からだを解き放つアレクサンダー・テクニーク ― 体・心・魂が覚醒する


からだを解き放つアレクサンダー・テクニーク―体・心・魂が覚醒する


  • 谷村英司(著)
  • 価格:¥1,890(税込)
  • 単行本:241ページ
  • 出版社: 地湧社(2007/04)
  • 発売日:2007/04
  • 商品の寸法:19x13.8x2.2cm



今後私が取り組んでいくヨガは国際ヨガ協会の思想の下で行っていこうと思う。まずは協会の推奨する本を読んで行こうと思うが、アレクサンダー・テクニークという、よく解からないものが推奨本とされている。国際ヨガ協会の教本を読んだ上で、私に合う団体だと承知し、どっぷり浸かる決意をしたのだが、謎のものを放ったらかして置くわけにはいかない。次の教室まで時間もあることだし、読んでみることにした。



F・M・アレクサンダー(1869-1955)は若い俳優として有望なスタートをしたが、やがて舞台上で声が出にくくなってしまった。医者にもさじを投げられてしまい、彼は自分自身の身体の動きを注意深く観察し、その原因を突き止めた。それはセリフをしゃべる決定的瞬間に、自分自身の首の後ろを縮めているということだった。有名な俳優になるという目的を達成しようとして一生懸命になりすぎ緊張してしまっていたのだ。そうして、頭を前に上に、背中を左右に広く上下に長く…などをするとうまく行くことに気づいた。それは緊張しない、固定観念にとらわれないことで意識を放ち、身体と感覚の状態をシンクロさせることだった…。



本書は、どのようなものがアレクサンダー・テクニークであるかとか、どんなトレーニングを積めば結果が出るのか?という類のものではない。そういうものを求め上に上がろうとする貪欲なアスリートが読むと、困惑してしまうことだろう。アレクサンダー・テクニークは長年、間違った使い方をしてきたせいで縮んでしまった身体を本来のしなやかで、可能性に満ち溢れた身体に戻すための、精神の持ち方、そして身体感覚の受け入れ方を説くものと見た。



私が白馬でスキーを教えていた若き頃、毎日滑る飯森ゲレンデのコブ斜面は私にとって散歩しているようなものだった。あのコブ斜面を滑らせれば右に出るものはまずいなかった。コブとコブを超える間はほんの0.5秒程であったろうが、私には5秒にも10秒にも感じられた。0.5秒の間、私は微細な身体感覚と周囲からの情報をずうっと持っていたのだ。あの時、確かに身体は何物にも捕らわれていなかった。常にどうにでも動けるポジションを取っていた。そして心も開放されていた。外からかかってくる遠心力や重力や風に翻弄される自分自身を心から楽しんでいたのだ。



すくなからず誰でも若い頃、自分が神でもあるかのような錯覚に見舞われるものだ。それはこういった身体と精神がシンクロした時に感じたと思う。本書を読むと何が自分の中で起き、このような縮んだ身体になってしまったのかがよく解かる。やっぱ、現代の科学優先、道具優先の社会で失ったものは大きいかもしれないなあ。