芽吹きの吾妻渓谷エコツアー研修会



長野原町が誇る名インタープリター・浦野安孫さんが講師となり、「ミツバツツジの花咲く吾妻渓谷エコツアー研修会」を実施しました…が、今年は3月〜4月上旬が暖かかったため、里山エリアの早春の花は全て終わってしまいました。なので実際には「芽吹きの吾妻渓谷エコツアー研修会」となります。「新緑の…」には一週間ほど早い感じです。


浦野さんは好奇心と知的探究心の塊のようなお人。もし浦野さんが死んだらそのまま剥製にして『インタープリター』と名札をつけて群馬県立自然史博物館に展示させていただきたいほどです(笑)。今日も、名調子っぷりを見せてくださいました。




  


JR川原湯温泉駅からスタートです。まずは滝見橋へ。吾妻渓谷を流れる吾妻川は酸性で、元々はコンクリートのダムなどは作れませんでした。理由は草津町西ノ河原を通過してくる湯川がpH1.8〜2.7という強酸性だったからです。吾妻渓谷でもpH4.0〜7.0あり、橋梁のある橋は(溶けてしまうので)造ることができなかったのです。


そう考えると、吾妻渓谷の深い谷は、酸性の流水により浸食力が通常の川よりも高かったことも影響しているのかも知れません(私の想像)。




  


ご自宅で国蝶オオムラサキの繁殖にも力を入れている浦野さんは、エゾエノキとオオムラサキの話をさせたら熱いです。オオムラサキは春に休眠から覚めると再び食樹に登って葉を食べますが、なんと樹木の幹に登ってくる間に茶色から緑色になるのだそうです。





エゾエノキの新葉は透明感があります。エノキとの違いは、エノキの方は鋸歯が上半分にしかないこと、葉の表面にほとんど無毛なのに対し、エゾエノキの方は鋸歯が2/3から発生していること、鋸歯がやや大きいこと、表面にも葉脈沿いには毛があること、葉裏がやや黄色がかることだそうです。




  


岩にこびりついたイワヒバ(ヒカゲノカズラ植物門イワヒバ科)。はその名の通り、岩場によく着生します。吾妻渓谷ではそこいら中にあります。比較的乾燥した岩場に出現し、日陰やあまり水の当たるような場所には出ない…のが通説らしいですが、あの岸壁では、水の流れるところに生育しているようです。こういうこともあるのですね。




  


イタヤカエデの花は、ほとんど緑色のようです。しかし、以前この吾妻渓谷で目の覚めるような黄色い花を咲かせていた樹木がありました。あれはイタヤカエデの仲間、ウラゲエンコウカエデだと思っています。でも今日は拝めないでしょうね。なぜならあの黄色い花の樹はミツバツツジと一緒に咲くからです。今年はもう散ったはず。




  


ダムの説明看板のあたりで振り返ると、真後ろが第1号橋でした。ダム天端標高586mって、あの高さなのですね。




  


小蓬莱まで来ました。なんとビックリするところにアカマツがへばり付いていることやら!パイオニアプランツとしても名高いアカマツは、菌根菌との共生もあり、痩せ地・ガレ地でも耐えてよく育つ。アカマツを女松(メマツ)、クロマツを男松(オマツ)と呼んだのは葉の尖り具合からですが、厳しい条件でも生き残るのは、やはりアカマツの方、さすがは女は強し!です。




  


小蓬莱の真下の吾妻川が湾曲しているのは、小蓬莱の岩盤が固いことを意味します。確かに、臥龍岩のように貫入し溶結したような岩盤が見えます。

工事現場跡には、外来植物フジウツギがたくさんありました。蜜が甘いらしく、蝶々にとってはごちそうなのだそうです。




  


大蓬莱という名の岩山を左に見ながら進みます。渓谷はシデの大木がゴロゴロあります。イヌシデ…それともアカシデかな?




  


さて、ここで嬬恋では見られない樹木の説明が。樹皮がびりびりに破けている樹は「アサダ」だそうです。見た目から「ハネカワ」「ミノカワ」とも言うらしいですが…




  


しかし、どうも微妙です。このあたりにはミズメの大木がゴロゴロしているし、ミズメは稚樹の時はヤマザクラのような樹皮をしていますが、大きくなるにつれ、アサダと同じように樹皮がビリビリに破けてくるのです。例えばこの2本はミズメに間違いなし。さらにアサダとミズメは同じカバノキ科で、葉も花もそっくり、形成層の匂いを嗅いでようやく判別できる程度。こうなると、判別はかなり難しそうですね。




  


今日は本来、ムラサキツツジミツバツツジ)を鑑賞するエコツアーだったはずですが、ここまで全く見られなく、ようやくここで拝見することができました。しかし、浦野さんに雄しべを数えさせられてビックリ!なんと、4月下旬に咲くのが雄しべが5本のミツバツツジ(ムラサキツツジ)、5月上旬に咲くのが雄しべが10本のトウゴクミツバツツジなんですって!
いやいや、トウゴクミツバツツジをムラサキツツジと言っているとばかり思っていました。早速、過去のブログ記事を書き直させていただきます。







で、赤木さん、やっぱり行くの?


やだなあ、浦野さん。当たり前じゃないですか。!(^^)!


ちなみに、前回ここを通った時のレポートはこちらです。
(浦野インタープリターと行く吾妻渓谷その2)
http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20121121/1364101459




  


国道を渡り、整備されていない、“道かたのようなもの”を進みます。




  


JR吾妻線の道陸神トンネル。ここから登って行きます。




  


どうしてこんなところに灰皿が?そして解り辛い道はジグザクに続きます。




  


印象的なイヌシデの大木と緩やかな上り坂を越えると、




  


思わず見とれてしまうような美しい森があります。




  


左手にある巨木、前回はコシアブラかタカノツメだとばかり思っていましたが、今回判明しました。なんとメグスリノキです。こんなに巨木になる樹木だったのですね。




  


いよいよ、今回のツアーで一番注意して通らなくてはいけない地点に来ました。右に落ちたら大変、百数十メートル下の国道まで真っ逆さまです。







これが道陸神峠への山道です。1563年、真田一徳齋(幸隆)が武田信玄の命を受け、湯本善太夫、鎌原宮内少輔ら吾妻の地侍と共に岩櫃城を攻撃した、その時もこの古道を通っているかも と思うとワクワクします。




  


そして道脇には人が数人は入れる岩窟があります。こんなところに山賊が潜んでいたら、とても敵いませんね。




  


この後も悪路はまだまだ続きます。倒木をまたぎ、くぐって進みます。




  


倒木を過ぎると、安定した緩やかなカーブになります。若いイヌブナの樹はブナ(シロブナ)とははっきりとした樹皮の違いがあります。




  


道陸神峠手前で浦野さんの説明を聞いて、その先へ進みました。







かつて、恐らくは戦国時代の頃、吾妻川を挟んで道陸神砦と姥子平砦がありました。この先にある屏風岩を越えるのは大変で、樽沢に降りて、岩下に向かったそうです。




  


ここが道陸神峠の先端です。以前、あの屏風岩の下には樽沢橋というのがあり、そこには立派な磨崖碑がありましたが、吾妻線をつくるときに壊してしまったそうです。今は日本一短いトンネル・樽沢隧道があります。また、屏風岩の屏風は6枚あるそうです…が、見えません。




  


鹿の食べた跡があったり、熊の爪痕があったりします。







そして、私のとっておきの「樹と戯れるスポット」にご案内。市川勇気さん。







櫻井昭寛さん。







木村正臣さん




  


この、道陸神峠手前から、上に登る道があります。仲間が10分ほど登ってみましたが、同じような道が続いていたそうです。







このまま登ると屏風岩の上に出られるのかも?一度は行って見たい場所です。




  


メグスリノキを学習して、







来た道を戻ります。足元注意!







この古道を、これだけの大人数で歩くのはいつぶりなのでしょう。




  


コシアブラかタカノツメだと思っていた大木。メグスリノキだと気づいてくれたのは櫻井さんでした。




  


名残惜しい芽吹きの夏緑林です。降りてきたのは元「熊の茶屋」があったところ。撤去した跡にはニセアカシアが生えています。




  


ヌルデと五倍子のことを解説するミスターインタープリター・浦野安孫さん。この好奇心に溢れた表情を見てください。




  


今日、見られた白い花はウツギとアオダモ







松谷トンネルのあたりは、垂直に切り立った吾妻渓谷の絶壁を覗き見ることができます。




  


川底に見える丸い穴。甌穴があるこの辺りを「龍ノ剣磨岩(りゅうのけんのみがきいわ)」と言います。吾妻渓谷に龍の名前が付いたところが多いのは、このあたりでは水の深いところには龍がいると考えられているからです。渓谷全体の浸食作用は、竜神神話に基づき「竜の剣が岩を磨いて出来た」と伝わっており、この付近は両岸絶壁で幅も狭く、磨き方が顕著であったため、このような名前がついたようです。




  


コナラの雄花も垂れてきました。鹿飛橋を渡ります。




  


鹿飛橋からの風景。上流には相変わらず倒木が二本引っかかっています。




  


遊歩道に入ります。ここから、急激に多くなる樹種、チドリノキの花。




  


注意して見ると、岩壁にイワタバコもありますね。




  


毒水沢を越えたあたりに、河岸段丘のように平らで広いところがあり、ここに降ります。おや、これがミツデカエデですね。メグスリノキとは葉の大きさがかなり違います。







ここが、今日の昼食場所です。
これでも吾妻渓谷のど真ん中です。(^-^)




  


はっきり言って、この場所で大勢でランチを食べるのが夢でした。だってこんないい場所、他に無いですよ?ヨガとかもできたらいいなあ。いつまでもここにいたいです。




  


イヌブナは、根株のところに萌芽があるのが特徴だそうです。そういえばブナは一本立ちですね。




  


浦野さんに案内してもらうまでは、私は右回りルートでばかりで歩いていましたが、この、先に国道を歩き帰りに遊歩道を歩く左回りルートの方がずっと気持ちいいことを知りました。それはきっと、利き手の右側を、危険な崖下の方にして歩けるために、精神的に安心して歩けているのでしょうね。




  


ハナイカダを見つけました。食べられるんですって。パクっと一口。ああ、これは美味しい山菜ですぞ。







イヌブナです。確かに、たくさんの萌芽が見られます。







最も開けた沢は大曲沢です。




  


このあたりはミズメが多いです。




  


ここは上りの階段が続きます。







上りきって、展望台です。お疲れ様でした。




  


展望台にある丸い石は、どうしてここにあるのでしょうか?浦野さんの写真コレクションによると、川原湯にはツクバネもあるそうです。




  


見晴台とは小蓬莱のこと。ここに登ったのですから、その分、下ることになります。




  


最近妙に気になるこの山野草ホトトギスのような、クリンユキフデのような…花の時期にはもう別のことを考えていて、確認しておりません。




  


ここで右にちょっと寄り道。ミズメの木を確認します。ミズメは樹皮の内側、形成層の部分にサリチル酸メチルを多く含み、皮を削るとサロメチールのような匂いがします。その匂いを一晩置くととんでもない匂いになるらしく、ヨグソミネバリ(夜糞峰榛)という別名を持っています。




  


このコース一番のイヌブナの大木。富澤さんの名前が彫ってあります。この字はなかなか消えません。しかし、昔は大切な水場や方角を、迷わないようにあえてブナの木に彫り込んでいました。ナタ目と言い、10年も20年も目印になったそうです。







最後の方にある、この広場はストレッチでもしましょうか。




  


やっと見つけました。タカノツメです。これで吾妻渓谷にもタカノツメがあると証明できました。ホッ。





いやいや、大変よく勉強しました。しかし浦野さんの長野原町や吾妻渓谷の知識は膨大で感服いたします。私たちも頑張りましたし、ここまで読んでくださったあなた様もたいへんよくできました ★o(´▽`*)/


吾妻渓谷はこれからみどりの季節を迎えます。森林浴マイナスイオン&自然観察ハイキングに、ぜひお出かけになりませんか。ご案内させていただきます。


吾妻渓谷ハイキング 〜ダムに沈む前に〜
http://ecotourism.or.jp/hiking/agatsumakeikoku/index.html







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