草軽電鉄廃線跡を歩く(その2)



今日は草軽電鉄廃線跡を歩くイベント。宮川さんが企画してくださった。このイベントは今年、シリーズで3回の開催を予定していて、今日は2回目。楽しみにしていたのに1回目は突然の下痢で参加できなかった。信じられん。

国境平駅跡地から、まずは白糸林道を歩く。17名の参加者と共に、森へと入っていく。あーワクワク。


  


しばらくは林道を歩く。林道は砂利が敷いてあるので、まあまあ歩けるのだが、登山道よりも堅いし小石でバランスを崩すので、長い道はきついのだ。どこまでこの状態が続くのだろう…?

今年はチョウセンゴミシの花が多い。豊作の合図だ。お酒、ジャム、健康食品…秋には何を仕込もうかな。


  


飯野さんがふと木を拾い杖代わりにした。あ、俺もほしいなあ…。人間は太古の昔、森から草原に出て行く際に、捕食者から身を守るために槍だの棍棒だのを手に持っていたに違いない。だから、森に入ると何か持ちたくなるのは当然の理由なのだろう。しかしじっちゃんが使っていたあの草本の、丈夫な軽い杖は、一体なんという植物だったのだろう?

そのうち、飯野さん達が謎の昆虫を持ってきた。セミの顔とハチのような胴体を持つ怪物?!

…なーんて、これはセミが脱皮の際に死んでしまったのだろう。こういうのたまに見ると一瞬ドキッとするよな。

そして、信濃路自然歩道に入っていく。この道がホントもう凄いこと凄いこと!


  


林床は身の丈程もあるオニシダが茂り、行く手を倒木が阻む。今にも何か出てきそうで気味が悪い。あるはずの橋は流されていて、ジャンプして渡ったりと、とても冒険的なコースだった!

宮川さん、こんなところ、よく一人で何度も下見したよなあ。あそうか、万座の原生林をうろついてエコツアーコースを探す私と一緒か。人間は、自分の好きなことに関しては、なんだってへっちゃらになれるってことなんだろうなあ。


  


フタリシズカ(センリョウ科チャラン属)は通常は花穂が2つなのだが、3つのものを発見。珍しいと思うんだけど?

困難続きの歩道も、白糸ハイランドウェイ付近から、整備が整ってくる。さすがは長野県側。群馬県側と違うなあ。

白糸の滝から流れる清流を渡って、前に進む。


  


道路手前にあったミズナラ巨木は幹周410cm。いいぞ、私の好きな大きな木がたくさん現れてきた。

歩道脇にある掘られた穴は何者の仕業なのか。ツキノワグマアナグマ

トリガタハンショウヅル(キンポウゲ科センニンソウ属)だったかな? 教えてくれたけど忘れてしまった。


  


軽井沢側の信濃路自然歩道は、ハルニレの巨木がキーストーン種となった森林生態系が見られる。浅間山周辺の、軽石が厚く堆積している地域でよく見られる林相である。

ちょっと測ってみた大木は幹周370cm。しかしルートにはなんと幹周472cmの巨人もいた。この森がもし天明3年(1783年)浅間山大噴火で焼けてしまっているならば、ハルニレはわずか220年でこれだけ大きくなったということだ。

うーんでもどうだろう、この付近は森の匂いが王領地の森と似ているような気がする。きっと、天明の噴火の際は大丈夫だったのだろう。


  


無造作に引っかかっているクリの木の枝。葉が譲り葉になっているのは、葉が青々と茂っていた頃に折れてしまった証拠。離層が形成されなかったのだ。熊の仕業か?でも、あんなにクリはイガイガがあるのに熊は大丈夫なんだろうか?

竜返しの滝は、名前は聞いたことがあったが場所を知らなかった。そうか、ここにあったのか。


  


小瀬温泉付近まで来て、昼食をとる。私は今日は鳥丼にしたのだが、折角なので近くにあった山椒の葉をのせた。これで、味気ないコンビニ弁当が一気に料亭の味に?

ほほう、これが以前嬬恋村IP会のメーリングリストアカバナと意見が分かれたクワガタソウ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)か。オオイヌノフグリと花の形状、雰囲気がよく似ている。


  


クワガタソウも、オオイヌノフグリと同じように、花の柄が長い。ピッキオが発行している【花のおもしろフィールド図鑑 春】によると、オオイヌノフグリは蜜をなめに来た昆虫がとまると柄が曲がり、昆虫は落ちないように雄しべや雌しべにしがみつき、それによって受粉が成功するのだという。クワガタソウにも昆虫が上ってきたので様子を見ていると、確かにそういう形態が見られた。上っても直ぐに落ちてしまうのに何度も上ろうと挑戦しているのだ。なるほど、面白いなあ。

そして「では、今日のお宝にご案内しましょう…」と宮川さんが仰り、一行は藪の中へと入っていく。


  


ここはかつての草軽電鉄廃線跡であるが、林道として利用されていない道なので、藪化が進んでいる。しかし廃線後、完全に手を入れなかったらこんなものではない。完全に森林化しているはず。だから何年かに一度に、行政サイドかナショナルトラストのような団体が下刈りをしているのだろう。そのような跡も確認した。

宮崎さんが【草軽のどかな日々 (RM LIBRARY(53))】の34ページを開いて、「ここです」と仰った。へえ、ここが柳川橋梁か。

これはいいものが残っていたなあ。道からそんなに遠くはないし、人も連れてこれる。うん、エコツアーに十分なるんじゃないかな。軽井沢の方、ぜひどんどん実施してほしい。


  


林道に戻る。最近はこういう山道を歩くと思わず森林セラピーロードの可能性を探ってしまう。竜返しの滝付近の信濃路自然歩道の天然林は素晴らしかったが、この付近は大きな木がない。そして線路を平坦にするために切り取りを行っているために見晴らしの悪いところも多い。この近代史遺跡群を絡めての森林セラピーロードは既存の道では難しいかも知れない。

そして、現在の林道とかつての廃線跡が分かれるところがあった。え、なぜ分かれるのだろう?

少し歩くと、宮川さんが秘密を教えてくれた。ここが二つ目のお宝、カーブしている橋梁である。カーブして橋に入るのではなく、橋梁自体がカーブしているのだ。全国の廃線後を調査研究してきた武井さんもこのような橋梁跡は見たことが無いとのこと。うーん、いい遺産があるではないか。この日記は動的ページなのだが、近いうちに静的ページに変えようと思っている。そうなった時、よりgoogle等の検索エンジンにヒットすることになり、このルートもクローズアップされることになるだろう。

そしてまた穴を発見。これは大きい。


  


いったい何者の仕業なのか。みんなで考えてみたが、よくわからなかった。見たところ、ジバチの巣を襲ったのではなく、蟻の巣を襲っているようだ。ツキノワグマは蟻の巣も狙うのだろうか?アナグマの可能性か?ああ、軽井沢ならアライグマ等の外来動物の可能性もある。

林道をぐるっと回りこんで先ほどのカーブのある橋梁を裏側から見る。

もうしばらく歩くと、長日向の駅があったと思われる地形にくる。橋梁の後は変化のない林道をずっと歩くことになるので退屈してしまう。エコツアーとしては、この辺で長日向の集落に降りて飽きさせないようにしたほうが良いだろう。長日向がどんな集落なのか見なかったので知らないが、山奥のひっそりとした集落でお茶でもいただければ最高だろなあ。


  


日向駅跡付近と思われる場所で、コンクリートの構造物を発見。排水溝か何かだろうが、ちょっとよくわからなかった。

山口さんが何かを見つけた。白い陶器のようだ。見てみるとDAITO1924と書いてある。参加者の皆さんが「これは碍子だよ」と仰った。碍子?何だっけそれ?

インターネットで検索してみると、がいし(碍子、がい子)は、電線とその支持物である電柱・鉄塔などとのあいだを絶縁するために用いる器具(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より)…とのこと。持って行こうかとも思ったが、私よりも研究家の武井さんが持っていたほうが何かと良いような気がするので潔く身を引いた。

線路を平行に保つため盛り土をしているところも結構あった。


  


美しい蛾はオオミズアオ(チョウ目ヤママユガ科)。学名はActias artemis、月の女神という意味だそうだ。神秘的な色だ。今日はこの我の死体が結構あったが、山口さんによるとカラスに襲われるらしい。

この交尾を観察していた方はラジオをガンガンにかけていた。あんなに大きな音でかけても蛾は逃げないんだな。つまり聴覚は太古に昆虫と分かれてから獲得した感覚器なのである。

たっぷり歩いた1日。12キロ以上あったと思う。久々にしっかりと森林ウォーキングをした。登山道と違って地面が固いので少々足がくたびれてしまったが、良い経験になった。このコースで一般向けのエコツアーコースを、近い将来ぜひ実現させたいものだ。