹介する。


  


村や県を越えて国と付き合っている海野西五郎さん(70才)とは果たしてどのような人物か?と思っていたが、なんともやさしい表情の、土の匂いがいっぱいする、嬬恋ライフと農業を心から愛する嬬恋人だった。お会いして思わずホッとするような方だった。

たくさんのお話をしてくださった。慣れない農業のことなのでうまく書けないが、メモした事を一応全て書き出してみる。

≪クロコのこと≫
・科学の力ではクロコはとれない。ミキサーではダメ。手でつぶさなくてはダメ。昔は水車でいもをついた。
・シロコ(でんぷん)を取る際に、四層に分かれる。下から土、シロコ、中間のクロコ、そして滓。この中間のクロコはでんぷんが混じっていて、子供の頃の主食だった。一番上の滓が、現在注目されているクロコ。どうにもならない滓団子がクロコ。
・クロコは凍結と発酵によってできる。ムシロで巻いたほうが発酵がよい。
・クロコは、乾燥させて蓋付きの一斗缶の中に保存している。
・クロコは昔は豚のラードで揚げた。小麦粉を入れてもおいしい。
・ネギは赤ネギが美味い。(軸が赤いネギ)
・中間のクロコ+蕎麦の粉を水で溶いて焼き、蕎麦せんべいをつくり、いくさのすり味噌(いくさ+味噌+(砂糖))につけて食べる方法もある。
・いくさは虫が入るので、一升瓶の中に入れて保存している。油の匂いが良い。近所の方々がいくさを毎年持ってきてくれる。
・つんぼ焼きと言って、中間のクロコを取ってそのまま焼き、焼きあがった表面から食べる食べ方があった。
・クレープ風にして、ツナマヨネーズといくさを巻いて食べると現代風なのでは。(海野吉則専務)

≪じゃがいものこと、農業のこと≫
・昔の嬬恋は米もとれない土地であった。開拓時におけるいもの役割は非常に大きかった。
・1,000mを越えないと美味しいいもは取れない。
・農業は作物から作ろうとしてはダメだ。作物から作ろうとするから、農薬だらけの野菜ができ上がる。昔は10アールに2〜3たいで良かった。今は7〜8たいになっている。土がおかしくなってしまっている。人のお腹の中に沢山の微生物がいて食物を分解・発酵してくれているように、土の中にもたくさんの微生物がいなくては本来の土壌の働きはできない。
・嬬恋はこれだけキャベツを連作していて連作障害が起きないのは、冬に地面が凍結するから。高冷地は農業には都合が良い。嬬恋は気候にも助けられている。
・黒豆、茶豆にも取り組んでいる。黒豆の味噌、納豆は最高に美味い。

上毛新聞の吉田さんも、書ききれないほどの情報量にさぞ困ったことだろう。


  


話が一段落したところで、海野さんがおもむろにフライパンを取り出し、マーガリンを溶きはじめた。おやおや、何をなさるのかな?

手を伸ばした先には乾燥したとうきびが!ははーん、おやつの時間だな?


  


乾燥とうきびをフライパンの上に置いていく。そこにすかさずざるで蓋をする。おお、これはアイデアだ!ポップコーンが弾けても周りに飛び散らない。


  


見る見るうちにポップコーンができあがって行く。この弾ける音も楽しい。大体全部弾けたらざるをひっくり返してさあ召し上がれ。

会員の目は、エンターテイメント性に優れた乾燥とうきびへと熱く注がれていた…。


  


早速、海野吉則専務(息子さん)にこの乾燥とうきびを購入させていただきたいとお話した。おや?専務さんはどことなく藤井フミヤに似ているような…。しかし、息子さんにしっかり農の心が引き継がれているなあと感心した。

専務さんは、手作りのカステラもご馳走してくれた。


  


最後に、海野さんの畑を少し見せてもらった。土を良し知っている上、さまざまな取り組みをしていらっしゃるので、海野さんが話すことは全て勉強になる。

作(畝)の間にあるのは雑草ではなく、マルチムギ。秋まき性のムギは、低温感応性が鈍感で、冬の寒さにあうことで穂をつくり始める。そのため、秋まきムギを春にまくと、十分な低温にあわないため、穂の出ない青いままのムギとなる。この性質を利用して、カボチャ、スイカなどウリ科の地這栽培などで、ウネ間に春播きする。すると、育ったムギは雑草抑制や泥ハネ防止といった、マルチのような役をはたしてくれる。伸びても約30cm。これがマルチムギだ。

〜 出典:ルーラル電子図書館
http://lib.ruralnet.or.jp/genno/yougo/index.php?%A5%DE%A5%EB%A5%C1%A5%E0%A5%AE

今年は、海野さんのクロコづくり作業を手伝いながら勉強させていただくことになった。召集の日が楽しみだ。