熊池コース考察



4月1日の研修に向けて、もう少しコースを考察したい。ピストンコースではなく、周遊コースが面白い。往復とも旧ゲレンデではなくて、2001年地滑り跡から降りてみよう。天然母樹林の看板辺りから森に入る。

入ってすぐに、直径1m近いダケカンバがある。今日はどんな大木に会うことができるやら。

地滑り跡に到着。あの溜め池が、プリンスホテルが水源としている場所だろうか。


  


それにしても凄いえぐられ形だ。この付近の木はダケカンバでもこの通り。直径90cmくらいはザラにあるのだ。こんなにも成熟した林分が崩壊してしまうのだから、2001年9月水害の際の降水量がどんなに強烈だったか解かる。

今現在は、本白根沢よりもこの崩落した沢の方が水量が多いようだ。旧熊池付近には、新たな沼が生まれつつある。ずいぶん大きなものになりそうだ。

新たに水の通り道になった場所でのコメツガは、みんな枯死していた。土地が水気を帯びるとコメツガはどうも枯れてしまうようだ。


  


少し歩くとすぐ湖沼群になる。森に入ると、鮒池の手前で早速大木がお出迎え。まずまずのミズナラだな…と思いきや、枝先になんか付いてる…?これは、ハリギリだ!へえー、大きくなるとは聞いていたが、実際の大木は初めて見た。幹周は400cm。樹勢も大勢。まだまだでかくなるぞ。


  


鮒池の淵にはとんでもないダケカンバがあった。なんだこりゃ?幹周422cmだぞ!

夏にこの熊池湖沼探勝ハイキングコースは数回歩いているのだが、この付近はコースが荒れていて、足元を見るのが精一杯。しかも逆側からだとこんなに太くは見えないのだ。

そして凄く大きな樹洞がある。この受動も樹によじ登れば十分にのぞける高さだったが、野生動物の繁殖を妨げる可能性があるような気がして登りかけて止めてしまった。別れる際に「ごめんよ」と謝っておいた。


  


あった!三股のミズナラ。股になっている部分は地上4mくらいの位置。このような樹形となった経緯をどうにかして調べられないものか。

この辺には、そこそこのブナもある。これを見せた後、以前見つけたミズナラ2本、そしてウラジロモミ等を見せながら帰る…そんなコースにしよう。盛りだくさんの素晴らしいコースが完成した。

さて、ネイチャー木村はさらに奥へと進む。探し物があるのだ。足元にある足跡はツキノワグマアナグマのもののようだが、思い立ったが吉日。森の奥へと進む。


  


進んだはいいが、万座川の架け橋は橋までたどり着くのが命がけ。チャレンジしかけたがすぐに止めた。命をかける場所ではない。下に降りて素直に川を渡った。

渡ってすぐ?な樹があった。ミズナラのような樹皮なのだが、枝先に何か付いている。判定は今年の春に持越し。


  


このあと、すぐに道がわからなくなる。水道管が漏れた水が氷の芸術を造り出しているので、この辺が水源道なのだが…。今日はもう帰れってことか。まあいいだろう。

ウラジロモミの巨木のサイズは幹周409cm。しかし計り方がよくないので、先日の408cmが今のところ最大だと思う。


  


やがて、今日一の樹が出てきた。幹周499cmの堂々たるミズナラ。この付近には同サイズのものがいくつか見られる。しかし、この付近にもっと凄いミズナラ、幹周600cm位のものが確かにあったはずだ。それが見つけられない。

それでも、この樹だって樹齢300年ではきかないだろう。500年か、それ以上か…。


  


この付近のミズナラの熊棚には、まだ葉が確認できるものがあった。ということは昨年作った熊棚ということになる。万座温泉付近ではドングリは全く結実しなかったが、明神沢と万座川の間の森ではドングリが実ったのだろうか?

まとまったブナ−ミズナラ林、しかも樹洞や根上がりの大木多しとくれば熊がいない理由は無い。3月は赤ちゃん熊の鳴き声が巣穴から聞こえるはず…なので少し期待していた。が、今日の場所では鳴き声は聞こえなかった。付近では冬ごもりをしていないのか、それとも昨秋の森の実りは赤ちゃんを産むほどのものでは無かったのか。しかし、無理に行き会う事はない。人間を受け入れている森にも見えないし、もう帰ろう。


  


旧熊池付近まで戻った所で、キツツキのドラミングの音が聞こえるが姿が見えない。音のするほうに寄ってみると、枯れたウラジロモミの裏側を突いていた。アカゲラだった。近づくや否やただちに飛んでいってしまった。キョッ、キョッと鳴く声は警戒しているのだろうか。食事をしていたのか仲間とのコミニュケーションだったのかは解からない。

上空ではピーヨ、ピーヨとノスリが盛んに旋回している。

水害から5年経とうとしている。付近の当時の立生木の多くは枯死木となって立ち枯れている。これに穿孔中などが繁殖しているのならばこれから当分の間、アカゲラは豊富な食料にありつけることだろう。そして地滑り跡地には草本や陽性の灌木や稚樹が繁茂し、ノウサギの繁殖が期待される。そうすると、食物連鎖としてその上位にいるノスリなどの猛禽類も餌にありつけることになる。もうこの場所は災害跡地ではなく、生物多様性溢れた、生態系豊かな森へと遷移が始まっているのだ。


  


今日の森では3月18日前後にあった大雪と風による故損木がずいぶんあった。12月〜2月はいくら激しい風雪でも大丈夫だと聞く。チョウセンゴヨウはお気に入りの樹なのだが、大きな怪我をして大丈夫だろうか。

旧熊池にいたマガモの群れが、僕の姿を見て飛び出した。闇雲にシャッターを切ったが、よくぞ捉えてくれた。