エコツアープロデューサー養成講座 2日目



二日目、第六講は環境保全の考え方と仕組みづくり。講師は海津ゆりえさん。文教大学国際学部准教授。エコツーリズム論、資源デザイン等を得意とし、地域の宝探し、観光まちづくり、エコツーリズム開発支援などを手がける。

最初に「保全とはなにか?」という問いかけから始まった。「うっ、保全の話をするときは保護との違いと、人の営みによる保全をすべきかどうかまで突っ込んでもらわないと…」とか勝手なことを考えてしまったのだが、しかし、資料を読み直してみると海津さんの最も言いたかったことは、

【「守り伝えたい環境=保全目標」は人が決めるものであり、手法よりも「しくみ」「つながり」の構築が必須】

という、ことだったのだと思う。しかし、実際の地域の現場ではさまざまな利害関係が渦巻いており、「自然のことなどもう関わりたくない!」と思うこともあるくらい複雑だ。仰るとおりで、できればそうしたいのだが、「うぐぐ、、、」と思いを詰まらせてしまう。でも、この講義は誰かがしなくてはならないので、海津さんのようなインテリ系の女性講師にグサッとやっていただくのが、相応しいかもと思った。


第七講はJESの取り組み、活動紹介。事務局の大森知稔さん。お話の仕方は淡々としていたが、丁寧で解りやすい協会の説明資料を用意してくださった。エコツアー向けの保険の紹介や、グッドエコツアー認定制度にも触れてくれ、やっていただいて良かったと思った。


  


第八講はエコツアーの企画と販売。講師は楠部真也さん(ピッキオ取締役ほか)。

楠部さんがこの講義をするということは、軽井沢ピッキオさんのエコツアーの企画販売の裏話を聞けるということであり、隣町で展開しつつある私としては大変にありがたい話である。実際、ここまで話して良いのか?というような集客宣伝の手法や苦労話、設定した値段やプログラムの成功例や失敗例など、惜しげもなくお話くださった。「ピッキオにとってのライバルは嬬恋村インタープリター会ややまぼうし自然学校等ではなく、自然体験以外のほかの娯楽である。」とし、例として軽井沢アウトレットなどを上げていたが、うーん、このへんはちょっと微妙なところかな〜。

イベントの運営表を拝見させていただいた。なるほど、こういう感じか。以前、まちむら交流機構のグリーン・ツーリズムインストラクターまたはコーディネーター養成講座で配布していた運営表よりは、単純で見やすい。現場により即したものと言える。私もこんな位がいいと思う。


昼食は吉田夏生さんの案内で【アサンテサーナカフェ】へ。日本エコツーリズム協会がエコツーカフェを行っているカフェ。

http://www.p-alt.co.jp/asante/archives/cafe/top.php

無農薬無化学肥料で作られた国産の玄米と旬の野菜、雑穀と保存料を使わない調味料で作られたランチを出している。コーヒーや紅茶は、海外のオーガニック認証を受けたもので、美味しく安全。

 ☆アサンテサーナカフェは、
  食べる人と、作る人の思いをつなげていけるような
  国産のものの良さを伝えていけるような
  環境にも人にも負荷をかけないような
  地球も人も健康でいられるような
  そんな、カフェでありたいなと考えています。

…と、いうことです。<日替わり雑穀プレート 940円>は大満足でした!


  


第九講はエコツアー商品の事例紹介。講師は原優二さん。株式会社風の旅行社代表取締役日本旅行業協会役員、海外旅の専門店連合会会長ほか。海外に支店や提携店ネットワークを築き、独自のツアーを展開。一方で「自然を五感で楽しむ」をテーマに「風カルチャークラブ」を主宰。インタープリター付の講座旅行を日本各地や世界でも実施している。

私にとっては、今回の講習で最も勇気づけられた内容の一つだった。実際に旅行会社の社長さんに、「本物の自然体験を!」と言っていただけるのはこの講習以外に無いんじゃないか?と思う。

2枚目の写真は2007年のツアーオブザイヤー特別賞を取った時のもの。翌年から海外旅行のパンフレットはみんな真似されてしまったという。この「自転車でヒマラヤを越える」ツアーは、実際には不可能。行程の一部をちょっとだけ走ってそんな気になるツアーとのこと。

原さんは旅行の過剰供給による人間圧の負荷を本当に肌で実感してきた人物だと思う。彼の言葉にはとても重みがあった。

「皆さん、ネパールを歩いてヒマラヤ山脈に登るツアーはエコツアーだと思いますか?…この中に実際にネパールに行ってみた人は?実際に行くとわかりますが、ネパールの集落は全部尾根沿いにあるんです。水のある谷付近には危険なのか、土理由があって尾根沿いでみんな暮らしています。そこに登山者が歩いていったら、同じ尾根を通りますよね。大勢で行くもんだから、集落は踏み荒らされてみんなはげ山になっているんです。それが実態なんですよ。モンゴルの乗馬ツアーを組んで、販売し、それがヒットして夏に大量送客ができたとします。そして冬に行くともうその馬はいない。馬が入れ替わっているんです。どうしたのか聞いてみるとこう言う、『ああ、あの馬なら、死にましたよ。あんなに夏にお客さんを乗せて、冬を越せるわけ無いじゃないですか』。…こういうものは、エコツアーではないんです。ネイチャーツアーなら話はわかりますがね。」


  


第十講はワークショップ。ここで二つの内容を提示され、どちらのワークをやるか分かれることになってしまった。

1.商品づくり
2.地域連携(エコツアーの導入の行程)

うーん、本当はもう地域連携の話は痛いほど解っているから、1.のワークをやりたいのだが、今回はインタープリター・コーディネーター養成講座のシュミレーションを兼ねているので仕方が無い。もうやり飽きた2.のワークをすることにした。


私達が設定したのは沖縄県のとある島。名前を寿島という。特に漁以外に産業の無いこの島は働き盛りの20歳〜60歳までがほとんどいなく、高齢化が深刻化している。この島を何とかしなくては!と村民が立ち上がり、エコツアーを導入することで、島を活性化させようと考え、「寿島エコツーリズム推進協議会」を立ち上げた。幸い、1,000人の人口のうち、100歳以上が100人いるので、この島ほどに長寿の島はないと考え、「寿命を3年延ばす寿島エコツアー3日間」を実施したい。

…という設定になってしまった。島の長寿には水源に秘密がありそうだ。そこをパワースポットとする。森の寿フルーツも体にいい。それを採って食べるのだが、種は地元の人の家の庭に植え、前回の参加者が植えた苗を山に持っていって植える。地元の人の踊りや唄、独特の漁法も長寿と関係しているのでそれを現地の人から伝えてもらう。島を船で周遊したり、夕食後はおばあちゃんの民話を聞かせてもらったり…

ステークホルダーとは関係機関ということらしいので、ありとあらゆる機関を書いた。村役場、観光協会、ガイド養成部会、長寿食部会、宿泊施設、研究者、移住者部会、プログラム開発部会(老人会、婦人会、漁協、寿丸船長、地区長、郵便局、小学校、中学校)など。

…行程としては2年前に村役場から住民や各団体の長に呼びかけ、組織の立ち上げ、理念の確立、お宝探し、資源の確認、商品の作り込み・吟味、ツアーコースと料金の設定までを1年間で。翌年はガイド養成を開始。村の長老による長寿セミナー、島の歴史伝統文化、自然講座。そしてガイドのマナーだとか環境保全理論等はJESに講師依頼を出して実施する。パンフレットを作成し、JES入会。島民対象モニター、一般モニター、プレスリリース&業界人モニターツアー、そして実施。


この業界ではまだ私でも若手の方なので、発表させられてしまうのが嫌なところ。自信ありげだから振られてしまうのかも。…しかし、やはり空想の島のことを話するのは苦手で、どうもパニクリながら発表してしまった。まいったまいった。


  


第十一講はリスクマネジメント。講師は松田光輝さん。

この講座は自然体験活動の会社の社長さんにやっていただいたわけだが、どうなんだろう。本来ならば法に関するプロ、例えば弁護士などにやってもらうともっと説得力があるのだろう。しかし、そうすると講師費用がもっとかさんでしまうし、内容はしっかりと充実したものだったので、これで良いのかもしれない。刑事責任、民事責任、旅行会社等の責任事例、保険の種類などをお話くださった。

第十二講は環境関係法規。講師は横山昌太郎さん。ピッキオインタープリター、農学博士。環境庁に入庁したが、もっと現場で…とインタープリターとして歩むことを決意。現在に至る。

こちらの講義も始めは、自然公園法などに手厳しいバリバリの官僚にやってもらったほうが…と思ったが、自然に関する法律はさまざまなで、自然公園法や自然環境保全法、鳥獣保護法種の保存法外来生物法、景観法、自然再生推進法などの環境省所管のものだけではなく、森林法(林野庁)、河川法(国土交通省)、文化財保護法文化庁)などがある。さらに世界遺産条約ラムサール条約生物多様性条約等があり、それらにもきちんと触れていた。横山さんで適任だったと思った。