「森林セラピーとはどうあるべきか」 草津森の癒し歩道での森林セラピーを考える



草津温泉ロイヤルコースと大谷地池でネイチャーセラピー
http://ecotourism.or.jp/shinrinyoku/kusatsu01/index.html



今日は草津温泉の宿泊ゲストに対して、草津ロイヤルコースを使った森林セラピーウオークコースを考えてみます。


森林セラピーという言葉が生まれて、もう随分経ちました。皆さん、もう、ご自分の中で何が一体森林セラピーなのか、理解・把握ができましたか?…無理ですよね。


森林セラピーとはこういうものだ」と仰る人がますますたくさん出てきて、どれが本当の森林セラピーだかもう解らないでしょう?


では、私になりに「森林セラピーとはどうあるべきか」を申し上げます。ただし、これは、森林セラピーソサエティ協会が公式に解釈し発表しているものとはちょっと違うかもしれません。私なりの見解です。


まず、「セラピー」と付くくらいですから、セラピー界の王道であるアロマセラピーエステなどでのセラピストによるオイルボディトリートメントに近い癒しが提供されるべきですよね?


森の中を歩きながら、衣服を脱いでトリートメントやマッサージはちょっと無理です。しかし、対人によるコミュニケーションはありますし、セラピストの受容の心が伝われば、ゲストはサロンでベッドに横たわった時のように心を開くことができるでしょう。


そして掌でのタッチングなどはありませんが、その代わり触覚では、滑らかなカエデやブナなどの樹木に触れたり、柔らかな地面の土の感触を踏んだりします。視覚では木の葉の影が揺らめいたり、木々の緑や池の青さが美しいですし、聴覚では小鳥のさえずりや小川のせせらぎ、木々の葉擦れの音に癒されますし、嗅覚では花の香りや植物の芳香成分が森中に漂っています。味については、時期にもよりますが木いちごや生で食べられるナッツ、山菜などもあります。このような、森林環境による五感への複合的な作用こそが、人体が本来求めている自然のままの感覚器への刺激であり、だからこそ本能的な部分で癒されるのです。五感が心地よく天然の刺激を受けていることが大事です。


また、サロンでは、セラピストの施術を受けている間、とても安心することができます。サロン内の環境には香りや照度、雰囲気にとても気を使っていますし、柔らかく温かいセラピストの掌は気持ちよく、手技も丁寧だからです。森林セラピーでは、サロン内環境に代わるものが心地よい森林環境になります。ですから、森林セラピーロードだから癒されるということではありません。たまたま測定したロードであるだけであって、他の場所の方が美しい森林のこともよくあることです。地域でのアクセス事情や政治的理由があって森林セラピーロードはその場所に設定されています。ですので、各自で森林セラピーを体験する時には、自分が好きな森林に身を置くべきです。そして手技に代わるものが、セラピストやセラピーガイドの案内技術です。焦って早口で説明したり、ガサツな声ではいけませんし、歩くスピードは早くも遅くもなく、ゲストの好みのペースにすべきです。森林環境を上手に見せたり、感じさせたりするのです。ゲストの心と精神を解放させることを目指します。


ただし、サロンでのセラピストの掌は、森林セラピーでは単一の要素に置き換えるべきではないでしょう。例えば「神の手」と言われるセラピストの掌に匹敵するものは、「神の森林環境」でも、「神の案内技術」でもありません。それにさらにセラピスト本人の資質を足して2で割ったような、そういうイメージです。


セラピストの外見はどうでしょうか。これは、究極のことを言います。例えばサロン街というものがあったとします。アロマテラピーエステサロン、タラソテラピー、アーユルベーダ、カイロプラテッィク、びわの葉温圧療法などの店が立ち並んでおり、その専門分野のセラピスト、施術師たちは制服を着て店の入口に立ち、お客を呼び込んでいます。その中で、一軒だけ広い場所だが屋根がなく、森林公園のようになっていて、その奥にもう少し深い森の道が広がっている店があり、入口には「みどりのセラピスト」が立っています。この店こそが森林セラピーです。そして、サロン街に立ち寄ったお客様は、他の店と同様の感覚で森林セラピーを選ぶことがあり、人気もそこそこある。セラピストの外見は他の店舗と比較しても決して引けを取らない。ただし、専門的な身なりと振る舞いではあり、森林内に連れて行かれることは予想できる…


これが、一般の方々が求めている森林セラピーです。そして、こういった森林セラピーは、まだ私が見るに出てきていません。これを、当協会はやろうとしているのです。ただし、それは商標登録の関係で、森林浴セラピーという名前で実施する必要があります。


このような森林セラピーを行うためには、案内する森とセラピストが意識の上でかなり深いシンクロをしている必要があります。そうでないと、あまり精通していない森を案内することになり、ギクシャクしたり、近道を知らなかったり、質問に答えられなかったりで、ゲストはとても安心できません。


また、植物の名前も、当地の歴史も文化も伝統も、何も知らなくても良い…と言うのは間違いです。例えば私がアロマセラピーのボディトリートメントを受ける時、「あーそこ気持ち良い、なんていう名前の筋肉を刺激しているの?」などと聞くことがあります。東洋系では「何の経絡を刺激しているのか?」とも聞きます。そこで、「解りません」と答えられてしまったら、次回、その方に施術してもらいたいとは思いません。身体の仕組みを理解していないと思うからです。つまり、森の中に存在するものことの名前を知らないということは、森の仕組みを理解していないということです。セラピストがよっぽど美しければ何も知らなくても癒されますが、普通の場合は、質問されたことには全て答えられるようにしておく必要があります。


おっと、「森林セラピーはどうあるべきか」について熱く語りすぎました。では、中沢ビレッジ隣にある、草津の森の癒し歩道を検証していきましょう。




  


駐車場に車を止めて、隣接した森に入って行きます。すぐにある疎林にはヒノキ、サワラ等があり、ここで少し針葉樹葉の匂いを嗅いでも良いでしょう。またツタウルシとヤマウルシもあるので、今後の森林浴ウオークで触ってかぶれないように知らせることもいいでしょう。




  


ゴルフ場を横切り、ロイヤルコース入口に来ました。草津森林療法協議会が作った看板が立っています。




  


まずはまっすぐ進みます。右側にあるのは「傘モミの広場」です。




  


ウッドチップが敷かれ、丸太椅子が置いてあります。このあたりはヒカゲノカズラが多いです。







私がもし、今日お客様を案内するしたら、こんなことをしたいなと思いました。影絵遊びです。




  


コースに戻ってそのまま先に進みます。左側にある分かれ道に進んでみます。




  


この道はもう少し森林度が増します。しかし、林床の笹はなくなるのであまりうっ閉感はありません。ホオノキの若樹はいつも何か気になります。いつもは高いところにあって触れない大きな葉に触れられるからでしょうか。




  


やがて、サワラの広場に出ます。ここを右に行く分かれ道もあります。




  


さて、ここにあるサワラの樹はまあまあ大きいですが胸高直径70センチ程度で、大木とは言えません。ランドマークとしては物足りないと言えます。ここで、ゆっくりしようにも空は見えない、谷地形でうっ閉感がある…ということで、微妙な場所なんです。キツツキの穴があるので観察しましたが、私にはそこからお客様の楽しみに発展してゆくイメージが湧いてきませんでした。




  


そのまま降りきって、ロイヤルコースに出ます。気の利いたベンチがあり、右折して進みます。




  


左側にあるのは「そよ風の広場」です。ここでは、以前、自然案内人が裸足でお客様を歩かせ、ウッドチップの感触を感じさせていました。そういうのもありですが、最近はそれほどウッドチップも敷いていなく、枝葉もいろいろと落ちているので難しいでしょう。寝転がるくらいは大丈夫で、そういうことを勧めたりもします。


寝転がる時は、幹の下の方に枝がない樹の場所で、そして程よく照度がある場所でやりましょう。癒しを求めに来ているゲストは、軽いうつ状態にあると思ってください。暗い森の中で空を見上げると、枝葉により閉鎖された林冠がまるで逃げ場所を通せんぼしている様に見えることもあります。




  


そよ風の広場からは、もう少し先に進むことができます。矢沢川の急崖の手前に、鉄鉱石が落ちています。これはかつての群馬鉄山(現在の奥草津休暇村付近)から原石を運び出していた頃の名残だそうです。旧六合村元山地区にあった群馬鉄山で掘削された鉄鉱石は、大沢川、矢沢川の深い渓谷を索道により越え六合村太子まで運び出され、太子からは太子線により長野原草津口駅に運びました。ここは、ちょうど元山と太子の真ん中あたりなのです。こういった歴史は、私は森林セラピーでも伝えるべきだと思います。知的欲求も満足させて差し上げるべきです。訪問地の歴史と自分の暮らしやルーツが繋がることがあればなお喜ばれます。




  


ロイヤルコースに戻りました。正面に、サワラの広場に通じる道がありますが、これまでのコースの延長を進みます。




  


この先にクマよけの鐘があります。ロイヤルコースは決して見た目の自然度は高くないので、クマが出るのは一般の方は驚くかもしれません。でも、それだけ自然が豊かだということです。




  


次に通過するのはモミ林。モミの香りを満喫します。




  


次に右側にある広場には模様が綺麗に出ているウリハダカエデがあります。喜ばれる観察樹木です。




  


ロイヤルコース入口まで戻ってきました。左に進んでみます。少し歩くと、左側に「見晴らし台 ゴルファーに注意」の看板があります。




  


ゴルフ場を横切ってゆくこの見晴らし台、残念ながら本白根山がなんとか見えるだけ。私は案内パスします。




  


ロイヤルコースに戻ります。すると、カラマツとコシアブラの合体木を見ることができます。




  


この辺りから、右の森の中に降りてゆくところがあり、今日はここを進んでみます。すると、サワラの広場、サワラの樹のちょうど後ろ側に出ました。




  


今日は把握していない道をどんどん進みます。サワラの樹の向かいにあるシラカバから、森の中の道も進んでみました。するとどうでしょう、素敵な広場がありました。






誰も知らない、秘密の森の広場。丘のような地形にあり、照度も適度で、樹の混み具合もちょうど良いです。この場所はかなりポイント高いです。少々の藪こぎしても来る価値はあります。




  


ここからは分かれ道がいくつも出ているので、どうしようかと思いましたが、とりあえず最もしっかりしている道を選ぶと、ウリハダカエデの広場に出ました。




  


ここからは大谷地コースに行ってみます。コースを左折し少し歩くと右に森のゴルフ場があります。







広々とした開放感ある草原とコンケイブ地形、しかも日陰なのです。座観場所としては最高です。ゴルフをしているお客様がいなかったら、使わない手はないでしょう。




  


さらに下に降り進むと、モミ林があります。今日のコースの中では最もまとまったモミ林です。暗い針葉樹林ですから、幹からは苔が生えています。




  


大谷地に向かってどんどん降り進みます。この辺りは登山道っぽいので、ここを通るとコースに変化をつけることができます。




  


大谷地に出ました。ここを左折し、砂利道を歩いて行きます。




  


やがて、大谷地池のほとりに出ることができます。この時期からしばらくは睡蓮の花が見られます。







仏教では泥水の中から生じ清浄な美しい花を咲かせる姿が仏の智慧や慈悲の象徴とされ、また中国には「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という成句もあります。日本でも蓮の花は、清らかさや聖性の象徴とされてきました。ヨガには蓮華座という座り方があり、アサナの一つです。




  


大谷地池をぐるっと回ります。印象派を代表するフランスの画家クロード・モネ1840年11月14日-1926年12月5日)は日本美術への傾倒が強い画家でした。自宅に睡蓮の池を作り日本風の橋をかけました。モネの晩年はその池の睡蓮を描き続け、「睡蓮」の連作はモネの代名詞になっています。その「睡蓮の絵」を模した橋が大谷地池にはかかっています。




  


橋を渡って中島へ。ここで、なかざわ弁当のから揚げ弁当をいただきました。やがて、草津にもセラピー弁当を提供販売できる方が現れることを期待しています。ただし、中島には日陰がないことと、水位が近いので、特に癒されるものでもありません。




  


橋を渡り、池を一周する道に戻ります。この辺りは、道が狭いです。




  


最初の場所に戻ってきました。以前、隣接しているこの草原で、呼吸法や瞑想を行いました。今は畑になっているので、あまりスペースがありません。




  


ここから、左の森に続く道を進むと、まあまあ大きなモミの木があります。以前はここに丸太椅子があったように思ったのですが、今はありませんでした。樹形は綺麗な三角錐で、モミ精油の効能を話す時には最適でした。




  


この森を時計回りに一周します。まずは少し上りです。右に曲がって、平坦な道になります。




  


アカマツが多く、リスの食痕が見られます。やがて、道路に向かって降りて行くようになります。




  


道路付近から右に回り込んでモミの樹手前の分岐に出ます。




  


小さな橋を渡り、大谷地池の縁沿いを歩きます。




  


通常の池一周コースの外側には、ホオノキの老木があります。この場所は以前は下草が刈り払われていて、私はここで恐竜と花の関係をインタープリテーションしたことがありました。もう藪化しています。もうこの道は使っていないのですね。浦島太郎になった気分です。




  


藪化した道を進み、砂利道に出ます。ここには草津町で一番大きなホオノキがあるのですが、それももう鑑賞できなくなってしまいました。




  


道路に出て、草津フォレストステージを右に、上って行きます。思わず、乗ってみたくなるようなものもあるのですが、残念、有料の施設です。




  


この建物のところから右へ。少し土の上を歩きます。




  


アスファルトの道になり、ホテルヴィレッジ前へ。




  


最後に、私はここで膝裏を伸ばす整理体操をしたいと思っています。木々の合間から遠くを見下ろせるちょっといい場所です。


草津温泉ロイヤルコースと大谷地池でネイチャーセラピー
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※ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。






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