交流登山「黒斑山塊」

今日は待ちに待った黒斑山登山の日。恥ずかしながらネイチャー木村は黒斑山に登ったことが無かったのだー!別に騙してた訳ではありません。皆さんが勝手に嬬恋村周辺の山を登りつくしていると思っているだけです。はい。

準備体操の後、登山届けを出し、進む。車坂峠登山口には、環境省浅間山麓国際自然学校が設置したサーモカウンターがあった。こういう時代なんだなあ。

カラマツの紅葉と霧の中、14名で進んでいく。わくわくしていた。


  


往路は表コースを行く。車坂峠から登り始めてしばらくは、足元の石や土が赤いのが気になる。山頂付近はさまざまな効果で土壌が酸性になりやすいが、そのせいで鉄分が出てきて酸化しているのだろうか?この理由は、聞かれるだろうなあ。

クサモミジできれいなもの、ハクサンオミナエシ


交流登山は8月26日に私が実施した「御飯岳を歩く」イベント
http://d.hatena.ne.jp/akagi39/20060824/1293291477


から、定期的に登山イベントを実施することに決まり、会員の登山家・YOさんが待ってました!とやる気になって実現したもの。今日もさまざまなレクチャーを会員に施す。そのうちの一つ、用意する水の量のお話。

★登山の際に携帯する水の量は、体重×登山時間×5(定数)となる。実際飲む量よりも少ないが、半分近く余るような準備があってこそ非常の際に役に立つ。だから非常食は腹が減ったからと言って食べてしまわないこと。じゃないと非常の際に役に立たなくなる。…水は、寒ければ上記の量の−30%、暑い時は+30%用意してほしい…とのこと。


  


左は不明きのこ。見覚えがあるのですぐにわかると思ったが時間がかかりそうなのでパス。地上性っぽく見える。

真ん中はヌメリササタケ、ツバアブラシメジ、アブラシメジのいずれか。(全てフウセンタケ科フウセンタケ属)自信が無いなら載せなければいいのだが、きれいに撮れているのでせっかくだから載せた。

少し開けたところで、黒斑山の樹林帯が見えた。高さはあまり無いように見えるがびっしりと樹が立ち並んでいる。


  


登山道沿いには、水はけを良くするためか手掘りの側溝のようなものが随所に見られた。

このクサモミジはハクサンイチゲキンポウゲ科イチリンソウ属)だという。花をまだ見たことが無い。

ハクサンイチゲのある稜線を登ると、まずはトーミの頭に。ここまででも距離は結構あった。やはり大きな山だ。


  


このトーミの頭から見た絶壁と湯ノ平には驚いた!破風岳の絶壁で足がすくんでしまったが、ここは幅もあるのでそんなもんじゃない。はー霧で助かった。全部見えてたら卒倒してしまっていたのではないか?

しかし冷静に考えると、破風岳山頂から湯川の谷底までは高低差300m位ある。高低差だけを見ると黒斑山とどっちがあるかわからないぞ?まあ、こちらはこの稜線が延々と続くのだから、ヤバイ気がするのはこちらの方が遥かに上だ。


  


ここから、草すべりといわれる急傾斜地を通って湯の平へ。ミヤマハンノキと草本草原がセットで見られるのは雪崩が多いせいなのだろう。こういうところは笹が覆っていないので夏の花も凄いはずだ。大島さんの奥様に聞いたら、やはりすごい花の数だと仰った。

しかし見事なカルデラだ。広大な景色にしばし皆で見とれていた。浅間の稜線が左に少しだけ見えていた。


  


湯の平に下りたところにある巨石には、何か計器があったようだ。恐らく地震観測計なのだろう。この後のコースでは東京大学のものがいくつか見られた。

この巨石にダイモンジソウがあったので驚いてしまった。ダイモンジソウは今まで渓流沿いにしか見たことが無かったが、霧の多いこの付近では生育が可能なのだろう。また発見があった。


  


湯の平まで下りて今来た山を見上げる。やはりあの草本草原と岸壁のコントラストが美しい。

牙山(ぎっぱさん)は、この逆の小諸側から見るとギザギザに尖って見えるそうだ。

湯の平口まで来て、ここで小休止。小諸市は上等な看板を設置している。


  


ここから4分で火山館とある。聞いたことがあるので行ってみよう。

なかなか立派な建物だ。トイレも貸していただけるようでありがたいありがたい。

館長の神田恵介様と少しお話した。「これから1年に1回はお訪ねします。」と言ったら「そういわずに毎月お越しください」と仰った。


  


湯の平から賽の河原までの15分間は、浅間山麓標高2,000m〜2,100mとはとても思えない豊かな森林が出現する。樹高20m位のものも普通にある。嬬恋側の植生からすると考えられない森林がある。

中:キヌメリガサ(ヌメリガサ科ヌメリガサ属)は食用。カラマツ林内に発生する。しかしこのキヌメリガサは、シラビソの根元に出ていた。カラマツはやや離れたところにあった。色合いが残るようにさっと湯通しして、おろし和えや三杯酢、しらす干しのお吸い物に入れると良いらしい。

左:カベンタケ(シロソウメンタケ科ナギナタタケ属)。食毒不明。足元にたくさんあって黄色が目立っていた。


  


賽の河原からは100分で前掛山に行ける。今年はもう無理だが、来年もどうにかレベル1のままであってほしい。

森林帯を抜けた登山道にごろんとあった石は、2004年噴火のものだ、いやいやそれは無いだろう、と意見が分かれた。少し岩を持ち上げてみて、石の下に植物体の根等が見られたが、何とも判断しがたい。

この荒涼とした風景に、しばし見とれる。植生遷移が間近に見られるいい場所だ。


  


登山道沿いに、凄いクレーターがあってビックリ!直径2m、深さ1m位だろうか。ついにはっきりと2004年噴火のクレーターとはっきりわかるものを確認できた。

突き刺さった岩が凄い。パン皮状火山弾のようであり、着弾した衝撃で割れたようでもある。

●火山弾いろいろ
http://volcano.instr.yamaguchi-u.ac.jp/bomb.html

ここで一瞬、浅間山(前掛山)上部が見えた。


  


仙人岳−鋸岳の絶壁の下を進む。ここから鋸岳に登る道をJバンドという。嬬恋側から見て、この斜面がJの形をしているからだ。

この景観を見てしまったので、ここから立ち去るのがとても惜しい。何度も湯の平方面を振り返りながらJバンドを登った。


  


Jバンドの急登路はキツイので、ゆっくり登ると良い。しかし振り返れば黒斑山カルデラ(湯の平)が荘厳なので、飽きずに休憩できる。

浅間の山肌を雲がなめていく。よく見ると、斜面上に結構な数のクレーター跡が見られる。

三つ石は、浅間山からでも良く見えるそうだ。上から下りてくる際、道に迷った時に目印にするらしい。


  


Jバンドを登る左の岩壁には、地層のように見える場所がある。この辺の形成過程を火山学者に伺いたいものだ。

そして、下から見えていた絶壁に辿りつく。こんなところをどうやって登るのかと思ったが、うまく登山道ができていた。足元には車坂峠から表コース入りだし付近で見た赤い土と石がまた見られた。


  


あまり希少種は載せたくないが、この日記は植物分布も兼ねているので失礼。イワヒゲはどうやって根を張っているのだろう?というところにある。このくらいの倍率ではツガザクラの種のつき方に似ている。

コメバツガザクラの果実は、最終的にこうなる。うまくアップで撮れた。

仙人岳山頂に向かうまでに見られたこのコケは、チャツボミゴケのように見える。強い酸性の河川沿いによく見られるが、これがチャツボミゴケだとしたら、この場所は山頂効果により強い酸性であるということになる。これは面白い。


  


高所恐怖症の私としては、このJバンドから仙人岳までの道が一番怖かった!風もあるし…。大地の護りを全く感じん。

ようやく仙人岳山頂。いろいろと観察しながら歩いたので、着いたのは13:00をまわっていた。ここでお昼ごはん。


  


そして昼食後、小林勝三さんのテーピング実地講習会を行う。登山中にテーピング実地講習会とはなかなかいい案だ。大島さんの案だが、こういう形でスキルアップしていくのが一番良い。

山頂はもう寒いくらいだったが、土屋会長が惜しげもなく美脚を披露していた。風邪をひかなければ良いが…。

三角巾で腕を吊る時は、手のひらを身体につけるのが正解。横にすると骨をねじってしまうとの事。


  


仙人岳から蛇骨岳までの間は、そう変化のない稜線を歩いていく。景色が見えれば最高のルートなのだろうが霧が濃くなってしまい、遠くの景色が見れなかった。しかし眼下に美しい湿原が見えた。小諸市火山館の水はあの辺りから引いているのだろう。

蛇骨岳から黒斑山までの間は、しっかりとした森林になっていて驚いた。20m以上の高木林である。この辺りは風の影響が少ないのだろう。オオシラビソが主体のきれいな森林だった。


  


そしてついに群馬県第三位の山、黒斑山(2,404m)山頂へ。今日のコースは最高のコースだ。ここまで来る道のりは長いが、その分得られる感動はひとしお。たまらないコースだ。花の時期にまた来よう。

山頂では、浅間山火山活動の監視カメラがあった。小諸市の設置。

帰りは中コースを通る。こちらの方が少し近いらしいのだが、石が露出していたり登山道が水流でえぐられて少し怖い気がする。でも、どうせなら来た道と違うこちらの道を通ってほしい。こちらの方が森が豊かなので、最後は森林浴のフィトンチッド効果でリフレッシュすることができるでしょう。