植物さんとの共同研究 ― 物と心のどんづまりを求めて


 【植物さんとの共同研究―物と心のどんづまりを求めて



  三上晃(著)
  価格:¥1,325(税込)
  単行本:209ページ
  出版社: たま出版(1996/07)
  発売日:1996/07
  商品の寸法:18.8x13x1.6cm



故・山野忠彦師匠の【木の声がきこえる―樹医の診療日記】に紹介されていた、植物の超能力研究の第一人者・三上晃氏。前に読んだ二冊は科学的に遅れているような気がしたので、もう少し時間の経過したものを読んでみることにした。



…なるほど、そういうことだったのか。三上氏は引用文献などからいっても、膨大な学術文書を読み漁っている人物であったようだ。その上で、地震のメカニズムは地球のその部分にマイナス電子が溜まったからだとか、記憶は脳の海馬ではなく腸で行われるだとか、ピラミッドの下には黄金が埋まっているだとか、太陽の黒点には大森林が存在するだとか、太陽のコロナは水蒸気であるだとかいう、とんでもない理論を展開しているのだ。



こういう内容であればなるほど、科学データを第一優先とする現代社会では通用するはずもなく、今現在、三上氏の研究を引き続き行っている人物がいないのも納得できる。…しかし、よく考えてみると、今現在の科学はせいぜい人間程度が人間の頭の中で理解できる脳みその中で、立体的に描くことのできる理論やデザインを元に組み立てているものであって、それが宇宙の真理を捕らえているはずは絶対にない。つまりは、三上氏の宇宙観は現代科学では全く通用するものではないが、別にどうってことないのだ。今の科学だって、1,000年後には当然通用しているわけがないからである。



三上氏は植物と対話することができ、植物が掲示することを本書に書き綴っている。面白いと思ったのは、どうして植物がありとあらゆる宇宙の真理情報を持っているのかということ。私たち人間は衣服や履物で身体を覆い、鉄筋コンクリートの中で暮らしている。自然から隔絶した生活を送っている。ところが植物はどんな日でも素っ裸で大地に根を下ろして立っている。彼らは大自然の真理、宇宙の真理のそむいては生きていけない。だから、大自然の真理に基づく偉大な能力を身につけているのだという。…野生動物達が第六感で危険を回避している能力のことを考えれば、植物が同様の超能力を持っていることは当然といえよう。とてもいい考え方だ。



しかし、注意したいのは、植物が考えている世界観は植物の都合、事情による世界観であって、それが宇宙万物真理を包含していると考えるのはちょっと危険である。もちろん、私達は植物によって生かされているのであり、世界から植物が消えてしまったら、シアノバクテリア以降に発生を基にする生命は絶滅する。しかし、嫌気性バクテリアは生き残るではないか。嫌気性バクテリアに命がないと思っているのか?硫黄で生命活動を行っている嫌気性バクテリアは、酸素を燃焼させ生命活動を行っている私達の祖先である。そこから新たな進化の道を歩む可能性だってあるだろう。酸素燃焼ではなく別の道を。植物の都合では、戦争を起こすような人類は不必要なことは当たり前のこと。我らが種を存続させ、伝播し続けてくれる人類のほうが良いに決まっている。そして、植物には人間の頭でデザインした程度の近代科学などに左右される理由などない。彼らの世界では太陽のコロナが水蒸気であり、ピラミッドの下に黄金が敷かれているというルールであっても、植物の都合ではそれで良いのだ。彼らが生命を存続させていくのに、そういう世界観であることになんら問題はないであろう。



本書を読むならば、まずそういうことを念頭において読んでほしい。つまり本書は、植物と対話できる三上博士が、植物の世界観を人類に紹介したものである。だからビックリするような新説ばかり書いてあるが、驚かないで、揶揄しないで、植物の世界観を楽しんで読んでほしいと思う。