木の声がきこえる ― 樹医の診療日記


  【木の声がきこえる―樹医の診療日記



  山野忠彦(著),根岸佐千子(写真)
  価格:¥1,470(税込)
  出版社:講談社(1989/06)
  発売日:1989/06
  商品の寸法:18.6x13x2cm



私は現在、樹木・環境ネットワーク協会というNPO法人が主催する「樹医養成セミナー」に通っている。元々、樹医という名称は日本には無かった。昭和23年に山野忠彦さんが名乗りだしたのが初め。後継者の山本光二先生に現在教えを受けているが、私は良く知らないままにセミナーを受けだしてしまったので、恥をかく事がたびたびある。まあ、別に恥くらい今更どうってこと無いのだが、最後のセミナーがある前に読んでおかなくては失礼ではと思っていた。



“樹医の診療日記”というサブタイトルがあったので、さまざま樹木の診療話ばかりと思って読んでみると、山野氏の出生、家柄、育ち、幼少期から少年期、遊び歩いた青年期…と結構長い。この遊び呆けて家を破産させてしまった時の章を読んだ時は、私の部屋中にシラーっとした空気が流れたが、まあ、樹木と話をすることができた唯一の人物も私たちと同じ人間だった…っていうことだ。(万が一、私が自伝を書くようなことになれば、こんな暴露では済まないし!)気を取り直し、近親感を持って読み進めると、なんと味のある人物であったろうかと思った。損得抜きで一つの事に夢中になってしまったり、行政との軋轢の思い出をいつまでも引きずってしまったり、なんと、私そっくりではないか!?



山野忠彦先生が書いた本に対して、私が意見を言える立場でも理由も無いのだが、樹木の治療を、ボランティアで、無償でというのを強調しているが、それは現代には通用しないと思う。確かに当時は、周囲の理解も協力も得られない中で、樹木の大切さを周囲に知らしめるためにも、「お金を払えば直してあげる」とは言えなかっただろうと思う。しかしもう、【辛く悲しい自然保護】の時代は終わった。すでに現代は【明るく楽しい自然保護】の時代となって久しいのだ。例えば自然保護を名乗り出たために、財産を失い、勤め先での立場を追われ、周囲から孤立し、ボロボロになって死んでいくでは、次の者がついてくるわけも無い。自然保護を名乗り出て活動実践したために、社内での評価が高まり、地域社会の中心的存在になり、経費やスタッフを一任されるような社会でなくてはならない。そのためには、ボランティアでは、無償では決してやってはいけないと思う。そういう環境改善や自然保護に対して支払いが発生し、携わる者の生活保障がついて回るような経済の仕組みづくりに、私たちは加担しなくてはならないのである。



最後のほう、◇木の葉のテレパシー◇の章では、三上博さん(日本相対磁波研究所所長)という方が登場し、「木の葉のテレパシー―実用」「植物の超能力―リーフ・バイオ・センサーの実験と応用」という本が出てきて、また私の購入意欲をそそる。一瞬買いそうになったが、今は読むべき本が山積みとなっているので、次の機会にしよう。