万座の水源



トキワ松学園の先生方が遊びに来てくださった。今回はプライベートなので、僕も一緒に大いに楽しませていただいた2日間だった。初日は万座の水源へ。鹿沢地区PVの会の下谷会長も同行してくれた。

標高1,750m付近のタラノキの実はようやく黒く熟してきた。ハウチワカエデの紅葉も始まっている。

まずは、2001年台風ダナスで変貌した旧熊池へ。この池のエメラルドグリーンの色もだいぶ戻ってきた。真っ二つに分かれたこの池はやがて「ふたご池」とでも呼ばれるのだろう。今日から僕がそう呼ぶ。


  


霧の中、林道を進むと雨も降っていないのに林床のチシマザサに大粒の水滴が落ちてポツポツと鳴る。樹木の枝葉が空中の微小な水滴を捕らえ、それらがやがて集まって林内雨として降ってくるのだ。これを樹雨(きさめ)という。いい言葉だ。

途中、恐らく作業用のジープが溝にはまってスタックしていた。これはもう助からないのでは?

水源分岐点付近では、見たことのないキク科トウヒレン属と思われる植物があった。○○アザミ、△△ヒゴタイ、××トウヒレン…いや、図鑑に載ってないぞ?


  


まずはサブ水源へ向かう。ここに行くには万座川を渡らなくてはならないのだ。先は長い。まだ濡れたくはない。

ブナの巨木林を抜け、水源に到着。この付近ではブナの実をゲットしたかったのだが残念。手に取れる場所には成っていなかった。時期も少し遅かったようで、小動物の食痕が空しく残る。先に進もう。

ところでこのサブ水源は長年、黒湯沢であると認識していたが林野庁の施業実施計画図を見るとどうも裏明神沢である可能性が出てきた。誰に聞けば解るのやら。


  


分岐点に戻りメイン水源へ向かう。少し進むと橋があるのだがこの橋は紅葉、向かいの絶壁、足元の万座川のポットホールと景観に優れ、一度来たら忘れられない場所なのだ。

そしてブナ−ミズナラ老齢林の美しさ。ツタウルシの写真になってしまったが、本当はあの天然林の美しさを撮ってくるべきだった。樹齢500年クラスのミズナラや樹齢300年クラスのブナがごろごろしているのだ。


  


このブナ−ミズナラ老齢林で部分的に急に植生が変わり、シラカバやダケカンバの若い林になる所がある。これは崖崩れや地すべりの跡で、陽樹が素早く進入し森林の隙間を埋めたのだ。天然林は複雑なモザイク状のパッチ構造になっている。

コハウチワカエデがはっきりとした色分けをしていて綺麗だった。

そのうち、世界最大の生物が!いつかnatureという雑誌で、ナラタケは世界最大の生物だと紹介されたそうだ。ひと株見つけるとその周辺の地下では数キロに渡って同個体とみなすこの菌が存在しているのだという。


  


そして2番目の橋へ。この橋の下のバルブを開閉する仕組みには驚嘆した。

そしてメイン水源に到着。標高1,500m付近か。

倒木の下に何かある。上から見ると「おっ!ヤマブシタケか?」と思ったがサンゴハリタケ(ヒダナシタケ目サンゴハリタケ科)の方だった。ヤマブシタケは薬効が高く、近年注目のキノコである。サンゴハリタケはそうでも無いみたい。


  


ここのハコネサンショウウオを観察していると何かの卵が出てきた。岩魚の卵ではないかと思う。しかし、ネットで調べると岩魚の卵であれば白く濁った卵は死んでしまった卵であるという。とりあえず動かした石を戻しておいた。

イワナ飼育日記↓
http://www.asahi-net.or.jp/~PP8T-TZK/siikunikki.htm

採れたてのナラタケ、チャナメムツタケ、シロナメムツタケ、ヌメリスギタケモドキで作った味噌汁とバター炒めをおかずにし、おにぎりをほおばる。

帰ってから本格的にキノコ料理に取り掛かるが、久々の料理はうまくいかず、友人のウッチーに助けを借りてようやく食べ物らしいものを作ることができた。天麩羅、醤油炒め…中でもヌメリツバタケモドキ(キシメジ科)とシロナメムツタケのおろしあえは絶品だった。

そして本当はブナの実をナッツにして飲もうとしていたが採れなかったのでもう一つのナッツ、ツノハシバミを楽しんだが、果実を包む総苞をむく時に微小なとげが手に刺さって大変だった。