御飯岳実踏会



先日、観光商工課の方々が御飯岳登山道の草刈りをしたという。前から登ってみたかった登山道、インタープリター会有志で実踏会を行うことにした。ちなみに実踏会とは滝澤支配人から教えてもらった言葉だが、使い方は合っているのか?

御飯岳は標高2,160m、ぐんま百名山に認定された山。私も一票投じている。楽しみにしていた。

スタート時は霧の中だったが、歩くうちにどんどん視界が良くなり助かった。植生の逆転現象あり、草原あり、アンギュレーションあり、森林の世代交代を感じさせる深い天然林ありの、森林を理解するには最高のコースだった。例によっていろいろと紹介していく。


  


手前の毛無山をまずは登っていく。少し登ると、なにやら怪しい看板が準備されている。

「這い松母樹防鳥林−白根火山研究会」
■ハイマツの実をとり、苗を育て山の崩壊地を緑化します。ハイマツの実はホシガラスの大好物で、みんな食べられてしまいます。9月まで網をかぶせて実を保護しています。人間とホシガラスの知恵くらべです。

白根火山研究会ってあの下谷昌幸先生の?へえ、今度の11月の講座でいろいろ聞いてみよう。でも今日の様子だと用具はそこにあったが網はかけていなかった。そして、ハイマツには実は全くついていなかった。さらに、白根山のガレ地で見られるハイマツ貯食食べ忘れによる発芽も見当たらなかった。

少し歩くと、足元はハイマツの実の食べかすの山だった。本当に山ほどあった。今年のものにしては、色があせているように思う。昨年以前のものではないか。リスのものかホシガラスのものか私には見分けがつかない。


  


足元はミヤマニンジン(セリ科シラネニンジン属)がたくさん咲いていた。シラネニンジンというものと別種らしいが私には判別がつかない。また、つける必要もあんまりないかも知れない。

まずは毛無山(1,930m)山頂に立つ。この山頂のほかに、所々にケルンがあった。結構登っているようだ。

山頂ケルンにいたきれいな蜘蛛は、どこかで見たことがある。帰ってから調べるとなんと、日本の蜘蛛でただ一種の毒蜘蛛、カバキコマチグモ(クモ目フクログモ科)だった。この子蜘蛛は孵化してしばらくすると脱皮し、ひとり立ちする前に母親の体を食べていくのだそうです。母蜘蛛は全くの無抵抗だとのこと。…野生って凄いですね。


  


毛無山から御飯岳に向けては、しばらく下りとなり愕然とくる。しかし、この尾根に広がる広大な草原は日本とは思えない美しさがある。少し気になったのはこの草原でトウヒが等間隔に植えられているように見えるが林班図では101年以上の天然林となっている。亜高山風衝地ゆえ大きくなれず、盆栽のようなトウヒであったが…。植えたものだろうか?

ウスユキソウは、ここいらでははじめて見た。

しばらく草原が続いた後、突然森林となる。植生の逆転現象が見られ、上手く説明できればとても良いインタープリテーションになるだろう。その森林の中、足元にヒカリゴケが良く見える場所があったのでパシャリ。


  


杉田さんが苔がとても好きなのだという。私も折角「校庭のコケ」(2,000円)を買ったところだ。気に入った苔だけちょっと調べてみよう。

この辺に多いこの苔は、きっとウマスギゴケ(セン類スギゴケ科)だろう。葉が細いのが特徴。

湿っているところに多いのは、オオミズゴケ(セン類ミズゴケ科)であろう。湿原などにも多い。


  


意外だったのは、途中何度も下りがあったことだ。万座側からはとてもなだらかで一定の傾斜に見えるが、急な上りもある。登山道として公表するためにはロープを設置したほうがいい箇所もあった。

しかし、上部の森林は綺麗だった。ここまで亜高山体針葉樹林の、森の世代交代の様子が間近に見られる登山コースはなかなかあるものではない。

山頂(2,160m)が尖った山ではないため、景色は樹木の間から遥かを覗くのみだった。ここの展望が良かったら絶対に人気コースになること間違いない。展望所などの構造物を立てることができたら一気に知名度が上がると思った。ま、しかしこのままでもこれはこれで良い。以下はそこそこ自然観察しながらのペースで。

毛無峠8:10 − 毛無山山頂8:30 − 草原地帯8:50 − 森林帯9:15 − 御飯岳山頂10:30 − 毛無峠13:20