もっと知りたい!浅間火山



楽しみにしていた浅間火山現地見学会「もっと知りたい!浅間火山」。今日は嬬恋村内のさまざまな浅間火山活動跡を見学して周るのだ。

郷土資料館から鬼押しハイウェーちょいと横切って下松原へ。ここが、鎌原土石なだれの止まった場所だというのだ。確かにこの波打った土手形状はは人為的とは思えない。

荒牧先生は若い頃、この付近を歩き倒して浅間火山地質図http://www.gsj.go.jp/dEG/sVOLC/GeoM_Volc/Asama.htmlを作ったそうだが、この辺は違う判断を下していたようだ。先生は「じゃもんだから良くわからない」とかオヤジギャクを飛ばしてごまかしていた!?こんなにユーモアのある先生だとは知らなかった。


  


別荘地サンランド入口の巨大岩石へ。ああ、そういえばこの岩大きかったよなあ。こんな馬鹿でかい岩が鎌原土石流れに含まれていたのだから、命は持たんわなあ…。このような巨大な岩石が山頂付近から転がりまくってきた現象は、世界でも珍しいそうだ。世界中の火山学の第一人者を集めて話を聞いても、こんなものは見たことが無いという。これは専門的には、乾燥紛体流というそうだ。流れの中に空気と石が混ざって一体となって流れてきたのだという。しかし、私はさほど不思議には思わなかった。空気だって秒速何十メートルで進んできたならば、それが雪だろうが火砕流だろうが岩石だろうが綺麗に雪崩れるに決まっている。


  


また、ちょっと変わったおもしろむずかし話を。

この鎌原石は、どの石を測っても、磁力線は同じ方向を向いているのだという。これが、鎌原石がなだれてきてそれぞれ今の場所に停止した時に、鎌原石のキュリー温度である約500℃より高温だったことを示しているというのだ。キュリー温度とは、フランスの物理学者ピエール・キュリー(有名なキュリー夫人の夫)の名前にちなんだもので、岩石がまったく磁力をなくしてしまう温度のこと。つまりは、冷えた岩石が転がってきたのであれば、元々磁力線を持っているので、止まった方向により磁力線はバラバラの方向になる。それが一緒だということは、ピタッと止まった時は、みんな磁力を持たないキュリー温度以上で、その後ゆっくり冷えて磁力線が一緒にできたということになる。

湾曲した層を惜しげもなく使用した見事な灯篭。この奇岩が庭園には堪えられなく、そこいら中にあった鎌原石はあっという間になくなってしまったのだと。

この巨大岩塊の上に上がれるように、階段がついている。おお、またノスタルジーな。


  


ここは鎌原のやや上方にある田んぼ脇の巨大岩塊。なんと象徴的な岩だろうか。

荒牧先生の手の向かって左側に、レンズ状の層が見えるだろうか?山頂から吹き上げられた溶岩が落下し岩の上に叩きつけられ、ベタッと広がる…そんなことが1783年8月4日頃に浅間山山頂で作られ続けていたのではないかと考えられているのだ。


  


『嬬恋百景』にノミネートできそうな美しい形状の岩塊を後にし、赤川右岸の地層へ。

上の20〜30cm位に褐色森林土、その下にあるのが鎌原土石なだれの跡、その下にまた50〜60cmの褐色森林土、そして仏岩期(27,000〜10,000年前)の嬬恋軽石層…あれ?天仁元年の軽石ではないのかな?すみません混乱しています。

鎌原土石なだれの跡は、黒かったり茶色かったり、さまざま。流れの中に巻き込んできたいろんなものを含んでいる。そしてこの土石なだれは、低いところも、少し高くなっていたところも、まんべんなく、この深い赤川の谷をも越えて、時には坂上がりもしながら、この北麓をなめていったようだ。


  


別荘地サンランド事務所前の巨大岩塊。この岩は、元々はなんと左右が繋がっていたという。最も大きな鎌原石の一つだったというが、砕かれて売られてしまったようだ。ま、所有者側からしたら仕方の無いことなのだろう。赤くて軽い、隆吾さんが寄せ植えに使いそうな石だったから、使い勝手もきっと良いのだろう。


  


かつて鎌原宿のあった付近、「道しるべ」に使われていたのはなんと!浅間大明神別当延命寺の欠けていた石碑破片だった!?これにはビックリした。尖った方を上にし、別当という字は裏側に、逆さまになっていた。

松島榮治シリーズ『嬬恋村の自然と文化』(四十七)延命寺の碑
http://interpreter.jp/matsushima_eiji/001-052/047.html

逆さまに撮ってみたけど、「別」っていう字、見えますか?


  


ついで追分火砕流の話。10,000年前頃から活動を始めた前掛山の噴火史の中で、最も大きかったのが天仁元年(1108年)の噴火で、この堆積物はスコリア(玄武岩を含む黒っぽい軽石)を多く含む。遠くから見たら「深い褐色森林土だなあ」なんて思ってしまうから気をつけて!

嬬恋高原ブルワリーから浅間高原ビレッジに向かう途中に、この追分火砕流を掘削しているところがある。10mは掘ったかというのに、まだまだこの層は厚いのだ。この砂は粒子がゴツゴツしていて、セメントによく馴染む、とても良い砂だそうだ。


  


資料館に帰ってから、ディスカッションの時間を作ってくださった。しかしこの地図が気になる。
浅間火山地質図http://www.gsj.go.jp/dEG/sVOLC/GeoM_Volc/Asama.html

いくつかの質問が出た後、地熱発電の可能性について聞いてみた。すると、まず高熱の地下掘削が容易ではなく金がかかりすぎるし、まだ地熱発電は効率が悪く、他の発電と同規模の発電効率を得るに至っていないという。最低でも50年はかかるだろうと。しかも、火山といえば温泉地であり、日本中どこに行っても温泉地との軋轢が生まれてしまう。日本は火山の熱エネルギーを温泉リゾートとして有効に活用しその恩恵に与っている。それで別に良いのではないかとも言う考え方もある。とはいえ、地球に優しいはずであった風力発電バードストライクなどの問題が発生している。最もクリーンなエネルギーになるはずである地熱発電の普及開発が望まれるべきである…と。

15年以上前に、石津で行った地熱発電ボーリングについても、草津に「温泉が枯れたらどうするのか、枯れない保障はあるのか?」との問い詰めに、「私が保障します」とは荒牧先生でも言えなかったとのこと。地球の中のことは、まだまだ未知の世界なのだ。