今年最後のスノーシュー



このところずいぶん雪解けが進んだ。もう万座カラマツ天然母樹林では、林床の笹が見え始めている。いよいよ、スノーシューも今年はお終いだろう。

今年最後のスノーシューは、我が日進舘の若女将・大野ふみちゃんとその仲間たちをご案内することになった。さんざん連れて行く約束をしていたのに、どういうわけか今日まで連れてこれなかった。今年中に連れてくることができてよかった。

若女将は犬の散歩はするが、あまり山登りなど趣味ではないので少し心配だったが、このフィールドと私のやろうとしているエコツアーを気に入ってくれた。友達が喜んでくれたのが何よりだったようだ。写真ではとてもはしゃいでいるように見えるがそういう人なのだ。おてんばだが、私のようなジャジャ馬が勤める宿の若女将だ。そのくらいじゃないと勤まらないだろう。


  


この森は、まずは「仁王カラマツ」で母樹の選択の話と、生命と個性の関係をお話し、次にこの(左の写真)「大いなる母の木」でこの母樹林の種が世界に行った話をする。この森は、おじいさんのおじいさん、そのまたおじいさんの若い頃よりもっと前まで遡るストーリーに溢れているのだ。アメリカで日本語を教えているたまおさんはそのストーリーに感動していた。

草薙カラマツの前では、こんな話をする。

「このカラマツは、単木としては、もしかしたら日本で一番太いカラマツかも知れません。もし、そうだとしたら、近い将来、周りにはロープが張られ、幹に触れてやることができなくなってしまうことでしょう。なぜなら参加者の中には記念に皮をはいで持っていってしまったり、根周りを踏みすぎてしまうと土が固くなり、根が呼吸できなくなって樹勢が衰えてしまうからです。ですから、あなたが次にここに来たときにはきっと、この樹に触れてやることができなくなっていることでしょう。今日が触れることができる最後ですから、しっかり触れてあいさつしてあげてください。500年前からここであなたが来るのを待っていたかもしれませんよ?さあ、どんなメッセージが伝わってきましたか…」


  


そして「しなや樹」の前へ。

誰もが思わず気に入ってしまうスペース。ここで得意のカバノアナタケ茶とチョコレートでおもてなしをする。私は春の雪は埃がのっているので食べたりしないのだが、彼女たちは全く気にせず、お茶が熱いので当たり前のように雪を入れて冷まして飲んでいた。この美しい空間の中では、ここにあるものすべてが清らかであるように思ってしまうのだろう。…わからない、この場所は本当に浄化されているのかもしれない。理屈ではない、生命が本能で行ったことはだいたいあっていることが多いからだ。

たまおさんが、「雪に映った枝の影がとても綺麗」と言った。ああ、ほんとそうだ。雪上の影をじっくり見たのは数年ぶりだ。初めての人は、率直に感じたことを言ってくれて良い。そして彼女らは、あるがままに五感に身を浸すことのできる、素直な心を持っているようだ。