草津白根山(本白根山)スーパーインタープリテーション研修会 実施



7月25日には女子中学生115名様を本白根山探勝歩道を12名でガイドする事業が入っています。通常、教育旅行・学生団体のガイドだと値切られて20〜30名の生徒に対して一人のガイドで案内することが多いのですが、今回はガイド115名様に対して12名のガイド、つまり9〜10名の生徒に対して一人のガイドです。


「ガイドは、赤木さんと同等レベルで揃えてください。」


って仰られるのも無理はありません。なので、当協会会員限定で赤木道紘のスーパーインタープリテーション研修会を実施することにいたしました。



  


弓池湿原をぐるっとまわります。ハイマツが生育しているあたりで下を見ると、モウセンゴケが観察できます。案内する頃には花が咲いていることでしょう。モウセンゴケはコケ植物ではありません。被子植物です。コケとは名ばかりなのです。



  


最近、テレビですぐに話題となるカルガモ。当日、癒し係で雇いたいくらいです。
今年は、コメツガの球果が豊作のようです。



  


この辺りには、ホソバノキソチドリがやたらとあります。コバノトンボソウというものが、亜種としてたまにあるそうなのですが、私が見るに、ほとんどはホソバノキソチドりです。



  


白根火山ロープウェイ山頂駅でトイレ休憩をします。さて、ここには小さなコマクサ畑があって、実生コマクサを観察できます。しかし、山口昭夫さんの書いた成長モデルのうち、「双葉のコマクサ」が見当たりません。そもそも、成長したらパセリ葉となるコマクサ、双葉の時代はあるのでしょうか?謎です。



  


ゴゼンタチバナは亜高山帯の登山道沿いにどこにでもあり、葉の数が4枚から6枚になると花が咲くことで知られています。しかし、中には2段になっているものがあることは、案外知られていません。そして、2段になったものは、葉の数がまちまちになってくるのです。写真では下の段が6枚、上の段が4枚のゴゼンタチバナを紹介しています。



  


そして、シラビソとオオシラビソの違いも、初めのうちはなかなか覚えられません。名前は球果の大きさで付けられたもので、葉のつき方や大きさ、樹皮の色でも少し違います。そして、超上級者の鑑定方法がこれ。シラビソは縦に割れ目、まるで妊娠線のようなものができて、それがやがてブツブツの皮目に変化していきます。これが出ていたらシラビソです。



  


ヒカリゴケの鑑賞ポイントも見つけました。ヒカリゴケは原糸体の細胞がレンズ状になっていて、細胞の奥に偏在する葉緑体上に集光する仕組みになっています。この集光機能のために、薄暗い場所でも光合成をすることができ、生育しているのです。つまり、光りたくて光っているのではなく、集光するための仕組みが、たまたま光に反射するようになっているのです。





空釜(中央火口)につきました。コマクサが満開です。本白根山のコマクサは、紅色が強く、例えば、ぐんまフラワーパークにある園芸種の「シキザキコマクサ」のようであると揶揄されています。ところが、本白根山には元々紅色の強い、まるでえんじ色のようなコマクサが自生しているのです。



  


例えばあの場所。あの場所にあるコマクサは植えたものではありません。完全に実生です。私のデジカメではここまでしかズームできませんが、かなりの株数があるという事、そしてそもそもの色がかなり赤いのだ…ということがお解りいただけるかと思います。



  


確かに、かなり紅いです。これは昭和40年に、故山口雄平さんが本白根山にコマクサを復元しようと、草津町の吉田さん(お土産物屋)から一株と相当量の種子を分けてもらい、紅い個体を選別して「黎明」と名付け品種登録したものと同じものを本白根山に植えたそうです。そして吉田さんが所持していたのはもちろん、本白根山から降ろしたコマクサでした。遺伝子としてはほとんど攪乱されていないコマクサですが、選別している時点で天然ではないと考える人もいることでしょう。ここは、意見の分かれる所ですね。



  


青緑色のパセリ葉のコマクサの中に、たまに、黄緑色の葉が混じっていることがあります。これはハイマツの赤ちゃんです。恐らく、ホシガラスが隠しておいたものが芽吹いたのでしょう。しかし、この急斜面ではハイマツはこのまま成長することはできません。雪解けの瓦礫移動の際に根が切られるか、水不足に耐えられないのでしょう。ところが、コマクサならこの斜面でも耐えられるのです。だから、こういうところはいつまで経ってもコマクサばかりが咲いているのです。



  


さて、私が解らなくなるのは中央火口のこの溶岩です。これを、火山学者の高橋正樹さんは「本白根溶岩ドーム」としています。3000年前に、石津溶岩の流出、本白根火砕丘、殺生溶岩および本白根溶岩ドームが噴出、最後に振子沢溶岩および鏡池北火砕丘、鏡池溶岩ドーム、鏡池火砕丘が形成されたそうですが、そもそも溶岩ドームというのは、火山から粘度の高い水飴状の溶岩が押し出されてできた、ドーム状の地形のことをいうと認識しています。すると、本白根溶岩ドームがゆっくり押し出てきた後、中央火口が出来るような爆発的噴火があったことになります。火山噴火の現象にはこの他にも火砕流軽石噴火などがあり、いろんな現象が一気に起こるわけですから、机上でや想像ではありえないようなことが起こるのでしょうね。




次に構造土について。まず構造土というのは、周氷河現象(寒冷気候のもとで、凍結と融解の作用の繰り返しにより形成される地表の地形・構造)のひとつで、土壌の凍結・融解の繰り返しにより細かい粒質部ほどよく移動する自然ふるい現象によって形成されます。日本で見られるのは非常に珍しく、本州では本白根山が最大の分布地なのだそうです。また、中央火口(線状・環状)やコマクサ平(多角形)の構造土は現在はほとんど土壌は移動しておらず、ほぼ化石構造土となっているそうです。


さて、この写真は線状構造土の遠望ですが、粗い礫質部と細かい粒質部で作られた線状模様が見え、コマクサは礫質部のみに育成しているのがわかるでしょうか?粒質部にもコマクサは一時的には侵入したでしょうが、構造土は細かい粒質部ほどよく土壌が移動して形成されているために、移動する土壌によって根が浮き上がり、死亡する場合が多いと考えられているそうです。本白根山では積極的にコマクサの植栽が行われてきており、かつては構造土にも植えたことがあったかもしれません。その場合、人間の心情的に粒質部に植えたでしょうが、それらは枯れてしまったであろうと推測されるわけです。


うーん、なんとマニアックな。だからスーパーインタープリテーションなのです。



  


中央火口をぐるっとまわります。ミヤマモンキチョウの雌がクロマメノキの花を吸蜜しているように見えました。だとしたら、幼虫の頃はクロマメノキの葉を食べるわけですし、ものすごくクロマメノキに厄介になっている事になります。いや、産卵していたのかも…





展望所でお昼ご飯を食べて、



  


下っていく最中に、白いコマクサを探します。確かにありますが、このあたりにもっと大きい株があったはずなんです…。





別の株を見つけました。白いコマクサの花が後ろの岩をバックに映えています。しかし、記憶にある大きな株は見つかりませんでした。この時代にまだ盗掘する人がいるのでしょうか?信じられません。



  


次に鏡池まで来ました。ここでは亀甲模様ともいわれる、大きな多角形構造土が見られます。これまでのものよりもより水分が多いので、凍結と融解がはっきりしており、その際の粒の移動が顕著なのでしょう。





この風景の中、子供たちに昼食を食べてもらう予定です。最高でしょう。



  


トウヒの球果は、下にぶら下がらないというか、場合によっては上を向くようなものもあります。被子植物のように花柄を持たなく、伸びた木質前年枝の先端に突き出た雌花が成長してくるので、当たり前ではありますが…。
本白根山探勝歩道で見られるのは、たいがいはバイケイソウの方です。コバイケイソウはほとんどありません。バイケイソウは森林に、コバイケイソウは湿原にあると考えると良いでしょう。



  


この後も自然の寄せ植えのような場所があったり、新たなヒカリゴケ観察場所を見つけたりで、自然ガイドのポイントを確認して参りました。よーし、あとは各自で復習をして、当日を迎えるのみ! 皆さん、張り切っていきましょー!






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