分け入っても青い山







驚くほど晴れた9月下旬のある日。今日だけは、いつもは立ち入れない場所に入る。
半年以上前の行方不明者捜索の日だった。

遺体探しに駆り出されるなど冗談じゃない…はずだったのだが、あまりにも美しい日だったので胸いっぱいになって帰ってきた。


この景観の中に今日、身を置かせていただけたことに感謝する。どうして地球とはこんなにも美しいのだろう。なんというかけがえのない星に私たちは生きているのか。

こんな日にもう二度とここへは来れないだろう。だから何度もうしろを振り返った。3歩進んで振り返っても、さっきとまた違って見えた。


分け入っても分け入っても青い山 (種田山頭火


地球を取り巻くブルーヘイズが見えた。私たちにもあの「青いもや」は取り巻いているのだ。

この風景は、大切な人と見たかった。何に駆り出されているかも忘れてしまった。