エコツアーガイド養成講座2014 実施しました。



当協会の基幹事業、エコツアーガイド養成講座を今年度も嬬恋村で実施しました。


エコツアーガイド養成講座
http://ecotourism.or.jp/guidecourse.html





昨年度までは、所属団体CONEが文部科学省より小学校長期自然体験活動支援プロジェクトの指導者養成委託事業を受けていたために、その認定を取り講師料等の助成を受けて実施できたのですが、文部科学省のプロジェクトが終了し、今年からは100%自費事業になります。それでも3日間で22.5時間のエコツアーガイド講座受講料を10,000円の低価格で設定したところ、18名の方にお申込みいただき、ご受講くださいました。

講座の様子を紹介します。



■初日:1月24日(金)




講座1 参加者を理解する 9:30〜11:00(1.5時間)
講座2 自然体験活動プログラムの企画・運営 11:10〜12:40(1.5時間)
講師  岡野 勇二


八ヶ岳どんぐり自然工房」主宰、茅野エコツーリズム協会事務局長の岡野様には、得意の環境教育分野に通じる講義を担当していただきました。



    

    

    

    

   

  


全部見せることはないのですが…一応、このブログは事業の記録ブログでもあるので、失礼します。


ご自身のアイスブレイクネタをはじめ、様々なガイド現場や体験指導のテクニックも紹介してくださいました。参加者のアンケートからは、「ツアー中のネタが増えました」の他に、「参加者の心の解きほぐし方、特に子供との会話のきっかけ作り等、大変参考になった」などの声がありました。


岡野講師の物腰柔らかくやさしい話し方・接し方や、大らかで頼りがいのある雰囲気は環境教育者・体験指導者のあるべき姿です。


うーん、まるで「アルプスの少女ハイジ」に出てくる『アルムおんじ』のようです。




講座3 基礎登山講座 13:40〜15:40(2時間)
講座4 リスクマネジメント・ワークショップ 15:50〜16:50(1時間) 
講師  齊梧伸一郎


当協会理事の齋梧伸一郎さんは、八ヶ岳をマイフィールドにし、登山を中心とした自然学校を主宰しています。浅間・吾妻地域ではテント泊などの長期山行ガイドはまず発生しませんが、当地域よりも険しいフィールドと状況でお客様対応をしている齋梧さんを登山装備や安全対策の講師、或いは手本とすることで、当協会所属ガイドレベルのベースアップを図っています。



    

    

    

   


講義スタートは、いきなり死亡事故事例(子ども会裁判[ボランティア裁判])の判例から指導者の法的責任を考察しました。ガイドとしての登山装備、引率者・指導者としての計画と行程づくり、安全管理などを学習した後、演習問題を個人で解き、最後は複雑危険な事態に陥った野外体験活動を指導者としてどのように対処するかを、グループワークで検討しました。アンケートには、


「基本的な技術と知識の習得、予想外の局面での判断が学べた」「具体的に実践に結びつくものだった」「事故の対応はふだんイメージしづらい部分なので、たくさんの事例で(ワークショップを)やってみたいと思った」「予想もしない展開になるワクワク感があった」「事前のリスク管理を演習で行う方法を教えてもらった。すぐに活用したい」


などの声がありました。



  


講座5 自然体験活動の理念 17:00〜18:00(1時間)
講師  赤木道紘


この講座ではCONEトレーナー/主任講師の私が、CONEのこれまでの歩み、ビジョン、そして自然体験活動指導者認定制度=NEAL指導者の仕組みと自然体験活動指導者(リーダー)の役割についてを配布資料をもとに説明しました。


子どもは、以下の3つの要素を持った三角形の鳥居で育てるといいます。

  • 【学校】 … 学力、正解は一つ
  • 【家庭】 … 自己肯定力、かけがえのない存在
  • 【地域】 … 社会力(つながる力)、正解はたくさんある

通常、一般の当地訪問者・クライアントをエコツアー等でご案内したり体験指導をする場合は、【地域】のスペシャリストとして対応しますが、教育旅行/修学旅行の場合は【学校】の立場を理解しサポートした対応が求められています。



■2日目:1月25日(土)




講座6 青少年における体験活動 9:00〜10:30(1.5時間)
講座7 学校教育における体験活動 10:45〜12:15(1.5時間)
講師  山本茂



    

  


学力よりも品格を重んじ、養育・訓育・鍛育に励んできた、吾妻郡の偉大な教師・山本茂先生。教育現場で長年、自然体験活動を推進してきた実践者として、体験活動の教育的意義、発達段階に配慮した体験活動のあり方、指導者に求められる役割や資質…などをこれまでの経験を元にお話しいただきました。





講座8 嬬恋村の資源を活用した観光振興について 13:15〜15:15(2時間)
講師  久保 宗之



    

    

    

  



昨年までのCONEリーダー養成カリキュラムでは「自然と人、社会、文化との関わり」の科目がありましたが、今年度からのNEALリーダー養成カリキュラムでは省かれ、自然体験活動の指導技術・知識・方法など、まずは現場での対応力を学ぶ講座と変貌しました。よって、嬬恋村・浅間高原の郷土歴史研究家・下谷通さんの講義は今後、分科会的研修会の位置づけでやってもらうことにし、リーダー養成講座では現嬬恋村の観光振興、地域体験、都市農村交流事業等の分野において最前線でご活躍中の久保宗之さんに講義していただきました。嬬恋村フィールドでガイド活動をするために必要な村の概要をお話いただきました。





講座9 自然の理解 15:30〜17:30(2時間)
講師  赤木道紘



    

    

    

   


前半ではNEALリーダー資格養成カリキュラムとされている、「日本の自然の特徴を理解する」ための講義を行い、後半は私の代名詞である「樹の声が聞こえる」お話をいたしました。


「樹の声が聞こえる」というのは、例えばスピリチュアル的な、霊感第六感のような異感覚を使ってだとか、テレパシーを使って樹と会話する…いうことではありません。しかし、数十億年前に発生した同じ細胞から別れた生命体なのですから、その根底には「生きていこう」「子孫を作っていこう」「唯一無二の生命体ではなく、同志、仲間をを増やして共同体として生きていこう」という、同じ意識が流れているのは百も承知のはず。であれば、地球住民として共に生きようとしている生き物同士、相手のことをどこまでも深く思いやればどうして欲しがっているのかは、解ってくるはずです。


樹木も人と同様に、初対面では相手の気持ちなど解りません。解らせてもくれません。注意深く観察し、たまには思いやって肥料をくれたり、菰をまいたり、実を食べさせてもらったりなど、持ちつ持たれずの(人間的な)関係で長く付き合うことによって、ようやく相手のやりたいことや痒いところが解ってきます。これは、樹木に限りません。樹木を地域に置き換えることもできます。文献やインターネットだけで得た情報だけを来訪者に話すことは、知らない人のことを噂話するのと同じこと。長い期間、思いやってきた、面倒を見てきた、心を通わせようとしてきた相手のこととして紹介すれば、言葉は文字列としてだけでなく温もりを持ちます。来訪者はあなたの友人として、或いは家族の一員として紹介してくれたように感ずることでしょう。あなたがそう思っている通りに。


アンケートでは、「自然への知識の他に、もっと大きな意味でのとらえ方、感じ方を聞くことができて印象深かった」「一つの地域、一つの樹木と長く付き合って向き合い、その気持ちが分かるまで通じ合えるまで“観察”する。自分の仲間・家族・兄弟として紹介できるようになる。それが地域と関わるということ…という言葉に心底共感し、感動しました」などのお声をいただきました。





講座10 安全管理(1)現場の応急手当術 17:45〜19:15(1.5時間)
講師 小林勝三



    

    

  


海上自衛隊衛生員である小林勝三さんは、長らく自衛隊員の健康管理や医療などに従事してきました。また、暴動等で発生した緊急患者の救護などの仕事もあったそうで、本当に救急現場の叩き上げのお方です。この小林さんに、イベントの際におこりやすい捻挫や骨折などのケガに対して、三角巾、テーピング、包帯等を用いた応急処置方法を講義していただき、実際に演習をいたしました。


アンケートでは、「応急手当の実際の対処法、知識を学べた」等のお声をいただきました。



■3日目:1月26日(日)





講座11 安全管理(2)普通救命講習、AEDの取り扱い方法 9:00〜12:00(3時間)
講師  吾妻広域消防署嬬恋分署



    


NEALリーダー養成カリキュラムでは、基本的に消防署の普通救命講習+1.5時間の安全管理研修が求められています。これまでのCONEリーダー研修同様に、今回も消防署嬬恋分署にお願いし、署員の皆様にご指導いただきました。夜勤明けでたいへんお疲れのところ、ご指導にお越しくださり、誠に感謝致しております。





講座12 スノーシューエコツアーのいろは
    12:50〜17:20(講義演習は実質3時間〔車で移動時間あり〕)
講師  赤木道紘



    

    

    

    

   


エコツーリズムとは、「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」であり、エコツアーとは「エコツーリズムの考え方を実践するためのツアー」です。


ただし、「かけがえのない地球」「自然を大切に、自然と共に生きる」「固有の文化・歴史を大切に」という言葉は、現代では多くの方が普通に使っていますし、自然保護は社会生活の常識となって久しいところです。エコツアー体験に見える方の多くは実践者であり、ナチュラリストであります。


エコツアーガイドとしては当然、「その地域を親友や家族のように紹介・説明できる」ようになるまで地域に精通しておく必要がありますし、そのための知識・小道具の準備や、お話するストーリーなども用意しておくべきでしょう。お話の内容は、世間で通っている「科学的エビデンスに基づいた話」=“大多数の人間にとって体系的に理解しやすいデザイン”に拘ることはありません。極端ですが荒唐無稽なことをお話したって構いません。


「現代の科学ではそういうことが解っているのか」 よりも、


「ああ、そんな素敵な物語を回想することができるこの場所を後世に残したい!」


との思いに満ち溢れて感動していただくことの方が、よっぽど重要です。私たちのエコツアーに参加していただくことで、一人でも多くの方に「地球を大切にする旅人」になっていただきたいのです。そして、そういうエコツアーになら、ガイドさんが職業にして暮らしていけるようになるほどの(高額な)参加料金を払うことが普通、の社会になって欲しいのです。


また、たくさんのネタの準備はしておいても、それをいかに出さないで感動してもらえるか、が腕の見せどころです。相手にもよりますが、エコツアーガイドは「インストラクター」よりも、「頼りがいのある“空気”」という存在の方が、クライアントにとっては過ごしやすいのです。左脳で緻密に計算して考えたことを共感してもらおうと一生懸命に解説すると相手は疲労します。ところが、その場でハッと気がついた(右脳で捉えた)感覚や感情は、クライアントが容易に共感してくださることが多いのです。


スノーシューエコツアーのいろは」は、アンケート結果においても、『最も良かった講座』の一つになりました。





認定試験 17:40〜18:00(約20分間)



  


NEAL指導者養成講習では、リーダー受講時から試験が適応されることになりました。今回は3日間の受講内容から20問を作成し、1問5点で100点満点としました。70点未満を赤点とします。さて、結果の方は…





おめでとうございます!全員合格 ♪(^∇^)σ))


いや〜落ちる人が出たらどうしようかと思っていましたが、安心しました。しかも皆さんほとんど85点以上の高得点。しかし、100点満点は18人中一人だけでした。決して甘くはありませ〜ん。


18:10 修了式 認定証授与 事務連絡
18:30 解散



1日約9時間を拘束する、3日間の長い長いエコツアーガイド養成講座が終わりました。皆様、大変にお疲れ様でした。


スタッフとして橋詰さん、世話人としては神保さんとNさんがお手伝いに来てくださり、おかげさまで無事に終了いたしました。誠にありがとうございました。

特に神保さんは受講生の皆さんが普通救命講習を受けている間に、2階と1階のトイレ掃除をしてくださり、それを終えてからお帰りになられました。深く御礼申し上げます。


今年も、エコツアーガイド養成講座を開催できたことに感謝致します。

参加者の方々、関係機関の方々、宣伝してくださった方々、スタッフの方々に心からお礼を申し上げます。


本当にありがとうございました。





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