表万座スノーパークから本白根山へ
今日は、会員の熊井襄さんの提案で、表万座第3ペアリフト降り場から本白根山旧火口を渡り歩きルートや素材の調査をする。天気は快晴とまでは行かないものの、ここ数日で最も安定した天気になった。(昨日は快晴だったが風が強くリフトは止まっていたそう)参加者は熊井さん、小林さん、斉藤さんと私の4人。
表万座から見る浅間山は見下ろす感じ。火口の周りが黒いのは灰の影響?もしくは熱で雪が溶けているのか。
9:40、調査隊出発。いったい、どんなコースなのだろうか?
このコース、始めの登りがかなり急。やれやれ、これは先が思いやられる…と思いきや、15分ほどで本白根山で最も古い吾妻火口に到着。あらま、こんなに近かったの?
ここのダケカンバや枯死木は味のある樹形でホントーに私の好みだ。
さて、雲の上の空中散歩の始まり始まりー。
右に吾妻火口を見下ろしながら登る。ダケカンバの多い理由をうまく説明できる森林遷移イメージが浮かび上がらない。この火口の中でも、がけ崩れによるものだろうか?…恐らく、そうであろう。
スノーシューで登った跡や、アイゼンで登った跡も見られる。へえ、実は知る人ぞ知る、隠れたスポットなのかな?
この辺の雪庇も変わった形をしていて面白い。都会の人に見せてあげたい。
本白根山の稜線は、日進舘からも良く見えている。つまりは、ここからも日進舘は良く見えるということだ。
おっ、上信越高原国立公園で最高の寮(私の部屋)も良く見える。
今日は北信五岳も見えた。高妻山、飯縄、妙高など…。熊井さんが詳しく教えてくれた。
そして気になる絶壁のガレ場をかすめる。熊井さんによると、ここはアイスバーンになるらしく、スキーで近寄るのはとても危険だという。…そうか、来年、アウトドアディレクターの新保さんが誘致しようとしているテレマークスキー講習会で、仕上げのコースとしてお連れしたかったのだが…。このガレ場の底では危険な硫化水素ガスが発生しているし、案を変更した方が良いかも知れない。しかし、私はこの上空でイヌワシを見たことがあり、私にとって思い入れの強い場所なのだ。
今回の調査の提案者であり案内人・熊井襄さん。なんと、このコースは十年以上前に何度か歩き調査済みなのだという。しかし夏に歩いたことはないそうだ。本白根山をここまで知っていて冬しか歩いたことがない人は日本広しと言えど熊井さんしかいないだろう。
コマクサ火口原までも楽なコース。1時間もかからずにここまで来てしまった。
本白根山探勝歩道を少し草津側に歩いてみる。しかし歩道内は雪が解けてスノーシューで歩くのに向かない。歩道を外れて雪上を歩くのだが、コマクサ保護活動家の方々がこれをどう思うだろうか。しかし雪上ならばインパクトはほとんどないはずである。
このコースをいかにして行政や関係団体と連絡調整・合意形成し、持続可能なエコツアーコースとして販売設定するか。これを課題としてコーディネーター講座をしても面白いと思う。
草津の町を眺め、ここはUターン。本白根山頂へは時計回りで目指すことにした。
歩道最高地点の手前で、二人の男性と行き合った。草津リフト降り場からここまで40分ほどらしい。では、私たちからは20分くらいか。進みましょう。
時計と反対周りに進んでもよかったのだが、コマクサ火口原から中央火口に繋がる部分の雪庇と急斜面の登りがかなりきつそうだったので、こっちのルートにした。
しかしこっちのルートも雪庇は立派だ。しかし、崩れても危険な程ではない。安心して連れてくることができそうだ。
雲上散歩もいよいよ中盤。本白根山頂に到着した。
本白根山山頂からの景色は、少しの生立木があったため、表万座から歩いてきた360度のパノラマ・ハイマツ帯の方が良かったかもしれない。でも、このコースでは夏には踏むことができない、日本百名山・草津白根山(本白根山)のピークを踏むことができるのだ。
帰りは万座側にある西火口を回って歩いてみる。すると、雪の沈降圧で引っ張られ、さらに風で根開きとなったいい木があった。生きた自然の教材だ。
万座側の遊歩道に出て、ここから表万座方面に進む。
歩道最高地点から望む表万座川の丘陵は、ハイマツがびっしりの場所。冬のスノーシューでないと、とても歩けはしないだろう。
いい感じのワッコになった枯れ木を見っけ。
そうして、一番最初にあった吾妻火口に戻ってきた。
旧火口の東側は、西からの季節風で吹きっ晒しとなり、雪がつかない。近寄ってみると、それでもコマクサが自生していることがわかる。夏に来てみたい気もするが、ここまではとても来られない。
11:30。ここで、お昼ご飯を食べることにした。
小林さんの奥さまが作ってくれたブルーベリージャム入りのパンを食べていたら、ホシガラスが近寄ってきた。
おお、雪のつかない風衝地の地面を突くホシガラス。これぞ正に動物散布、恐らく探しているのはハイマツの実だろう。いいものを見、写真を撮ることができた。
しかし、よく思い出してみるとハイマツの実はくわえていなかったような…。このようにハイマツの実生更新は、ホシガラスの仕業によるものがかなりあるはずなのだが…。
ここから戻るルートもハイマツが凄くて凄くて。
ハイマツを抜けると、シラビソの矮小低木林となる。これを抜けるのも大変だった。
第3リフト降り場からは、得意の表万座スノーシューダウンヒルコース。浅間山を眺めながら落下していくゴキゲンのコース…なのだが、これまでの360度のパノラマを見てきた後なので、その余韻を味わうに過ぎない。また、2日前の雪が軽いクラスト状態になりつつあり、私にとって歩きづらい雪だった。
米無山の手前で、ランチをするのに使えそうないい場所を発見。露出した岩もあるので椅子に使える。しかし、こういうものがあるところは風が強いので要注意。
この辺りのハイマツには、動物の食痕があった。恐らく、付近にあった足跡の主・カモシカの仕業だろう。
チョウセンゴヨウの木も発見。この木の実は、ハイマツ同様に熟す前に動物がみんな持っていってしまう。リス、カケス、ホシガラス達の大好物なのだ。
米無山山頂(1,871m)付近であったアカマツは、もしかしたら嬬恋最高地点かもしれない。