トマトはなぜ赤い ― 生態学入門


トマトはなぜ赤い―生態学入門


2006年ビオトープ管理士試験の教読本。著者は桜美林大学名誉教授、自然保護協会参与・生態系研究会代表を務める。専門は生態学・環境教育。



生態学ばやりの昨今である。著者は「エコロジーのすべて」という記事の載った週刊誌を手にして、それが「エコロジーファッション」のものであったという笑えない経験をしたという。およそ流行というものは必ずすたれ、次の流行に移っていく。エコロジーブームが単なる流行やファッションだけのものであってほしくない…とメッセージを送る。



分野の広い生態学のさまざまなことについて、実際の研究結果を元に思うがままに書き進めている。生産と消費、牛肉のステーキとマグロの刺身、なわばり、外来種、地球には何人住めるか、進歩しないという進歩…など、表題の付け方は気に入った。



日本人の出生率低下は人口増加抑制機構が働いているのでは…自然の持つ調整力が人類に作用しはじめた…雑草に対しての思い、人が使わない空間にひっそりと生えた植物を、人間はなぜ引き抜いてしまうのか…自然観察会で「名前より自然のしくみを学べ」という目に見えないものを指導せよなど無理である…昆虫採集、失われたあの胸のときめき、薄っぺらい教育方針…私の感性と被るところがずいぶんあった。



マツが枯れてなぜ悪い、不利なことが有利になる、完璧であることは逆にその種を滅ぼす…など、すぐに使いたい言葉もたくさん教えてくれた。構成と柔らかい文面からか少し読みづらいのが気になるが、生態学入門としてはいい本だと思う。