羽根尾別荘地・秋の植物観察会



今日は嬬恋村インタープリター会会員、豊島さんの植物観察会に参加してきた。各別荘地で、当会会員が自主的に住民のための自然観察会を開催している。本当に素晴らしいことだ。
http://interpreter.jp/archive/2007nendo/20071007/20071007.html

いろいろあったが、個人的に刺激を受けたものを書き留めておく。

ヤマラッキョウユリ科ネギ属)が普通に咲いていた。万座では今のところ見たことがない。参加者は野性味たっぷりの匂いをくんくん。

樹皮がボロボロの樹はヤエガワカンバ(カバノキ科カバノキ属)。初めて見るが、この付近には結構あった。


  


今日の観察会では、【羽根尾別荘地の植物たち】という資料が配布され、それを持って歩く。豊島さんは、植物の名前を覚えることについて、このように仰っていた。

「虹は日本では何色に分けていますか?…そうです、7色ですよね。しかし英語圏では、6色に分けています。そして世界では、2色にしか分けていないところもあります。それは、日本では7色に分ける言葉を持っているが、他国では6色や2色にしか分ける言葉が無いということです。…要するに、ものを分別するには、言葉・名前で分別するしかないわけです。例えば私がこの森の樹を見ると、一本一本全部違う風に見えています。それは、それぞれの名前を知っているからです。でも、樹の名前を知らない方にはどう見えるでしょうか?…全部同じ、樹の集団にしか見えないわけです。…樹の違いを解るようになるためには、樹の名前を覚えるしかないのです。」

サンショウ(ミカン科サンショウ属)の熟していない?赤い実と、熟した?黒い実。口の中に入れて見て後悔するのはこの赤い方。

そしてヤマネコヤナギの樹にあったのは、発生の仕方はどうみてもカバノアナタケに似ている。シラカバ、ダケカンバの他、一部のハンノキに出るとは図鑑に書いていたが…。本物だろうか?


  


豊島さんに外来植物駆除の話をさせたら右に出るものはいない…位、外来植物駆除にこだわっている。今日の観察会最後は外来植物駆除でしめる。

オオブタクサ、ブタクサ、セイタカアワダチソウニセアカシアなど…。参加者はこの考えに賛同し、皆で駆除作業をした。旧レナウン保養所施設跡は高台の開けた立地で、コンクリートが露出し塩基性物質が流失して土壌がアルカリ性になっているのだろうか、外来種だらけだ。森林内であればここまで酷くはならないのだろう。

しかし、オオブタクサはもう種ができていて、引き抜いて移動させると種が落ちるものもあった。来年はもう少し早くやったほうがいいように思った。ほんの20分ほどしか駆除作業は行えなかったが、外来種問題の啓蒙活動・アピールには十分だろうと思った。


  


駆除作業をしながら、気になったのはこのハマナス…らしい。カラフトイバラではなく、ハマナス。海岸地方にあるはずのハマナスがなしてここに?自生種のカラフトイバラと交配して遺伝子の多様性が失われたらどうするのか?…とも私は思うわけだが、このような生物多様性の危機感は「新・生物多様性国家戦略」を読むくらいの、いわゆる専門家の範疇の人でないと持たないだろう。ここに、外来種問題を含めた自然保護啓蒙の難しさがある。一般の方々に、どのようにしたらそういうセンシティブな自然保護思想を伝えられるのだろうか。それとも、そういうことはもう考えなくて良いのだろうか。考えて手をこまねいている間に人心が自然から離れてしまうのだったら、ある程度の生物多様性の喪失はもう眼を瞑って宣伝力・マーケティング力で自然に振り向かせた方が良いと考える人もいる。そして、実際には行政が深く関与していることにも、その傾向が見られるのだ。行政とは環境省を含めてのことである。

私の心をとらえて離さない言葉の一つに、こんな言葉がある。アマゾンの少数民族保護にかかわっている人の言葉だった。

(FUNAI職員、エルビス・ポスエロの言葉)
「世界はものすごい勢いで平準化している。それは同時に平準化の中で取り残された彼らのような部族が絶滅していくことでもあるのだ。それがどんなに少数の部族であったとしても、異なるものが失われていくということは、同時に我々の豊かさを失っているということなのだよ。」

そんなことを思い出しながら、白亜紀から花の形態としてそう変わっていないというハマナスの実を食べた。はるか昔、私たちの祖先が食べたのもこんな味だったのだろうか。そして、祖先らは自分達が共生関係を作り上げた被子植物がこんな問題になるまで繁栄するとは思いもよらなかっただろうなと。まあ、当時ネズミのような存在だった祖先たちはそんなことは考えるわけもあるまいが。