一本のダケカンバ





一本のダケカンバ。


普通は雪崩跡や崖崩れ跡地などに一斉林をつくる陽樹のダケカンバ。森を歩いていてたまたま一本しかないダケカンバと出会った。

周囲を取り囲む亜高山帯針葉樹林の常緑の木々が、このダケカンバを風雪から護ってきたのだろう。およそダケカンバらしくない、すらっとした大木だった。


この大木を育んできた森の変遷に思いを馳せる。遥か昔、最高の場所に落下したラッキーな種。極所的に射した陽光と芽生え。すくすくと育てた森の揺りかご…


この森の中だから、まだまだ大きくなるのだろう。きっと天まで届くほどに。幹にびっしりあった苔のじゅうたんが上まで延びると、通り道になって神様が下りてくるんじゃないだろうか。