浅間火山ガイド 研修会



今日はNPO法人浅間山麓国際自然学校の浅間火山ガイド研修会。浅間火山の専門的知識を有するガイドを育成しようとしている。
講師は信州大学研究員で東信地域などの火山地質に詳しい高橋康さん。


まず表コース最大のガレ地に到着。ここでは、見えている山のことををお話しするのかな〜と思ったらとんでもない。火山の話一本でインタープリテーションするのだ。うへえ、こりゃあ参った。ここでは、赤い石と黒い石の違い、叩いて出る音の違いなど、石の違いについて説明するそうだ。



次に黒斑山と槍ヶ鞘との間の谷がよく見える場所では、ここは断層であるというお話をする。大きな山体であったかつての黒斑火山の重さで、横に引っ張るような力が生じた。それで長さを足すように段差ができた正断層であるらしい…が、そもそも横に広がる力は黒斑山の重さで生まれたもの。沈み込んだのは黒斑山の方だった。つまり、正断層といういい方はどうかと思う。火山が成した円錐形の底辺は、実際のところ広がったりはしなかったのではないか?広がれなかったから、黒斑山が下に落ちたとすれば逆断層である。どうもここは納得がいかない。



トーミの頭の手前ではその断層の続きを見ることができる。


 


トーミの頭では26,000年前の黒斑火山の大崩壊の話や、足元にある岩が、一般的な溶岩とは少し違う「火砕岩」であるなどのお話をする。
また、トーミ頭でも、いくつかの異なる溶岩を観察することができる。


 


黒斑山からは蛇骨岳方面の大きな溶岩流の流れが見えている。濃い部分が溶岩流、明るい灰色部分は火砕岩。このように溶岩と火砕岩が層を成す火山を「成層火山」という。
仙人岳にわたる途中にある白ゾレは、熱水(温泉)や火山ガスの活動により、白色のもろく崩れやすい岩石になってしまった。万座や白根山の白いガレ地と同じ理由。


 


仙人岳を越えて鋸岳方面に行く途中から、どうも溶岩の状態が変わってくるのだという。私は板目石のでき方を聞いてみたのだが、逆に、「この溶岩、その岩と似ていると思いませんか?」と投げかけられてしまった。んー、のっぺりとしていないところは似ているかも。


 


そして鋸岳へ。ここでは、降り積もった軽石が変化したさまが見られる。火口付近に降り積もった軽石は、熱のため再溶結し、溶岩のようになっていったのだ。驚いた。
そしてこういうことが、鬼押出し溶岩にも起こっているのではないかと高橋先生は考えている。なるほど、であれば、確かに鎌原石の中に板目石が多く見られるのは解る。しかし、そうすると寝釈迦の首あたりにあるこの板目石の噴石はたまたまということなんだろうか?


 


このような火山の噴火によって空中に放出された噴出物が地上に降下した後に、噴出物自身が持つ熱と重量によってその一部が溶融し圧縮されてできた火砕岩の一種を、溶結火砕岩(ようけつかさいがん)というそうだ。鋸岳付近は、確かに溶結火砕岩が多い。これは前掛山の溶岩に性質が近いと見るか、それとも溶結火砕岩は普通の溶岩よりも軟らかいため、黒斑火山が大崩壊した際に、激しく崩壊した側である東側だから、軟らかい部分が残っているのだろうか?


 


高橋先生は、このJバンドと鋸岳付近の岩は浅間山の溶岩を考える上でとても大事な場所だという。私も、これからここを通る時は噴火した時の頃に思いを馳せてみようと思う。