もっと知りたい!浅間火山

嬬恋村郷土資料館主催の浅間山現地見学会「もっと知りたい!浅間火山」に急遽参加させていただいた。アロマテラピーインストラクター試験は、間に合わないので止めたのだ。

講師は、嬬恋村一押&得意の東京大学名誉教授・荒牧重雄氏。荒牧先生の話はいつ聞いても面白い。今回の講座の全貌を紹介する。


  


昭和8年に設立された東京大学浅間火山研究所の裏庭?では、地層がわかるように大きく掘った穴があった。この場所も、職員さんに許可の上なら人を連れてきて見せて構わないそうだ。この層を指差しながら、黒色森林土壌と軽石降下物の分かれ目が天明3年(1783年)5月9日最初の噴火、そして鎌原土石流、鬼押し溶岩流までのクライマックスの話をお聞かせくださった。この場所では最後の1日で80cmくらい積もったことになる。これではとてもこの付近にはいようと思ってもいられやしないだろう。だから火山噴火で死ぬバカはあんまりいないのだ。

黒色森林土壌の下には、なんと5mの天仁元年(1108年)の噴火堆積物層があった。火砕流が流れた痕には大量の火山灰(灰神楽)が降り注ぎ、それらは赤茶けた堆積物の層となっている。触ってみると、確かに火山灰だった。

そして、まもなく閉鎖される東京大学火山研究所最後の職員、小山さんによる「観測現場から見た2004年浅間山噴火」が始まった。


  


小山さんのパワーポイントを見る。浅間山の噴火活動年を赤字で表示しているが、1930年〜1961年まで、非常に激しく活動していたことがわかる。そしてその後はほとんど活動していなかった…40数年おとなしくしていると、地域住民が火山活動に慣れていないこと、そして情報・マスメディアの反応の速さは昔と全く異なっているため、2004年噴火の混乱・誹謗中傷は過激すぎるのだという。

千トン岩は昔は大きく突き出ていたが、その後の堆積物でずいぶん埋まったのだと。昔は火口側に座ってお弁当を食べることができたらしい。現在は火口側は絶壁なのだと。


すでに、火山のマグマの動きはスキャンでき、動画で確認できる時代になりつつあるという。そういうこともあって、職員は必要ないとされ、この研究所も閉鎖される見込みなのだ…と仰っていた。


  


次に気象庁軽井沢測候所を訪ねた。こちらでは松田慎一郎様さんが主にご案内してくださった。火山ネタでは、浅間山車坂峠路線において2007年5月に精密水準測量をした結果、2006年5月に実施した測量結果と比較して南山麓の水準点に対し、車坂峠北方の高峰高原を中心に最大10mmの沈降が検出された…という。なんと!10mm!!!マグマは、ずいぶん遠くに行ってしまったようだ。

毛髪自記湿度計は、フランス人女性の髪の毛を使うと具合がいいらしいが、手に入りにくいので馬の尻尾等で対応しているとのこと。フランス人女性?何を根拠に!?

転倒ます型雨量計は、まだまだ現役で頑張っているマシンらしい。


  


軽井沢測候所にあった、おもしろ科学実験。ペットボトルに砂を入れ、少し重めの玉を入れて、ペットボトルをポンポンと叩くと振動で玉が浮かんでくる。

そのあと野外に出て、現役で使っている気象観測機器の数々を紹介してくださった。温度計はあまり近づくとやばい。数値に影響が出てしまう。


  


鬼押しハイウェーのブルーベリー駐車場では、浅間山の地形から火山史を考察することができる。右側の山根を見ると、天明の噴火、天仁の噴火の溶岩流、そしてその前の溶岩中の形がそのまま残っている。これはいいネタだ!

正面の浅間山。右の嬬恋の斜面の角度が、一般的な成層火山の角度であるという。左側は滑らか過ぎ、これは山体崩壊がおこった跡なのだという。

そして、鬼押し出し園へ。この少し先で溶岩の話をしてくださった。「浅間山の溶岩は安山岩だが、日本は安山岩の火山が多い。玄武岩溶岩にはアア溶岩とパホイホイ溶岩があって、パホイホイ溶岩は硬いがそれがアア溶岩になって、うっかり足で踏むと…」。このアアとパホイホイというイントネーションが少し可笑しかった。しばらくアアパホイホイとい言いながら歩いた。


  


鬼押出し園では、他には溶岩の固まり方や冷え方、割れ方などの話があった。鬼押出し溶岩は、表面はゴツゴツしていてすごいことになっているのだが、実際には中は密に詰まっているのだという。そうか、確かによく考えるとそうだった。

蜀山人の碑を眺め、参加者全員でブーイングした後に、展望所に上り鎌原方面を眺め、鎌原土石流とその後、その削れた跡を埋めた鬼押し溶岩流を考察する。ここからの眺めも良いし、お話のフィナーレを飾るには最適な場所だと思った。

浅間火山インタプリテーションもちゃんとやればこれはモノになるわ!商品になると思う。しかし、火山学の世界は素人ではよほど勉強しないと難しいと思うし、私が今猛烈に学んでいる樹木、山野草、森林浴やアロマテラピーなどのスキルアップを中断してまで取り組むほどの金銭的リターンは得られないであろう。しかし自然案内人として浅間山麓で活動する以上、やがて浅間火山インタープリテーションは避けては通れない道であろうと思った。