1級樹医養成セミナー(治療実習) 第一日目

2年間通った大阪府交野市での樹医養成セミナー。とうとう最後となるセミナー内容は生木の治療実習。明日は雨が降りそうだからハイピッチで進めてほしいと言われたが、まさか前回と同じメンバーでやらされるとは思っていなかった。知っていたら、今年はあきらめ、来年にしたのに…。

だって屁理屈さんがリーダーシップを取ろうとするので、ぜんぜん前に進まないんだもん。自分がきちんとプロセスを追った説明ができないから纏まらないのに「でも」「いや」ばかり言っている。相手を否定するだけでは自分の理は通らんっちゅーのに。現実社会でうまくいかなく、自然だけは裏切らないから…のノリで入ってきた人には、こういう人が多い。だから自然保護はいつまで経っても流行らないんだよね…。自然保護が辛く悲しいオタク集団だと思われちゃ敵わない。言っておくけど、自然保護はお洒落で、格好良くて、楽しくて、モテるんだよ!!

あースッキリした。本当はまだ言い足りない。(下品な言葉は少しカットしました)

さて、私達の班が与えられたのはこの小さな樹。樹種はソメイヨシノ。ぱっと見た感じでは、1本だけ樹姿より極端に飛び出た枝があるくらいで、たいしたことなさそうだったが、これが結構面倒な樹だった。大騒ぎになってしまった。


  


まずは伸びすぎた1本の枝を樹冠付近でカットする。この位置が決まらん。またどうのこうの理屈を言っている。だからそんなこと全部知ってるっちゅーのに。あなたが好きなように決めていいからどの理論にするか選んでちょうだい。…で、結局選べなくって俺が決めるのか。ああ、なんて日だ。

山本先生の手助けを得て、切った跡には伝家の宝刀・カールコートを塗る。ついに見たぞカールコート!臭いはかなりシンナー臭がした。樹医治療法を確立した故山野忠彦先生は、1000本治療したら作り方を公表すると言っていたのだが、結局、1000本治療しても公表しなかった。それは、世の中が、ただ薬だけを塗ってあとは放っておけば良い…という風潮から脱していなかったからだ。木のことを、自分の身に置き換えて考える世の中になるまでは、とても教えられん…と思ったらしい。

正しい選択だったと思う。


  


主幹は、初めわからなかったのだが、かなり痛んでいたようだ。上部はほとんど枯死していた。まずは、胸より少し低いところにある枝を2本切ってみる。

しかし、この状態では閉塞処理ができない。斜めに切って傷をつないで見ると…ゲッ!なんだこの色は?


  


そこで山本先生登場。治療の際の切り方のポイントをご指導いただく。要するに、雨が閉塞したところから入っていかないよう、下に流れていくようにすること。そして生きている部分までカットしてしまわないように、慎重に慎重に行うこと。

切り口の近くにある小さな芽。これが、とても大事なのだ。すぐ上を切ったことで休眠から目覚め、通常より極端に早いスピードで成長することになる。順調に行けば、この芽が上の傷口を覆うように成長してくれるのだ。

さて、木部中央は腐ってしまっているようだ。このまま閉塞するわけにはいかない。まずは腐朽部を除去することにした。


  


上を削っている間に下の樹胴を掃除し始めると…ぐわっ!なんだこりゃ?…根?根が出てきた。しかも上向きに生えている根が。

これが桜の不定根といわれるもの。驚くようなところから根を出して自らをフレッシュな生命体に更新させようとする。だから、神代桜などと呼ばれているものの中には、かつての樹幹は腐ってなくなり、新しい樹幹と根になって存在しているものも多いという。しかし、ここでは自分の腐った身体に発根するとは。なんという…

逆向きの根がびっしり詰まった木部中心をほじくっていると、どうも非現実的で、夢でも見ているかのようである。

痛んでいそうなところをほじくって見ると、7割も達していないところで、もうどうしようもない状態になってきた。


  


結局、樹幹はもっと低い位置に切り直した。高い位置でも低い位置でも中心部が腐れていることは同じ。腐朽部分は同様に削り取る。いいノミはもう残っていなくて、削るのやりにくかったなあ。


  


本当はどこまでどんな風に腐れているのか、もっと地面まで削って調べたかったけどタイムリミット。ここで、ベンレートとデスを水で薄めて薬剤をつくる。通常より高い濃度で使用するので、あくまでも塗布する。スプレーなどはしてはいけない。また吸引にも厳重注意。