軽井沢進出



この秋、軽井沢千ヶ滝別荘地でのインタープリテーション依頼を2本お受けすることになった。とある保養所は最近リニューアルしたらしく、洒落ていて気の利いた造りに思わずため息が出てしまう。この施設のお客様をお連れするのか、ヨッシャー、ネイチャー木村本気モード突入。

ロビーから眺める中庭は、広さといい樹木の配置といい、とても良い中庭だ。これを使わない手はあるまい。

出るとすぐに趣きある桜の老木があった。苔を取るのを手伝ってもらっても良いなあ。さて、他には何があるかな?


  


うまく針広混交林になっているようだ。モミも多いし…あったあった。滴る樹脂。これと病原菌に侵されながらも樹脂を出していないシラカバとの対比。生き方の話をしようと思う。

カイメンタケ…かな。ミヤマトンビマイタケではあるまい。今日は時間が無かった。近いうちに調べよう。カイメンタケなら“侵された木は風により折れやすい”とある。宿に直撃するかと心配だ。


  


サクラの老木が結構ある。オオヤマザクラか、ヤマザクラなのか…支配人さんに聞いておこう。いや別にどっちでもいいか。キツツキの穴が開いているサクラの木には、ひび割れたような跡と、そこから何かが出ているのが見える。おや、何かクマリンでも分泌して腐らないように防御しているのかな?…と思いきや、割れ目を塞いでいたのは蟻の排泄物だった。なーんだと思って裏側にまわったら、凄い萌芽をしている。これは、なんとか休眠芽を伸ばし、生き延びようとしているのではないだろうか?

とても立派なサルノコシカケに侵されているコナラの樹。うーん、この辺は霧が多いせいもあって、どうも大木に育つ前に何らかのキノコに侵される仕組みになっているようだ。しかし綺麗に林床を掃除してしまっているので、高木が倒れた跡、森のギャップが発生した後に、その穴を育って塞ぐ若木の準備がなされていない。ここが天然林と人手の入ったお庭の違い。そんな話をしてもいいなあ。


  


ベニタケ系のキノコがわんさか出ている。結構きれいに菌輪が出ているように見えるのだが、当日の参加者に見せることができなくって残念だ。

紫色の、小さくて派手なキノコはウラムラサキ(キシメジ科キツネタケ属)ではないかな。へえ、味区分Aなんだってさ。これも綺麗に菌輪を描いていた。

キノコがとても多く、綺麗に出ている庭だ。林床が苔だから見つけやすい、そして霧の多い軽井沢、他の理由は……
おおっこれは!!神様??

そーか、ここにはキノコの神様がいるのか。どーりで山ほどのキノコがすくすくと育っているわけだ。いっそのことこの樹には、しめ縄でもしておいたらどうかな。


  


中ほどにある窪地には、水辺の植物が見られる。オタカラコウかメタカラコウか…。その隣のアカマツの根が、浅く広がっているのは、地中深くは水気が多く、根腐れしてしまうから避けているのではないか?

この樹皮は、まさにオニヒョウタンボクの樹だろう。そうか、浅間の北側と南側と言っても北軽井沢と千ヶ滝では、植物相は同じと考えて問題なさそうだ。

このお庭には、先ほどの神様のほかにもう一人、神様がいるような気がしてならない。この、松こぶ病に侵されたアカマツも気になる樹だ。この樹から何か力を、発信しているような気がする…。うーん、松こぶ病の病原菌を伝播していることには違いないのだが…!?


  


庭の出口付近にあるコナラも、なかなかいい割れ目と腐れをしている。次回じっくり見る必要のある樹だ。

このお庭は、最低でも一人以上の神様がいて見守っている特別なお庭だった。きっと、出るには作法があるに違いない…ああ、これか。この門をくぐらねばならぬのだな。よっこいしょ。

その後、とりあえず今日は車でぶらぶらとまわってみる。新からまつの森付近では別荘地管理事務所に広いテラスがあり、事務所の人が「当日このテラス使ってもいいよ」と言ってくれた。ここで浅間山が見えりゃあ、山を眺めながら篠笛でもお聞かせすることにしよう。