ツキノワグマのこと







草津町、常布の滝辺りでふと見上げると、そこいらはツキノワグマの食事の跡だらけだった。今年はミズナラのドングリが並作だったので、こんな年はこの食痕を多く見る。樹に登ったツキノワグマは、周りの枝を折ってドングリを自分の口に運び、食べた後はそのままいねむりしてしまう。まるで猛禽類の巣の様に見える食痕。これを熊棚という。


11月11日、川場の友人からメールをもらった。

>今日ついに全国統計が出たようですね。
>今年の捕獲(ほとんどは殺処分)頭数の10月までの統計が
>4300頭を越えたそうです。
>ご存じかと思いますが、群馬県でも記録を更新中。
>最近捕獲のすごく多かった年はやはりクマ騒動多発した
>一昨年の2234頭(有害獣駆除だけで狩猟は含まれていない)。
>去年は700頭前後のようです。
>10月で4300頭を越えるということは、べらぼうな数ですよね。
ツキノワグマの全国推定生息数がいくつかの文献で8000〜15000と
>言われています。
>8000が正確だとすると、今年だけで半数を超えるクマが・・・
>ということになります。


私が育ったのは、クマのいない森だった。子供心にも森は厳かで神聖な場所であると感じていた。だから、森の中では静かにしているのが当たり前だった。森の気配を深く感じていた。

やがて大人になり、嬬恋付近の森を歩くようになると「森は騒がしくして入らないと危険なところなんだ」と言われた。現にそうだった。そこいらの藪にもツキノワグマがいた。

そうして、鈴をぶら下げ、熊撃退スプレーを携帯して、森に入るようになった。もう、あの頃のような森との距離は取り戻せないだろう。あたり前に森に入っていたあの頃のように。


※注:ツキノワグマの撲滅を願っているということではありません。私はツキノワグマも大好きです。