都市鳥からフォークロアへ ― フィールドエッセイ・自然観察の視点


都市鳥からフォークロアへ―フィールドエッセイ・自然観察の視点

  • 著者 唐沢孝一
  • 発行 百水社(2006/02)
  • 単行本179P
  • サイズ19x13cm
  • ¥1,365



加部先生から贈られてきた一冊の本。なんと嬬恋村IP会の唐沢理事の甥、唐沢孝一さんの本であった。



本書は39年間に渡って高校の生物教師を勤めつつ、都市鳥や動植物の調査・研究・執筆活動、NHKラジオ番組の出演など、2足3足の草鞋をはいていた著者が、過去に書きためたエッセイの中から取捨選択し一冊にまとめた本。「…もとより自然の見方や野外観察等に決まった方法があるわけではないが。観察方法も十人十色である。本書は、その意味で唐沢流の自然観察の視点について記したもの…」とある。



後半に出てきた入院中の叔父とは信さんのことかな?…と思いつつ読んでいた。著者の自然観や人柄を感じつつ読み進めた。豊富で専門的な知識を所持しつつ、それをあまり掘り下げすぎず、一般理解できる範囲で書き進めているところは自然観察指導を長年行ってきた著者のベテランさを感じさせる。



最も印象的だったのは【野に花が咲き、鳥が歌うは、なぜ】の以下。



『この地球に何十億の人がいようと、われらは真に理解しあい、愛しあえる少数の人々と生きているに過ぎない…野に生きる生物は、この生命の連鎖をどのように感じているのだろうか。生や死を人のように知覚し、理解し、観念することはないかもしれない。しかし、山野で人知れず咲くスミレやイチリンソウ、キンラン、ギンランなどの花は、なぜあれほど可憐に美しく咲くのであろうか。花粉を運ぶ昆虫に目立つように華麗に咲き、香りを発散し、お駄賃を蜜に用意しているのだと教科書では説明している。だが、果たしてそれだけだろうか…この世の生きとし生ける生物は、「生命の連鎖」の喜びと深い悲しみをかみしめてきた。花々は美しく装うことによって、鳥は華麗に歌うことによって、喜びをかみしめ、悲しみを和らげてきたのではあるまいか…』