おもしろ考古学講座「縄文人の数的意識」

嬬恋村郷土資料館館長、松島榮治先生によるこの講座は3回目になる。弊社の市村総支配人の親密な交際からによる。

今井東平遺跡出土(平成5年)の黒色研磨注口土器(3500年前)は完全な形で大小2個のセットで現れた国内の原始美術品として有名。フランスなど海外にレプリカが展示されている。そしてこれは水などではなく大切な果実酒などを入れていたのではないかと先生は語る。だからこそフランスで非常に興味の的になっているとの事。特に優れているのは1:1,4(√2)の造形美であるという事のようだ。

その他、赤色塗彩鉢形土器(平成11年・今井東平遺跡出土)も口縁部が赤色に塗られた完全の形のもの。9角形の美しい土器は祭事や神事に使われたのではないかとの事。縄文の頃から3という数はめでたい数で、それをまた3で掛けたのがこの9角形の土器だという。口辺部に嬬恋村の山々が描かれているというのだ。インタープリターとしては今度じっくり見なくては…。

この他、敷石住居跡に残る六角形の考察など、「縄文人の数的意識」の講座としては満点といえる。さすがであった。

考古学者は出土した“もの”に、関連するデータを複合的に交錯させ、頭の中ではるか大昔の映像を描き、最終的に学者としての見識を示すのだろう。時として自分のイメージを正当化するために他人のイメージを徹底的に排除することもある。そうしないと自分の美しい太古の風景を完結させれないからだ。私の祖父、後藤寿一がかつてそうだったように。