菌類のふしぎ ― 形とはたらきの驚異の多様性 (国立科学博物館叢書)


菌類のふしぎ―形とはたらきの驚異の多様性 (国立科学博物館叢書)




10月4日に野生きのこイベントをするにあたって、私の持っている野生きのこ情報を最新のものにする必要があった。それで購入したのが本書。大学教養〜研究者レベルを対象読者としたものではなく、一般社会に向けての啓発書的なものとして、初めて菌類に興味を持った読者が、ある程度体系的に菌類という生物の分類と、自然界での役割や人間との関わりが理解できるように書いたらしい。高校の生物学程度の予備知識を前提として、グラフィカルな要素を多く挿入しながら、一般向けにわかりやすく、菌類の基礎的な事項から近年わかった新しい情報までを伝える内容とするように心がけた…とある。



しかし実際には、高校卒業程度の生物学とはいっても、取り扱っている内容そのものが菌類という専門分野であるため、初めて菌類に興味を持った読者程度では、読みきれるかどうか心配だ。知らないきのこの名前だらけでイメージが湧いてこないだろうし、菌類に自然界での深い役割や人間との深い関わりがあったなんて、考えも及ばないのが一般人の実態である。はっきり言っておくが軽い気持ちで読めるものではない。



私も、新しい情報を仕入れることができた。内生菌の話、分子系統学から見る菌類、また、「菌類が育てる森」といういい言葉もいただいた。私のように野生きのこイベントをやろうとする方は、資料作りの際の重要な一冊となると思う。ぜひご活用ください。