「ねどふみ」とスゲ縄ない





「『ねどふみ』からやるこんこん草履づくり」
http://ecotourism.or.jp/monodukuridendoushi/nedohumi.html


の二回目は、いよいよ『ねどふみ』であります。前回、刈り取ったスゲを尻焼温泉が湧き出る長笹沢川の川床にしばらく漬けておくことで、スゲのしなが良くなり、縄にしたりムシロにしたりしやすくなるのです。この『ねどふみ』があるから根広のこんこんぞうりは他で作っているものよりもひと味もふた味も違う訳でありますが…






なんと!川がダム放流の為に増水していて、危険のため入れないとのことです。


Σ(°д°lll)ガーン


そうすると、今回の『ねどふみ』は昔ながらのやり方ではなく、現代、実際に行われているやり方でやらざるを得ません。残念ですが、仕方がありませんね。



  


早く来たので根広の道祖神をよく見てみようと立ち寄って見ました。この、道路脇の道祖神の彫り方の、おおざっぱで力強いこと…



  


なんて思っていたら、行政が設置した看板には、道祖神は崖の上にあると書いてあります。えーこれ偽物だったの?上にある、あの墓石みたいなものが、根広の道祖神?…そうか、じゃあ、あの道祖神じゃあまりにも味気ないから、誰かが雰囲気出すために新たな道祖神を彫って置いてくれたのかも知れませんね。えー話や。



  


ねどふみの里には、足湯が設置されています。この足湯は、根広の集落が所有している尻焼温泉の権利を六合村温泉医療センターに使わせてあげていて、その条件として根広集落に温泉を配管してもらったそうで、なんと根広の集落は全ての家に温泉が引いてあるんだそうです。足湯の脇に転がっている石や板は、この足湯を利用して行っている現代の『ねどふみ』で使用されます。



  


富士子さんが、今日、縄ない体験に使用するスゲを足湯にざっと浸けます。今日、学習で使う分だけ、予め千代子さんがねどふみの作業を終わらせて干してくださっていたのです。通常、自分たちでスゲ縄ないをする前には、お湯に浸けて、こもにくるんで一晩置くらしいのです。とりあえずこれで、一応はスゲを自分で刈り、そのスゲを縄ないしてこんこん草履を編む…ことができるかも?しれませんね。



  


作業を始める前に、ねどふみシスターズの皆様にインタビューをします。『ねどふみ』にまつわるあれこれを、思い出せるままにお話いただきました。

  • 今、長笹沢川で尻焼温泉として湯客が入浴しているところは、昔は堤防がなかった。コンクリートも段々もなかったので、川床は広々としていた。高低差もなく、スゲを漬ける場所は自由に作ることができた。堤防ができたために場所が狭くなり、段差のためか滝壺化し深くて行けないところもできてしまい、湯客と場所を取り合いするようになった。
  • 尻焼温泉では、根広、長平、小倉の3つの部落がねどふみをした。
  • 花敷温泉では引沼〜和光原、世立など、入山中の部落がねどふみをした。
  • 入山の人はねどふみをしたが、荷付場から下の部落ではやらなかった。
  • 花敷温泉のねどふみの場所は昔の橋の下、今の露天風呂の向こう側の川岸あたりで漬けた。やがてホテルが建設され、温泉を引湯するようになったので、川床に温泉は流れなくなった。入山の人はねどふみをしなくなったが、その後もねどふみした人は、尻焼でねどふみした。
  • ひと握りで掴める量を一把にし、それを10把くらいまとめて一束にし、束の単位で川に漬け、上から石を置いて川床に固定した。
  • 本来は雪の舞う頃ねどふみをした。「とうかんやだから、今日はねど入れるべいや」。(十日夜は旧暦10月10日に行われた)
  • 旧正月(2月初め頃)の前までにねどを仕上げた。
  • 川の近くて干して乾かして、軽くしてから根広まで運んだ。
  • ねどふみしたスゲはみんなムシロにした。昔は野反池の近くで採れたイワスゲを使っていた。ムシロを織る時の縦ひもには「しなの皮」や「麻の皮」をよって使った。
  • こんこん草履で使う芯縄もやはりイワスゲを使っていた。しかしある時、スゲを使ってみたら-イワスゲよりも丈夫で芯縄として良かった。それ以降、芯縄にはイワスゲでなく、スゲを使うようになった。羽根尾あたりには、短くてとても質の良いスゲがあり、取りに行った。場所によって長さや質が違う。
  • スゲはねどふみに2週間かかるが、みょうがは1週間で仕上がる。
  • 昔は用途があってムシロをずいぶん織ったが、今はめっきり織らなくなった。
  • 根広では稲は作っていなかったので稲藁が無かったが、昔は米俵の空俵を買ってきちゃ解いて草鞋やこんこん草履を作った。


また、現在は足湯でねどふみを行っていることに関しては、

  • 平成16年に「ねどふみの里」ができた。それ以降は、長笹沢川ではなくて、足湯で漬けている。
  • 足湯は狭いが、川床のように危険がなく、楽で安全で、温度も高いまま維持できて良い材料に仕上がる。
  • 川に漬けたスゲは真っ白に仕上がったが、足湯だとやや先の方の青み(緑)と根元の赤みが残る。
  • 家のお風呂(尻焼温泉を引湯している)でスゲを漬けて入浴すると体が温まった。

え、スゲ湯ですか! 菖蒲湯と同じ効果があるんですかね?


また、先日、野反湖にイワスゲを探しに行って、自分なりに確認した「イワスゲ」は、なんとイワスゲではないらしく、根広の方々がいう「イワスゲ」はもっと長いらしいのです。

刈ったスゲのその後と、イワスゲを探しに
http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20131024/1383424231


イワスゲがある場所を聞いてみると…

  • シラネアオイ群生地の歩道の途中にある沢に少しある。
  • エビ山から根広に降りる道を下って100m位のところ。
  • 大楢(おおなら)の歩道沿いに大きな群落がある。


そうです。いやいや、六合のことを知るにはまだまだ時間がかかりそうですね。



  


では早速、前回刈って乾燥させたスゲ束を温泉(足湯)に浸してゆきます。



  


次々に入れていきます。浮いてくるので足で踏んで沈めながら、どんどん入れて行きます。



  


木の板で押し込んでさらに上に乗っかって押して、



  


板の上に重石を次々に乗せてゆきます。がっちり敷き詰めたら、



  


建築シートをかけて、シートが動かないように、その上にも重石をのせて、現代流『ねどふみ』作業は終了しました。





足湯の温泉が徐々に緑色に濁ってきました。『ねどふみ』をするとスゲからアクが出て柔らかくなる…といいます。この温泉を濁らせた成分がアクということなのでしょうか。



  


初めにお湯に浸けておいて柔軟になったスゲを参加者に配ります。



  


ここで、「こすり」と呼んでいる道具が人数分ありませんでしたので、千代子さんが足りない分をささっと作ってくださいました。スゲで縄ないをして、それを三つ折りにして、



  


それをさらになっていきます。まとまったら余った分を一方の網目の中に入れて通して、



   


邪魔な部分を切って、ポイ。あーしまった、この道具の完成形を接写できていません!





これは、富士子さんの「こすり」です。もしかしたら千代子さんのものと少し違っているかもしれませんが、とにかく、こういう縄やスゲをまとめたものを道具として使います。



  


「こすり」が行き渡ったところで、本日の二つ目の学習内容、『スゲ縄ない』をします。スゲをおもむろに6〜8本とって、先端の方を20〜30cm出して足の指に挟んで掴み、根元を二手に分けて縄ないします。



  


しっかりした良いスゲなら3本、弱そうなスゲなら4本をひとまとめにして、なっていきます。



  


根元まで縄ないしたら、絡んだ縄の先の方を掴んで逆まわしする「捻り戻し」をして、縄の絡みをを強ませます。絡みがしっかり強まったら、根元と足の指で掴んでいる先のほうを軽く張り、「こすり」を縄に当てて上下にこすります。こするとささくれだって飛び出る部分が出ますから、それをハサミで切ります。



  


しっかり絡みができているなら、根元の端から3cm位のところで玉結びをします。



  


足の指で挟んでいた先の方を外し、今結んだ根元を挟みます。結び目を指にひっかける感じで。



  


今度は先の方をなっていきます。スゲは先が細くなるので、さっきまでなった根元部分と比べると、頼りない感じがもう、あるはずです。先の方をなう最初から新しいスゲを足して、片方3〜4本の厚みをキープしつつスゲ縄をなっていきます。



  


スゲが細くなってきたら、すかさずスゲを足してまたなう、この繰り返しです。千代子さんの場合は、足してから4〜5回は素早くなって、そこからなうスピードを落とし、外側に少ない方のスゲが来た時に手を止めてスゲを継ぎ足していきます。



  


このように、スゲを足す時は必ず外側(自分から遠い方)で足します。ある程度なったら、縄を自分の方に捻る「捻り戻し」をして絡みを強くさせます。



  


捻り戻しをした後には、かならず「こすり」をかけます。





こすった後に出るささくれは、ハサミで切って綺麗にします。これを切ることを六合では「へぞる」というそうです。ささくれがあると(こんこん草履づくりの際に)芯縄を引っ張る時にうまく行かない時があるのです。この作業を延々と繰り返して、長いスゲ縄ができあがります。こんこん草履を一足作るには、だいたい3メートルのスゲ縄が必要だそうです。





そうそう、なっていくと必然的に縄が長くなってきて、縄を掴んでいる足(指)が遠くなっていきます。そうすると作業がしにくくなるので、こすりをかけ、仕上がったらその場所を足指で挟み替えて、あまり長すぎない、程良い長さで常になえるようにします。



  


  


縄ないは初めてのことでしたが、スゲは稲藁よりもない易いのではないかと思いました。しっかりしていて長いし、何よりも稲藁をいじった時のように大量の細かいゴミが出ません。



  


これが、千代子師匠のなったスゲ縄。細いですね、繊細で美しいです。





これが、私がなったスゲ縄。なんかずいぶん太いですね?太さも一様でなく、捻じれもばらついています…。




これが、横坂さんのなったスゲ縄。やーなんですか、お師匠様方の作品とほとんど変わらないじゃないですか!すごい上手です。



  


富士子師匠にも褒められて、ご機嫌な横坂さん。
右の写真、この紅白こんこん草履写真は、なでしこジャパンのために作ったそうで、クライアントは材料の布を送ってきて、電話で打合せして完成品を送ったらまた要望をもらったりして、かなり時間がかかったそうです。それでも合計20足くらい作って送れたそうですから、なでしこジャパンの皆さんが海外の宿舎で過ごす時に、もしかしたらこのこんこん草履をはいて過ごしてくれているかもしれません。なんだか嬉しいですね。


それでは、今日のミッションはこれにておしまい。次は12月1日(日)、ねどあげとこんこんぞうり編みです。






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