草津白根火山地質図

  


産総研 地質調査総合センター/地質図カタログ
http://www.gsj.jp/Map/JP/volcanoe.htm

  • 縮尺 1:25,000
  • 発行年 1983年
  • 著者 宇都浩三・早川由紀夫・荒牧重雄・小坂丈予(地質調査所 技術部,東京大学 地震研究所,東京工業大学 工学部)
  • 価格:¥1,575(税込)
  • 両面印刷:地質図面、表紙・解説面
  • 発行:産総研 地質調査総合センター
  • 取扱先:東京地学協会、地学情報サービス


万座温泉の記事を執筆するにあたり、大急ぎで読んだ地質図。地史を理解していないと自然史は書けたものではない。以前に購入しておいて良かった。


読んでなるほど、曖昧だった地形と白根火山形成史が私の中で噛み合ってきた。万座は新第三期(2,500万年前〜200万年前)の地層であったのか。この古い地層は広域的に熱水変質作用、珪化変質作用をこうむっている。草津の温泉は白根火山が流出させた溶岩や火砕流の排出の恩恵により湧出している温泉であることは間違いなさそうだが、万座の温泉は第三期の地層を通って出ている温泉だったのだ。こりゃあ、成分が違うのはあたりまえだ。


白根火山の溶岩流、火砕流は全て南東側(草津は東にある)に流出していることから、かつて万座山−黒湯山付近に最も高いピークがあり、その中腹から本白根山、その後白根山が噴火発達してきたと思われる。そして火口付近であった万座は岩石がボロボロになり崩れやすいところとなる。万座川により侵食され今のすり鉢状の万座地形が生まれたのだ。


他には、本白根沢のカラマツ天然母樹林のある、広い扇状の地形についての説明がなされていないのは気になる。しかし上部、硫気変質地帯の地質図に凹部が見られることから、崩れた跡であることがわかる。この作用が何百年前だったのか。そして火砕流を伴ったのか?有史にある最も古い噴火の記録で西暦1805年。200年余りであのようなカラマツ巨木林が生まれることは無かろう。少なくとも400年前位には火砕流か土石流があったろう。通常の土石流であればダケカンバ一斉林を経て極相へと向かうのだが、カラマツで数代更新することになったのには、極度の酸性土壌となる要因があったはずである。それが上部の硫化水素ガスの噴出によるものか、それとも小噴火によって硫化水素ガスが発生することになったのか…興味は尽きない。


気になるのは、著者の一人である早川由紀夫氏のHPに載っている白根火山の火山史とずいぶん違っていることだ。この地質図が発行された後に解かった事を早川氏がHP上で公開したのか、それとも昔から荒牧重雄氏とは意見が合わなかったのだろうか?地図では本白根山が最後に溶岩流を排出したのが10000年前とあるが、これが現在の早川由紀夫氏のHPでは3000年前となっている。この、年代についてのあたりは慎重に引用したほうが良さそうだ。