木を植えた男


木を植えた男


  • ジャン ジオノ(著), Jean Giono(原著), 山本 省(翻訳)
  • 単行本:121ページ
  • 出版社:彩流社(2006/07)
  • 商品の寸法:19x13x1.4cm
  • ¥1,575(税込)



著者の山本省氏は馬場多久男先生と同じ信州大学教授であり、内容が良いのでぜひ薦めてほしいと馬場先生からいただいた。週末の冬芽観察会で馬場先生と再会する前に読んでおかなくては…



「木を植えた男」の話は、どこかで聞いたことがあった。誰に誉められるわけでもなく見返りもないのに毎日せっせと木を植え続ける一人の老人。やがて砂漠は広大な森林となって再生し、枯れた小川や井戸にも水が戻ってくる。荒れ果てた廃墟寸前の町は活気を取り戻し、すさみ切っていた村人の心は健康とゆとりで輝きわたった…というのがこの「木を植えた男」のお話である。私はこの話は実話だと思っていた。



ジオノは「物語の狙いは読者に木を好きになってもらうこと、あるいはより正確に言うと木を植えることを好きになってもらうことにありました。」と残したという。山本氏は、人間の環境にとって樹木は大切だ。だから樹木の無益な伐採はいけない、樹木は植えなければならないというような、高所からの議論ではなく、読者にごく単純に樹木を眺めることが好き、樹木を植えることが好き、森林の中を歩くのが好きというふうになってほしいので、ジオノはこの物語を書いた…としている。



また、山本氏によると、ジオノは生まれてから死ぬまで故郷のマノクスに居座り、自然環境や地域性を詳細に観察し、書き続けることで自分にしか描けないような空想の世界・架空の物語を創り出すことができたのだろうとしている。



実際の現実社会では、一切のエゴイズムと無縁の無利無欲の下、いかなる代償も求めずに、地上にナチュラリストとして明白な足跡を残すことは不可能に近いものがある。だからこそ、ジオノはフィクションの奥底にこそ真実が潜んでいると考えていた。そして山本氏は、「木を植えた男」を通してジオノ文学創造の秘密を垣間見、文学的な体験を読者の方々と共有したいと思い、本書を刊行したそうだ。



また、汎神論者という言葉、深く考えたことはなかったが、本書で気になり調べてみると、どうも私の思想のことを言うようだ。知らなかった。